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左足の美技は「目の保養」、好調ディバラのマスク外れず C・ロナウドより決定的との声も

中村大晃カルチョ・ライター
6月30日、セリエA第29節ジェノア戦で先制点を挙げたディバラ(写真:ロイター/アフロ)

「僕たちがまた待ち望んでいた唯一のマスクだ」

シーズン再開後初となるゴールを決めた試合後、ユヴェントスOBのクラウディオ・マルキージオはインスタグラムで喜びを表した。マスクとは、パウロ・ディバラのゴールセレブレーション、「ディバラ・マスク」のことだ。

◆新型コロナ感染

中断前最後の試合、優勝を争うインテルとの大一番で、ディバラは勝利を決定づけるゴールを挙げた。

その後、新型コロナウイルス感染が発覚。完全回復が分かるまで46日を要した。5分ほど動くと呼吸が苦しくなると明かしたときには、心配した人も多いだろう。

苦難を乗り越えて迎えたシーズン再開、ナポリとのコッパ・イタリア決勝では、PK戦で1人目を務めたが失敗。タイトルを逃した“戦犯”のひとりとなってしまった。

◆破竹の勢い

しかし、セリエAが再開してからは、見事な輝きを見せている。

6月22日のボローニャ戦では、ペナルティーエリアの外から左足を振り抜いてのゴラッソ。冒頭のマルキージオの賛辞を呼んだ。『ガゼッタ・デッロ・スポルト』は、「薬学の本を更新しよう。新型コロナウイルスが左足の繊細さを失わせることはない」と絶賛した。

6月26日のレッチェ戦でも、クリスティアーノ・ロナウドのアシストを受け、再びペナルティーエリアの外から左足でコントロールショット。貴重な先制点でゴールラッシュの口火を切った。

そして6月30日のジェノア戦、巧みなタッチからペナルティーエリア内に侵入し、ドリブルで相手をかわして左足で強烈なシュート。ボールは相手GKの手を弾いてネットを揺らした。

2017年9月以来となるセリエAで4試合連続得点、さらにここ6試合で5得点2アシストと、直近の試合では常にゴールに絡んでいる。まさに破竹の勢いだ。『コッリエレ・デッロ・スポルト』のフィリッポ・ボンシニョーレ記者は、ディバラのプレーを「目の保養」と表現している。

◆CR7とのコンビに磨き

昨季のディバラは、リーグ戦で5得点のシーズン10得点に終わった。それが今季はすでにリーグ戦だけで2桁得点達成だ(公式戦16得点)。

ファブリツィオ・ボッカ記者は、『レプッブリカ』で「今はより気楽にプレーしているように見える。最初のころのディバラにとても似ている」と指摘した。

「もちろん、今のディバラはもっと成熟している。だが何よりも、幸せで楽しそうに見えるのだ。まるで、ようやく自分の中でバランスを見出したかのように。そのすべてがピッチに伝わっている。価値、序列、プレーの仕方を完全に変えた火星人の到来に打ちのめされ、悲しくて居心地が悪そうだった昨年のディバラとはまったく逆だ」

『ガゼッタ』によると、シーズン中断前後でC・ロナウドとのパス交換は、1試合平均6.7本から11本と大幅に増えた。チャンスメークも1.1回から2回と増えている。「火星人」とのコンビネーションが磨かれているというわけだ。

◆絶対不可欠な存在

実際、ボッカ記者は、現在のディバラが「C・ロナウドとほぼ同等と言って妥当」とたたえた。ジャンカルロ・パドヴァン記者は、『Calciomercato.com』で、ジェノア戦での活躍を「またもC・ロナウドより決定的だった」と称賛している。

その評価の是非はともかく、ディバラがユーヴェにとって重要なゴールを決めていることは確かだろう。今季の10得点のうち、7得点は試合の先制点だ。

ディバラが再び絶対不可欠な存在となったことは、昨夏放出しようとしたクラブが契約延長に動いていることからも明白だ。ユーヴェとそのサポーターは、光を取り戻したアイドルが、これからもずっと”マスク姿”を見せてくれることを願っている。

カルチョ・ライター

東京都出身。2004年に渡伊、翌年からミランとインテルの本拠地サン・シーロで全試合取材。06年のカルチョーポリ・W杯優勝などを経て、08年に帰国。約10年にわたり、『GOAL』の日本での礎を築く。『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿。現在は大阪在住。

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