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C・ロナウドがジョーダンなら、ルカクはレブロン? インテルは「イカルディ放出に悔いなし」か

中村大晃カルチョ・ライター
12月21日、セリエA第17節ジェノア戦で自身2点目を決め喜ぶルカク(写真:ロイター/アフロ)

2得点、1アシスト、そして「隠れアシスト」。12月21日のセリエA第17節ジェノア戦で、インテルのロメル・ルカクは、チームを首位での年越しに導く獅子奮迅の活躍を見せた。

前半31分に先制点をもたらすと、2分後には体を張ったポストプレーでロベルト・ガリアルディーニの追加点をアシスト。後半には、PKの絶好機を17歳セバスティアーノ・エスポージトに譲って初得点のメモリアルゴールをお膳立てし、その7分後にはドッピエッタ(1試合2得点)を達成したのだ。

4-0と快勝したインテルは、王者ユヴェントスと勝ち点で並ぶ首位で2019年を終えた。インテル公式サイトは、データサイト『Opta』を参考に、17節終了時の勝ち点42は、2006-07シーズンからの3年連続以来となるクラブ史上4回目と伝えている。

◆CR7以上に欲しい選手?

降格圏で低迷するジェノアが相手だったとはいえ、ルカクにとっては存在価値を示さなければいけない一戦だった。ラウタロ・マルティネスが出場停止で若いエスポージトが相棒だったうえに、ライバルであるユーヴェのエースが、直近で驚愕のプレーを披露していたからだ。

一足先に17節に臨んだユーヴェは、クリスティアーノ・ロナウドの決勝点でサンプドリアを2-1と下した。2メートル56センチという高い打点でのヘディングシュートは、世界中でバスケットボール界のレジェンド、マイケル・ジョーダンとの比較につながった。

その3日後、『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙が「C・ロナウドが飛んで、ロメルが止まるわけにはいかない」と伝えたジェノア戦で、ルカクは期待に見事に応えた17試合で12ゴールは、チーロ・インモービレに続く得点ランク2位。OBのクリスティアン・ヴィエリは「欧州で最も完成されたストライカーのひとり」と賛辞を寄せている。

『レプッブリカ』では、ファブリツィオ・ボッカ記者が「ロナウドとルカク、今ならどちらを選ぶ?」とアンケートを実施。2419人のユーザーのうち、ロナウドを選んだのは1100人。ルカクの1319人が上回っている(現地12月25日朝時点)。

◆NBAレジェンドのような活躍に期待

2カ月半前、クラブ公式サイトで、サンアントニオ・スパーズに所属するNBAのイタリア人選手マルコ・ベリネッリは「非常に強い選手というだけでなく、素晴らしいフィジカルを持つ。レブロン・ジェームズのような決定的なインパクトを残してほしいね」と、ルカクに期待を寄せていた。

今季のジェームズはロサンゼルス・レイカーズで自ら得点を挙げるだけでなく、新戦力アンソニー・デイビスを生かすプレーを見せて高く評価されている。運動能力に優れ、自ら得点を積み重ねつつ、体を張ったポストプレーや決定機でのパスなど仲間を生かす利他的なルカクは、現在のジェームズに似ているとも言えるだろう。

もちろん、ルカクは「歴代最高」論争に必ず名前が挙がるジョーダン、ジェームズ、C・ロナウドの域には達していない。ただ、インテルとルカクがそれぞれ好調なだけに、ベリネッリが言う「インパクト」が期待されるということだ。

◆前任の「9番」との違い

そして、「利他的」というキーワードこそ、前任の背番号9との決定的な違いだ。

前主将マウロ・イカルディは、パリ・サンジェルマンに移籍してからもゴールを量産している。シーズン14得点はルカクと同じ数字で、出場試合やプレー時間は少ない。1得点に要した時間は、ルカクの132分に対して83分だ。12月24日付『ガゼッタ』のデータによると、決定率は36.84%とルカクの23.33%を大きく上回る。

だが、1試合平均の枠内シュート(1.41/1.17)、チャンスメーク(1.09/0.67)、相手エリアでのタッチ数(5.86/4.28)、ポストプレー(2.51/0.41)、タッチ数(33.05/15.55)、パス成功数(13.45/7.1)は、ルカクがイカルディに大きな差をつけた。

つまり、フィニッシュに関してはイカルディが優れているが、チームとしての攻撃への貢献度はルカクに軍配が上がるということだ。そして、それはチームメートにも好影響を及ぼしている。ラウタロのブレイクがその最たる例だろう。

『ガゼッタ』のヴァレーリオ・クラーリ記者は「少数ではあるが、サポーターの間ではイカルディへのノスタルジーが残る。一方で、クラブ内部では後悔ゼロ」と記している。イカルディを巡る昨季のゴタゴタと、ルカクの今季の好調を考えれば、それは自然なことかもしれない。

ただ、イカルディが長年にわたり、低迷するインテルを支えたのも事実だ。ルカクとの比較は、一貫して今のように貢献できてからとすべきとも言える。特にインテルは冬以降に調子を崩してきたチームだ。ルカクにはまず、近年と違って最後までタイトルを競う安定性をもたらすことが求められる。

カルチョ・ライター

東京都出身。2004年に渡伊、翌年からミランとインテルの本拠地サン・シーロで全試合取材。06年のカルチョーポリ・W杯優勝などを経て、08年に帰国。約10年にわたり、『GOAL』の日本での礎を築く。『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿。現在は大阪在住。

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