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イグアイン超えのセリエ新記録も? 月間MVPインモービレ、伝説FWとの偶然の類似は吉兆か

中村大晃カルチョ・ライター
10月6日、セリエA第7節ボローニャ戦で得点を喜ぶインモービレ(写真:Maurizio Borsari/アフロ)

開幕戦でセリエA通算100得点という偉業を達成したのは、序章に過ぎなかった。

ラツィオのチーロ・インモービレが止まらない。11月3日のセリエA第11節ミラン戦でも先制点をマーク。開幕からの11試合のうち、9試合でネットを揺らして13得点。ドッピエッタ(1試合2得点)も4回で、現在は6試合連続得点中だ。

特に、10月は5試合すべてでゴールを決め、計8得点をマーク。今季から導入されたセリエAの月間MVPに選出されている。

アタランタに続き、インテルと並ぶリーグ2位タイの24得点を挙げているラツィオだが、そのうちの54%がインモービレによるものだ。欧州5大リーグを見ても、彼より多くネットを揺らしているのは、バイエルン・ミュンヘンのロベルト・レヴァンドフスキしかいない

アルベルト・ダッラ・パルマ記者は、『コッリエレ・デッロ・スポルト』で「もうライバルはいない」「大差をつけてイタリア最強のFWだ。数字がそれを物語っている。数字は決して裏切らない」と、インモービレを称賛した。

◆クラブ通算100得点の大台達成

ミラン戦のゴールで、インモービレはラツィオでの通算100得点という数字も達成した。内訳はセリエAで80得点、欧州カップ戦で10得点、コッパ・イタリアで8得点、スーペルコッパ・イタリアーナで2得点。クラブの歴代得点ランクで6位につけ、さらに上をうかがっている。

11月5日付ガゼッタ・デッロ・スポルト紙参照、筆者作成
11月5日付ガゼッタ・デッロ・スポルト紙参照、筆者作成

今季の調子なら、トンマーゾ・ロッキやブルーノ・ジョルダーノはすでに射程圏内と言えるだろう。もちろん、首位のシルヴィオ・ピオラはまだまだ遠いが、加入から3年ちょっとで100得点を達成したことを考えれば、まだ29歳だけにチャンスは十分にある。

ピオラといえば、セリエAの通算得点記録を持つ伝説のストライカーだ。そして、『ガゼッタ・デッロ・スポルト』によると、インモービレとピオラには興味深い共通点がある。同時期のサン・シーロでのミラン戦でクラブ通算100得点を達成しているのだ。

ピオラは1939年10月15日、ラツィオでの通算148試合目で得点数を大台に乗せている。インモービレはそれより1試合早くに100得点を成し遂げた。

イタリアサッカー界のレジェンドと並ぶような数字は、インモービレのさらなる活躍を期待させる。例えば、長年ピオラが保持していたリーグ戦のシーズン通算得点記録だ。

◆W杯得点王も新記録更新に期待

2015-16シーズン、当時ナポリのゴンサロ・イグアインが36得点という驚異的な数字をたたき出し、66年ぶりにピオラの記録を塗り替えたのは記憶に新しい。それから4年。インモービレが再びセリエAのシーズン得点記録を更新することはあるだろうか

実際、ここまでインモービレは1試合1得点以上のペースでゴールを決めている(プレー時間に換算すれば65分ごとに1得点)。理論上は、残り27試合で約32ゴールを決められる計算だ。シーズン40得点超えという夢も、まだ可能性が残されている。

もちろん、残り試合すべてに出場し、ゴールを量産し続けるのはあまり現実的と言えない。それでも、1990年ワールドカップ得点王のサルヴァトーレ・スキラッチは、『ガゼッタ』で「難しいが、やれると思う。彼のようにゴールを見る選手は数少ない。今は経験を生かしている」と期待を寄せた。

イグアインがシーズン序盤に得点を積み重ねていた時も、ピオラ超えを期待しながら「夢物語」とする声があった。だが、現在ユヴェントスでプレーするアルゼンチン人は、不可能がないことを証明している。

ドイツやスペインで結果を出せず、揶揄されたこともあった。だが、母国で2度の得点王に輝いたインモービレには紛れもない決定力がある。今季3度目の得点王を目指すラツィオのエースが、偉大な記録を樹立できるか注目だ。

カルチョ・ライター

東京都出身。2004年に渡伊、翌年からミランとインテルの本拠地サン・シーロで全試合取材。06年のカルチョーポリ・W杯優勝などを経て、08年に帰国。約10年にわたり、『GOAL』の日本での礎を築く。『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿。現在は大阪在住。

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