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「ミラノダービーは不利なチームが有利」はホント? 通算170試合で“番狂わせ”は43回

中村大晃カルチョ・ライター
ミランとインテル、軍配はどちらに?写真は昨季のダービーでのスタジアム外の風景。(写真:ロイター/アフロ)

9月21日、セリエA第4節でミラン対インテルのミラノダービーが行われる。単独首位に立つインテルをミランが追うかたちで迎えるビッグマッチだ。

下馬評で有利とされているのが、唯一の開幕3連勝を飾ったアントニオ・コンテ率いるインテルだ。一方のミランは2連勝中だが、スコアはいずれもウノゼロ(1-0)。リーグワーストタイの2得点とあり、適正システムがまだ見えないマルコ・ジャンパオロ新監督の戦い方は批判を浴びている。

ただ、「ダービーでは不利とされるチームが有利」という言葉を耳にしたこともあるだろう。実際、好調だったほうが足元をすくわれるケースもあった。ただ、本当に、“番狂わせ”は起きやすいのか? 19日にイタリア『スカイ・スポーツ』が報じた興味深い数字をご紹介したい。

◆“番狂わせ”の過去

「セリエA」の大会で開催されたミラノダービーは、これまでに170試合。インテルが64勝、ミランが51勝、引き分けが55試合と、通算成績はインテルに軍配が上がる。

両チームが異なる順位でダービーに臨んだのは、170回のうち154回。この154試合のうち、順位が劣るチームが勝利した“番狂わせ”は、43試合(27.92%)だけだ。内訳は、ミランが84試合中24勝(28.57%)、インテルが70試合中19勝(27.14%)となっている。

直近では、昨シーズンの後半戦、4位インテルが3-2で3位ミランを下した。チャンピオンズリーグ(CL)出場権を争っていたミランが、この敗戦から失速して目標を逃したのは記憶に新しい。

一方、昨季の前半戦のダービーは、ミランがインテルを追いかける中で迎えた。終了間際のマウロ・イカルディの決勝点で、インテルが1-0と勝利。“番狂わせ”はなかった。ミランが最後に“番狂わせ”を演じたのは、3-0で勝利した2015-16シーズンの後半戦だ。

なお、ミランが“番狂わせ”からそのシーズンの優勝までこぎつけた例は、58年前までさかのぼる。第7節で“格上”インテルに勝利した1961-62シーズン、8回目のスクデットを手にした。

反対に、インテルが“格上”ミランに勝利し、スクデットも手にしたのは、直近でジョゼ・モウリーニョが指揮を執っていた2009-10シーズン。18回目の優勝を飾り、歴史に残る3冠を達成したときだ。

ただ、このときのダービーは開幕してすぐの第2節に開催された。1試合しか消化していなければ、順位の上下はあまり関係ないかもしれない。

そこで、さらに歴史を振り返ると、1970-71シーズンにもインテルは“番狂わせ”&スクデットを実現している。11回目の優勝を果たしたこのシーズン、第20節のダービーで2-0と勝利した。

ちなみに、今季と同じ第4節でのミラノダービー開催は、過去に1936-37シーズンの一度しかない。ミランがインテルを上回る順位で迎えたが、試合は1-1のドローに終わった。その後、ミランは4位、インテルは7位でシーズンを終えている。

◆ダービー負けなしの両監督

もちろん、「不利とされるチームがダービーでは有利」という“ジンクス”は、順位の上下だけではなく、そのときそのときの両チームの調子も含めての話だ。

また、今回有利とされているインテルも、3連勝の勢いがすでに消えている。ミッドウィークのCL開幕戦で、スラビア・プラハとホームで1-1と引き分けたからだ。しかも、アディショナルタイムの同点弾がなければ黒星発進という不本意な一戦だった。

その意味では、今回のミラノダービーに「有利/不利」はないのかもしれない。ともにミラノダービーが初めての指揮官だが、コンテはユヴェントス時代にトリノダービー、ジャンパオロはサンプドリアでジェノヴァダービーを経験しており、それぞれ一度も負けていない。

開幕から絶えず懐疑的な目を向けられているミランと、欧州での躓きを払しょくしたいインテル。ともに勝ち点3が欲しい両チームの激突、勝利の女神はどちらに微笑むだろうか。

カルチョ・ライター

東京都出身。2004年に渡伊、翌年からミランとインテルの本拠地サン・シーロで全試合取材。06年のカルチョーポリ・W杯優勝などを経て、08年に帰国。約10年にわたり、『GOAL』の日本での礎を築く。『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿。現在は大阪在住。

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