Yahoo!ニュース

「デ・リフトにはC・ロナウド以上の価値」 有言実行のユーヴェ、悲願成就へ高まる期待値

中村大晃カルチョ・ライター
4月16日、CL準々決勝で決勝点を挙げたデ・リフト。敗退させたユーヴェに加入(写真:ロイター/アフロ)

クリスティアーノ・ロナウド獲得から1年。ユヴェントスが再び大型補強だ。7月18日、アヤックスからマタイス・デ・リフトを獲得したことを発表した。

移籍金は7500万ユーロ(約90億7000万円)の5年払い。さらに1050万ユーロ(約12億7000万円)のボーナスがつく。選手とは2024年までの5年契約で、年俸は公表されていないが、地元メディアはボーナス込みで最大1200万ユーロ(約14億5000万円)にまで達すると報じている。

ユヴェントスにとっては、C・ロナウドや2016年のゴンサロ・イグアインに続き、歴代3位となる移籍金。DFとしてはクラブレコードだ。

◆未来を意味するシンボリックな価値

チャンピオンズリーグ(CL)で躍進したアヤックスの主将を務めたデ・リフトの能力や評価の高さは、周知のとおり。「パヴェル・ネドヴェドのメンタリティーとズラタン・イブラヒモビッチの野心」を兼ね備えた選手というミーノ・ライオラ代理人の表現は、ユヴェンティーノに大きな期待を抱かせる。

なにより、デ・リフトは19歳(来月で20歳)と若い。それだけに、イタリアのメディアも「将来も保証される」と、ユーヴェの補強を称賛した。ちなみに、デ・リフトの契約解除金は1億5000万ユーロ(約181億5000万円)と言われるが、行使可能になるのは3年目以降とされている。

ステーファノ・アグレスティ記者は、『Calciomercato.com』で「守備陣という唯一の小さな穴を最高のかたちで埋めた」とコメント。デ・リフトの獲得は「未来を意味する」とし、19歳のオランダ代表に「C・ロナウドよりも価値がある」と記した。

グイド・ヴァチャーゴ記者は、『トゥットスポルト』紙電子版の動画記事で、デ・リフトの獲得には「シンボリックな価値がある」とコメント。「将来的にC・ロナウドのようにビッグになれる選手を確保」したと、ユヴェントスの手腕をたたえている。

◆公約実現で「良い道」に

実際、ユーヴェのアンドレア・アニェッリ会長は、2018年12月の英紙『フィナンシャル・タイムズ』のインタビューで、「次のC・ロナウドを手に入れる条件をそろえなければいけない。だが、今度は25歳以下の選手を獲らなければ」と述べていた。

デ・リフトの獲得は、まさに有言実行であり、年齢を考えれば、それ以上と言える。ヴァチャーゴ記者は、アニェッリ会長の言う「成長計画を実行中」のユヴェントスが、デ・リフト獲得で「クラブの成長において本当にまた新たな一歩」を踏み出したと評価している。

また、クサヴィエ・ヤコベッリ記者は『トゥットスポルト』で、アニェッリ会長が前述のインタビューで「世界一のクラブになるために、必要な歩みを一歩ずつ進めていかなければいけない」と話したことを紹介し、「ユーヴェは良い道にある」と記した。

◆悲願成就なるか?

C・ロナウドがネーションズリーグ決勝後に勧誘したデ・リフトを加え、ユーヴェが目指すのは、もちろん、悲願のCL優勝だ。サポーターは早くもデ・リフトに「CLをもたらしてくれ」と呼び掛けている。

ユーヴェは中盤にアドリアン・ラビオ、アーロン・ラムジーも加わった。内容に固執しないマッシミリアーノ・アッレグリに別れを告げ、ベル・ジョーコ(美しいプレー)を目指すマウリツィオ・サッリに指揮を託したのも、すべては欧州制覇に向けてアプローチを変えるためだ。

OBのファブリツィオ・ラヴァネッリも、『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙で「デ・リフトが加われればすごいチームになる」と期待を寄せている。

ただ、ファブリツィオ・ボッカ記者は『レプッブリカ』で「理論上はファンタスティックだが、現実にも同じかどうかを見てみよう」と、性急に評価はできないとくぎを刺した。

OBのズビグニェフ・ボニエクも、理論上は5連覇したアッレグリ体制より強いとしつつ、「監督が望むことを選手が実践するのに、どれだけ時間が必要かを見てみなければ」とつけ加えている。

もちろん、開幕までまだ1カ月以上あり、去就が騒がれるイグアインらを筆頭に、チーム編成もまだ定まっていない。18日付の『ガゼッタ』紙は、現時点でレギュラーが確実なのは、C・ロナウドとミラレム・ピアニッチ、アレックス・サンドロ、ヴォイチェフ・シュチェスニーの4人だけと報じている。

すべては今後のメルカートと、サッリの手腕次第だ。ただ、C・ロナウドの「世紀の補強」に続き、強敵との争奪戦を制して未来につながる至宝を手にしたことで、ユーヴェに対する期待が高まっているのは確かだろう。

カルチョ・ライター

東京都出身。2004年に渡伊、翌年からミランとインテルの本拠地サン・シーロで全試合取材。06年のカルチョーポリ・W杯優勝などを経て、08年に帰国。約10年にわたり、『GOAL』の日本での礎を築く。『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿。現在は大阪在住。

中村大晃の最近の記事