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得点率がイグアインの1.5倍! 若手好調でミランに疑問の声 「イブラヒモビッチって、必要?」

中村大晃カルチョ・ライター
10月4日、ELオリンピアコス戦でイグアインらと得点を喜ぶクトローネ(写真:ロイター/アフロ)

ズラタン・イブラヒモビッチが帰ってくる――そんな噂に、一部のミラニスタは歓喜に沸いた。スウェーデンの王様がミランに与えたインパクトは大きい。それを考えれば、当然かもしれない。

だが、今のチームにはミラニスタが大きな期待を寄せるストライカーがいる。昨季から決定率の高さでサポーターの心をつかんでいるパトリック・クトローネだ。1月で21歳になる若者は、先輩ゴンサロ・イグアインをしのぐ決定力で評価を高めている。

◆イグアインを凌駕する得点率

12月2日のセリエA第14節、パルマを本拠地サン・シーロに迎えたミランは、後半早々に先制点を許した。不穏な雰囲気の中で、6分後に貴重な同点弾で流れを引き戻したのがクトローネだ。

このゴールで、クトローネは公式戦7得点とイグアインに並んだ。特筆すべきは、その得点率の違いだ。『Transfermarkt』によると、プレー時間はイグアインの1199分に対し、クトローネは793分。1得点あたりに要した時間は、イグアインの171分に対して113分と圧倒的に少ない。

90分あたりで見れば、イグアインが1試合で約0.53得点なのに対し、クトローネは0.80得点の計算だ。昨季がトップチームでの本格的なデビューシーズンだったにもかかわらず、クトローネはイタリアと世界を代表するストライカーの約1.5倍もの得点力を誇っている。

特に、ヨーロッパリーグ(EL)では今季4試合ですでに4得点。昨季と合わせ、早くも2桁得点に達した(予選含む)。『ガゼッタ・デッロ・スポルト』によると、欧州の舞台で2桁得点を達成したイタリアの選手としては、20歳10カ月26日とあのアレッサンドロ・デル・ピエーロ(22歳11日)も上回る。

また、今季はこれまでイグアインがピッチに立っているときにネットを揺らしてきたクトローネだが、イグアインが出場停止だったパルマ戦でも得点を挙げたことで、「ひとり立ち」に成功した。

この好調ぶりに、ファブリツィオ・ボッカ記者は『レプッブリカ』で「クトローネはイグアインより上ではないか?」と記し、「確実に信頼できる」存在と称賛している。

◆古い幹と新しい幹を交換!?

クトローネの躍進を受け、当然のように生じたのが「イブラヒモビッチは必要か」という疑問だ。「王様」イブラが加われば、クトローネの出場機会が減るのは避けられない。

ジャンカルロ・パドヴァン記者は、『calciomercato.com』で「カンピオーネとは思わない。ましてやフオリクラッセ(規格外)だとは思わない」とコメント。クトローネは未熟な若者と強調したうえで、「彼の決定的な貢献を捨ててイブラを獲得し、クトローネをベンチに戻すのが正しいかは疑問」とした。

イヴァン・ザッザローニ記者も『コッリエレ・デッロ・スポルト』で「クトローネを犠牲にして半年のためにイブラヒモビッチを獲得しようとしているミランが理解できない」とコメント。翌日のコラムでも、「古い幹をまったく新しい若い幹と交換するだろうか」と続けている。

「優れた若者の成長、成熟で違いとなるのは、才能ではなく継続的な起用だ。20歳が散発的にプレーしながら自分のクオリティーを出していけると考えることはできない」

◆絶対目標のためにはイブラが必要なのか

ただ、成長が必要な若手だからこそ、不安が残るのも確かだ。例えば、今季のクトローネが記録した7得点は、すべてサン・シーロで挙げたもの。アウェーではまだノーゴールで、「計算できるストライカー」とまでは言えないだろう。

ブルーノ・ロンギ記者は、『MilanNews.it』で「もはやサッカーは11人ではなく、14人で戦うものだ。3つの交代枠は重要」とコメント。イブラ加入で控えに回ったとしても、クトローネが貴重な戦力であることは変わらないと主張した。

また、ロンギ記者はイブラ加入が「小さな問題」を生む可能性はあるとしたうえで、かつてイブラとのコンビでアントニオ・ノチェリーノが2桁得点を記録したことを指摘。「ミランにとってプラス」であり、「チャンピオンズリーグ(CL)出場を狙いたければ、強いチームが必要」と、復帰に賛成している。

◆新CEOの方針に注目

CL出場権獲得は、今季のミランにとって逃せない目標だ。パルマ戦の勝利で4位に浮上したのだから、なおさらこのまま突っ走っていきたいところ。そして、イブラは欧州最高峰の舞台に戻るための特効薬になり得る。

一方で、「復帰組」が苦しんできたこれまでの歴史の中で、今さら37歳に資金を投じることへの疑問があるのも確かだ。しかも、ミランはすでに大金を費やしてルーカス・パケタという別の若手の獲得を内定させている。

実際、12月6日の『ガゼッタ』や『コッリエレ・デッロ・スポルト』は、イブラヒモビッチ獲得にブレーキがかかったと報じている。コストパフォーマンスの悪さから、イグアインを買い取らない可能性も以前から噂されているところだ。

これからのミランを支えるクトローネを成長させつつ、4位以上を維持して来季のCLに出場し、財政面でも改善を図りながらさらにチームを強化――理想的だが、うまくいくとは限らない。だからこそ、CL復帰=収入増こそ最優先目標で、そのためにイブラは役立つとの声も根強い。今冬の市場、そして来季に向け、アーセナルから招いたイヴァン・ガジディス新CEOの方針が注目される。

カルチョ・ライター

東京都出身。2004年に渡伊、翌年からミランとインテルの本拠地サン・シーロで全試合取材。06年のカルチョーポリ・W杯優勝などを経て、08年に帰国。約10年にわたり、『GOAL』の日本での礎を築く。『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿。現在は大阪在住。

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