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ミラン、イブラヒモビッチ復帰に賛否両論 負傷者続出も冬の補強は不要?

中村大晃カルチョ・ライター
2012年2月のコッパ・イタリア、ユヴェントス戦でのミラン時代のイブラヒモビッチ(写真:Enrico Calderoni/アフロスポーツ)

ミランのパオロ・スカローニ会長は先日、『ガゼッタ・デッロ・スポルト』のインタビューで「リーグを1回制覇するよりチャンピオンズリーグ(CL)に3回出場するほうがいい」と述べた。ジェンナーロ・ガットゥーゾ監督のチームにとって、欧州最高峰の舞台に戻ることは至上命令ということだ。

セリエAで5位のミランは、次節で勝ち点1差の4位ラツィオと対戦する。CL出場権を争うライバルとの直接対決だ。だが、そんな大事な一戦を前に、ミランは負傷者が相次いでいる。

◆主軸が倒れて野戦病院化

11月は、ミラニスタにとってショッキングな知らせが続いた。4日のウディネーゼ戦こそ、主将アレッシオ・ロマニョーリの2試合連続アディショナルタイム弾に沸いたが、8日のヨーロッパリーグ・ベティス戦でマテオ・ムサッキオが負傷。全治2カ月の長期離脱となった。

続くユヴェントス戦で完敗し、失意のままインターナショナルウィークを迎えたミランは、さらにロマニョーリも1カ月の戦線離脱となることが判明。加えて19日には、離脱中のジャコモ・ボナヴェントゥーラが手術を受けることが分かった。復帰には8カ月を要するとも言われている。

すでにマッティア・カルダーラ(2カ月)と司令塔ルーカス・ビグリア(4カ月)も長期離脱しており、振り返れば、開幕前からイヴァン・ストリニッチが心臓の問題で活動停止を余儀なくされた。さらにさかのぼるなら、アンドレア・コンティは昨季から離脱中。ようやくユースの試合で復帰したところだ。

◆冬の補強は不要?

これだけ離脱者が出れば、冬の補強が注目されるのは避けられない。実際、すでに多くの名前が紙面を賑わせている。だが、ニーノ・ミノリーティ記者は18日付『ガゼッタ』で補強反対論を唱えた。

同記者は、守備はマーケットの時期までにロマニョーリやムサッキオ(カルダーラも?)が復帰する見込みと指摘。中盤はビグリアとボナヴェントゥーラが不在だが、両選手の代役となり得る特徴の選手は市場に出回っていないとしている。不用意に選手数を増やすのはリスキーという主張だ。

一方で、前線に関しては、ミノリーティ記者も「数が足りない」と認める。ガットゥーゾ監督が3トップから2トップにシステムを変更したからだ。ミランはセンターフォワードタイプがゴンサロ・イグアインとパトリック・クトローネしかいない。

そこで浮上したのが、ズラタン・イブラヒモビッチとアレシャンドレ・パトという2人のOBの復帰報道。特に、イブラヒモビッチ復帰の可能性に期待するミラニスタは少なくない。幹部としてクラブに戻ってきたレオナルドが、夏にイブラ復帰に動いたのを認めているだけになおさらだろう。

しかし、ミノリーティ記者は両選手の復帰にも否定的だ。ミラン時代にフィジカルの問題で苦しんだパトについては、「すでに最前線から外れている」と一刀両断。イブラヒモビッチも「彼ですら時計の針は戻せない」と、37歳という年齢がネックになると訴えた。

◆イブラ復帰にOBの意見も二分

イブラ復帰を疑問視するのは、ミノリーティ記者だけではない。

OBのアレッサンドロ・コスタクルタは『Milannews.it』で「成長させるべき選手たちを抑えてしまう。個人的には復帰に反対」とコメント。ステーファノ・クオーギも、『ガゼッタ』で、クトローネの成長を妨げるとし、「キャリアの終わりにあるカンピオーネを加えて何の意味がある?」と反対している。

ただ、イブラ獲得を望むOBもいる。マルコ・アメーリアは『ガゼッタ』で「規格外の選手を加えるのは常に良いアイディアだ。その選手がイブラなら、疑うことはない」とコメント。「彼の存在で日々の練習でも仕事のハードルが上がる」と、チーム全体に好影響を及ぼすと主張した。

また、デメトリオ・アルベルティーニも『Milannews.it』で「可能性があるなら、私は常に自分のチームに彼を望む。マネジメントは少し難しいかもしれないが、彼のような選手がいれば異なる解決策を持つことができる」と、復帰に賛成している。

◆過去のレジェンドたちに続くのか

CL出場権獲得は厳しいとの声もあるミランにとって、イブラヒモビッチ復帰がこの上なく魅力的な一手であることは確かだ。

ただ、ルート・フリット、ロベルト・ドナドーニ、アンドリー・シェフチェンコ、カカーと、一度は離れたミランに戻ったものの、大きな活躍を見せられなかったというレジェンドも少なくない。

ミランとイブラヒモビッチはどのような決断を下し、その結果は吉と出るのか。進展が注目される。

カルチョ・ライター

東京都出身。2004年に渡伊、翌年からミランとインテルの本拠地サン・シーロで全試合取材。06年のカルチョーポリ・W杯優勝などを経て、08年に帰国。約10年にわたり、『GOAL』の日本での礎を築く。『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿。現在は大阪在住。

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