Yahoo!ニュース

バッジョにディバラ? W杯開幕戦で活躍のゴロビン、伊メディアが絶賛 「ユーヴェにふさわしい」

中村大晃カルチョ・ライター
6月14日、W杯開幕戦で得点を決め喜ぶロシアのアレクサンドル・ゴロビン(左)(写真:ロイター/アフロ)

4年に一度の祭典が幕を開けるとともに、“メルカート狂想曲”も始まった。

ワールドカップ(W杯)がついに始まった。14日の開幕戦は、開催国ロシアがサウジアラビアに5-0と圧勝。マン・オブ・ザ・マッチ(MOM)には途中出場で2ゴールを挙げたデニス・チェリシェフが選出されたが、1得点2アシストのアレクサンドル・ゴロビンが目を引いたという声も少なくない。

アッズーリがいないW杯を迎えたイタリア・メディアにとっては、うってつけだった。ユヴェントスの関心が取りざたされていた22歳が、W杯開幕戦という世界が注目する大舞台で活躍したのだから、一気にスポットライトを浴びたのも当然だ。

大会が始まる前から、ゴロビンはユーヴェの副会長パヴェル・ネドヴェドや司令塔ミラレム・ピアニッチなど、ビッグネームと比較されていた。そこに加えて、今回のパフォーマンスだ。「ゴロビン・フィーバー」がさらにヒートアップしたのは言うまでもない。

『コッリエレ・デッロ・スポルト』は一面で、ゴロビンが「ロベルト・バッジョのようなフリーキック」を決めたと報道。『ガゼッタ・デッロ・スポルト』も「アッレグリ、見たか?ゴロビンはユーヴェにふさわしい」と、イタリア王者に見合う逸材と称賛した。

『ガゼッタ』は、採点でも8点と高く評価し、MOMに選出。試合レポートの中で「賞(MOM)は勝ち取れなかった。だが、間違いなく次のサラリーをアップさせた」「カンピオーネ(最高級の選手)が生まれたかもしれない」と賛辞を続けている。

前日にツイッターで「死ぬほど好きな選手がいる。見てくれれば分かるよ」と、ゴロビンを称賛していたジャーナリストのマウリツィオ・ピストッキ記者は、「今日でみんな目を覚ましたな」とご満悦だ。

『Calciomercato.com』のジャンカルロ・パドヴァン記者も、「ピアニッチよりも、むしろ新たなディバラ」と評価。戦術的に複数の役割をこなせるならば、ゴロビンが所属するCSKAモスクワが要求する2500万ユーロ(約32億円)は「安いくらい」と述べた。

一方で、ゴロビンの活躍に“懸念”の声も上がっている。市場価値が高騰するからだ。

『ガゼッタ』は、強力な資金力を持つプレミアリーグのクラブが本腰を入れれば、CSKAモスクワが要求額を倍増させる可能性もあると指摘した。1700~1800万ユーロ(約21~23億円)での獲得を望んでいたユーヴェにとっては耳が痛い話だろう。

倍増するかは別にして、ゴロビンがW杯で活躍すればするほど、交渉が難しくなるのは確かだ。かつて本田圭佑も在籍したCSKAモスクワとの駆け引きがいかに難しいかはよく知られている。

ただ、まだたった1試合しか終わっていないのも事実だ。実際、サウジアラビア戦でのパフォーマンスで騒ぎ立てるのは早計とSNSで指摘する冷静なサポーターも少なくない。

だが、これがW杯というものだ。世界の視線が集まる大舞台だけに、少しの活躍や失敗が市場価値を大きく変える。この夏、新たなスターは誕生するのか。そしてゴロビンはその一人となるのか。狂想曲は、始まったばかりだ。

カルチョ・ライター

東京都出身。2004年に渡伊、翌年からミランとインテルの本拠地サン・シーロで全試合取材。06年のカルチョーポリ・W杯優勝などを経て、08年に帰国。約10年にわたり、『GOAL』の日本での礎を築く。『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿。現在は大阪在住。

中村大晃の最近の記事