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ユーヴェ7連覇に前進のセリエA、ナポリが残り10戦で目指すべき勝ち点100

中村大晃カルチョ・ライター
3月3日、セリエA第27節ローマ戦でのナポリ。この敗戦で王者との立場は一変した(写真:ロイター/アフロ)

イタリア屈指の熱量を誇るサポーターが、敗戦後に拍手をチームに送ったのは、慰めからではなく、鼓舞するためだっただろう。だが、今はまだ、その想いが結実していない。

◆数時間で一変した両者

ナポリは現地時間3月3日、セリエA第27節でローマに2-4と敗れた。同日のラツィオ戦を制したユヴェントスとは、勝ち点1差。消化が1試合少なかった王者とナポリの立場は逆転した。

不思議なものだ。ユーヴェがラツィオを沈める一撃を決めたのは、アディショナルタイムの93分だった。値千金の決勝点を挙げたのは、それまで輝けていなかったパウロ・ディバラ。背番号10の一瞬のきらめきで、ユーヴェはスコアレスドローが濃厚だった強敵との一戦を物にした。

その約1時間後、ナポリも6分に先制と好発進した。だが、わずか1分でリードを失う。ジェンギズ・ユンデルの右足から放たれたボールが、マリオ・ルイに当たって大きな弧を描き、ホセ・マヌエル・レイナの頭上を越えてゴールイン。おせおせムードに水を差されたナポリは、その後のチャンスも生かせず逆転負け。わずか数時間で、ナポリとユーヴェを取り巻く雰囲気は一変した。

◆王者有利の声強まる

当然、世論は「ユーヴェ優勝」に傾く。『ガゼッタ・デッロ・スポルト』電子版のアンケートでは、6000名超の78%がユーヴェ有利と予想。『メディアセット』では1万4000名弱の81%と数字が増え、6日付の『ガゼッタ』が報じた100名の識者への調査でも、64名がユーヴェ優勝と予想した。

ナポリのサポーターは、ホームで負けたチームを怒るのではなく激励していた。しかし、連勝が10で止まったナポリは、続くインテル戦でも引き分けて白星を取り戻せず。今季のドローは4試合すべてスコアレスで、直前の公式戦で黒星を喫している。

一方のユーヴェは、ウディネーゼを下し、ついに首位へと浮上。さらに14日、未消化だったアタランタ戦も制し、逆にナポリとの勝ち点差を4に広げた。今季ずっとナポリの背中を追ってきたユーヴェが、シーズンの肝となるこのタイミングで、ついに定位置を奪い返した形だ。

筆者作成
筆者作成

「ユーヴェ優勝」の声は、前述のアンケート時より増えていることだろう。実際、ユーヴェは納得の数字でライバルを見下ろしている。リーグ12連勝中、しかも直近は9試合連続クリーンシート。気づけばリーグ最多得点および最少失点と、文句のつけようのない成績だ。

ナポリが悪いわけではない。イタリア最高と称されるサッカーに加え、勝ち点も昨季の28節終了時点から10ポイントも積み上げている。今季のユーヴェとナポリのバトルは、稀にみるハイペースかつハイクオリティーなタイトルレースなのだ。

◆ナポリにあきらめの兆し?

だが、悔やまれる点があったことも否めない。例えば、ローマ戦後にマウリツィオ・サッリ監督が口にした「スクデット争いが関係するのはユーヴェだけ。別次元」という、まるで敗北宣言のような発言。これは言い訳につながったという見方も少なくない。サッリ監督はヨーロッパリーグでも決勝トーナメント1回戦を前にリーグ優先を公言し、結果、チームは敗退に終わっている。

『スカイ・スポーツ』の解説者ジュゼッペ・ベルゴミも、「気迫十分にこの試合を勝とうという激しい闘争心が見えなかった」と、インテル戦でナポリの精神的な問題がうかがえたと指摘した。「ナポリはよくやった。だが、これまでの試合と同じインテンシティーではない。私は、彼らが信じられなくなり始めているのだと思う」。

対照的にユーヴェのタフさを感じさせるのが、『スカイ』のマッテオ・マラーニ記者の見解だ。「確かにユーヴェにはすべてのライバルたちより整った戦力がある。だが、違いとなっているのは、ユーヴェは決してチャンスを無駄にしないということだ」。

◆希望は残るも、崖っぷち

両チームは4月22日の第34節で直接対決する。このままでは、ナポリは勝っても追いつけないが、今の彼らにできるのは、王者のつまずきに期待しつつ、自分たちが勝ち続けることだ。そのメンタリティーがない限り、7連覇に突き進む絶対王者を倒すことはできない。

実際、チャンスはある。天王山を除き、トップ6との対戦は、ユーヴェの3つ(ミラン、インテル、ローマ)に対し、ナポリは1つ(ミラン)だけ。しかもユーヴェは、インテル、ローマとの2試合がアウェーだ。また、ユーヴェがCLで8強に進んだのに対し、ナポリはリーグ戦に専念できる。

難しいが、不可能ではない。そもそも、10試合を残して勝ち点4差であきらめる道理はない。キャプテンのマレク・ハムシクも「勝ち点100にたどり着けば、スクデットを勝ち取れるかもしれない」と意気込む。勝ち点70のナポリが大台に達するには、残り試合で全勝が必要だ。

ナポリにとって、残り10試合はすべて崖っぷちの戦いとなる。その最初となる18日のジェノア戦、ナポリの選手たちは、2週間前に鼓舞してくれた本拠地サン・パオロのファンの期待に応えられるだろうか。できなければ、28年ぶりの悲願であるスクデットには、手が届かない公算が大きくなる。

カルチョ・ライター

東京都出身。2004年に渡伊、翌年からミランとインテルの本拠地サン・シーロで全試合取材。06年のカルチョーポリ・W杯優勝などを経て、08年に帰国。約10年にわたり、『GOAL』の日本での礎を築く。『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿。現在は大阪在住。

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