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セリエAは18チームにすべき? イタリアのサッカーファンは約6割が賛成

中村大晃カルチョ・ライター
9月17日のナポリ戦で6失点したベネヴェントの選手たち(写真:ロイター/アフロ)

イタリアサッカー連盟のカルロ・タヴェッキオ会長は先日、プロリーグを構成するクラブ数が多すぎるとの見解を示した。イタリアのサッカーファンは、リーグ縮小を望んでいるのだろうか。

◆メリットは多い?

タヴェッキオ会長は、セリエAとセリエBを18クラブずつ、セリエCを18クラブの2グループ制にするのが妥当と主張。リーグを縮小することで経営面にも好影響を及ぼし、パルマのような財政破綻という事態を避けることにもつながると強調する。

クラブ数が減れば、日程面での負担が軽減するのも確かだ。今季からセリエAは冬期休暇を変更し、プレミアリーグのようにクリスマス時期や年末もリーグ戦を行うことに決めた。リーグ縮小は、永遠のテーマである日程問題も大きく左右するだろう。

縮小することで競争性の向上も期待される。直近なら2016-17シーズンのペスカーラ、2015-16シーズンのカルピ、フロジノーネなど、昇格しても1年ですぐに降格する「エレベーターチーム」が多ければ、リーグ全体の質が下がることは否めない。

実際、今季も、残念ながら降格候補の昇格組ベネヴェントは、開幕からリーグ最少タイの1得点、リーグ最多の16失点で6連敗と最下位であえいでいる。このベネヴェントや、3勝しか挙げられなかった昨季のペスカーラは、「1部」にふさわしくないとの声は少なくないのだ。

◆簡単ではない縮小

だが、このテーマは決して目新しいものではない。3年以内に縮小も可能と声高に叫ぶタヴェッキオ会長だが、すでに3年前にも同様の主張を口にしていた。しかし、2004-05シーズンに始まった20チーム制は変わっていないというのが現状だ。

要因は様々あるが、タヴェッキオ会長はそのひとつとして、順位表の左右、つまり上位勢と下位勢で意見が異なり、すり合わせが難しいとの見解を示している。確かに、タイトルや欧州の舞台など望むべくもなく、1部昇格や残留が「夢」となるスモールクラブにとって、リーグ縮小は希望を失うことにもつながるだろう。

◆ファンの意見は…

では、リーグを外から見ている人たちはどう考えているのだろうか。イタリア『コッリエレ・デッロ・スポルト』紙が現地時間10月1日、サッカーファンらを対象にしたアンケートの結果を伝えている。

アンケートによると、リーグ縮小に「大きく賛成」するのは29%。「比較的賛成」の30%も加えると、約6割近くのファンが18チーム制の復活に賛同した。「やや賛成」が15%、「反対」は18%にとどまっている。

2017年10月1日付コッリエレ・デッロ・スポルト紙参照、筆者作成
2017年10月1日付コッリエレ・デッロ・スポルト紙参照、筆者作成

ただ気になるのは、55歳以上のファンは「大きく賛成」が14%、南部や島しょ部のファンは25%と、全体と比べて数字が下がっている。以前のリーグをよく知るサポーターや、ビッグクラブが少ない地域では、縮小を必ずしもよしとしないファンが多いのかもしれない。

また、「縮小により恩恵を受けるのは?」との質問でも、「試合の質の低下を回避し、より激しいリーグを見られるサポーター」や「試合数減少でパフォーマンス向上と負傷リスク軽減を期待できる選手」、「試合数減少で所属選手数を抑えられるクラブ」より、「2チーム減では状況は変わらず、誰も何も得られない」との回答が上回っている。

2017年10月1日付コッリエレ・デッロ・スポルト紙参照、筆者作成
2017年10月1日付コッリエレ・デッロ・スポルト紙参照、筆者作成

リーグ縮小で「エレベーターチーム」が減る可能性については、「これらのチームはリーグの質を低下させるので良いこと」が45%、「たとえ1年でもこれらのチームが1部に昇格する可能性をより高めるのが正しいから残念なこと」が42%と、大差はついていない。

◆おとぎ話で誇れないリーグに?

結局のところ、現状に問題があるので縮小には賛成だが、大きな効果を期待しているわけではないということだろうか。ただ、『コッリエレ』は「エレベーターチーム」についてこう記している。

「これらの(エレベーターチームが昇格する)“おとぎ話”が、ピッチで示すクオリティーにとって良くないことであり、自分たちの1部リーグに誇りを持てなくなるということには全員が賛成のはずだ」

プレミアリーグ、リーガエスパニョーラ、リーグアンの20チーム制と、ブンデスリーガの18チーム制…欧州主要リーグの一角を占めるセリエAは、どちらの道を選ぶべきなのだろうか。

カルチョ・ライター

東京都出身。2004年に渡伊、翌年からミランとインテルの本拠地サン・シーロで全試合取材。06年のカルチョーポリ・W杯優勝などを経て、08年に帰国。約10年にわたり、『GOAL』の日本での礎を築く。『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿。現在は大阪在住。

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