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トッティ、東京行きは断ったとの報も 注目は来日より「何をするか」?

中村大晃カルチョ・ライター
ローマ最終戦でのフランチェスコ・トッティ(写真:ロイター/アフロ)

ローマのユニフォームを脱いだ元イタリア代表のフランチェスコ・トッティは、東京ヴェルディ移籍の可能性が騒がれている。だが、イタリアで注目されているのは、トッティが日本に来るかどうかよりも、彼が「何をするか」だ。

◆沈黙を保つトッティ

東京ヴェルディの羽生英之社長は9日、トッティがアメリカに向かう可能性は消滅し、「幹部としてローマに残るか、東京ヴェルディで現役を続けるか」の二択になったと明かした。この発言はイタリアでも一部メディアで「トッティが日本へ?」「センセーショナル」と取り上げられている。

実際、トッティは今後について沈黙を保ってきた。クラブが契約を更新しないと発表したことで、国際的に「トッティ引退」と報じられたが、本人はスパイクを脱ぐとは口にしていない。世界のサッカーファンを感動させたラストゲーム後のセレモニーでも、キャリアについて明言を避けている。

そのため、現役続行もあるとの声は絶えなかった。ローマ専門サイト『laroma24』は6月1日、アンケートでユーザーの59%が「トッティはローマ以外のクラブでプレーを続ける」と予想したと伝えた。恩師のズデネク・ゼーマンのように、自身が望むなら引退すべきでないという識者も少なくない。

◆「日本行きは断った」との報も

だが、日が経つにつれ、トッティは徐々に幹部就任に傾いているとの声は大きくなっていった。それは、本人が希望する現場での仕事を管理する人事体制も影響しているようだ。

トッティは強化部門を率いるモンチ新SDに好印象を抱いたと言われている。また、現役時代にともにスクデットを獲得したエウゼビオ・ディ・フランチェスコが監督に就任したことも大きい。モンチSDとディ・フランチェスコ監督はそれぞれ、幹部としてトッティが戻るのを待つと話している。

また、代表でチームメートだったアレッサンドロ・ネスタ(現マイアミFC監督)も、11日の『コッリエレ・デッラ・セーラ』のインタビューで、トッティの幹部就任を示唆した。ネスタはマイアミ行きも噂されたトッティと連絡を取ったと明かしたうえで、「彼には幹部としての将来がある」と述べている。

さらに、『コッリエレ・デッロ・スポルト』は12日付の紙面で、トッティが東京ヴェルディや上海のクラブからの誘いを断ったと報道。オファーを喜んでいたとしつつ、「後戻りはしない」と幹部に就任することは変わらないと伝えた。

◆定まらない役割とクラブとの距離感

では、なぜトッティの幹部就任は正式に発表されないのだろうか。それは幹部としての具体的な役割が定まっていないからだ。

前述のように、トッティの希望は現場での仕事とみられている。『コッリエレ・デッロ・スポルト』は、SDと監督の中間のような役割が希望と伝えた。また、モンチSDも自身の右腕になることを望み、ディ・フランチェスコ監督もトッティにそばでチームを支えてほしいと願っているそうだ。

だが、ジェームズ・パロッタ会長が「王子」に期待しているのは、広告塔としての役割だ。すでに新生ローマは始動しているが、トッティの人気はいまだに絶大。『コッリエレ・デッロ・スポルト』によれば、キャンプ地に足を運ぶファンの多くが背番号10のユニフォームを着ており、現地のオフィシャルショップで最も売れているのもトッティのユニフォームという。

そのため、クラブは「顔」となるトッティに、キャンプ地やアメリカツアーにも来るように呼びかけているという。だが、トッティは明確な拒否こそしていないものの、連絡を絶っているそうだ。指揮官やチームマネジャーのモルガン・デ・サンクティスと話した以外、誰とも会っていないという。この温度差から、『コッリエレ・デッロ・スポルト』は「トッティ問題」という表現も用いている。

◆テレビ界からのオファーも

正式な幹部就任が実現していない以上、結局のところ、本人ないし東京ヴェルディが正式に表明するまで、Jリーグ挑戦の可能性がゼロと断言することはできない。実際、トッティには別方面からのオファーも届いているようだ。

12日付の『ガゼッタ・デッロ・スポルト』は、イタリアのテレビ局『Rai』と『Sky』がトッティの“獲得”を狙っていると報じた。新シーズンや来年のワールドカップにおけるコメンテーター就任や、妻でタレントのイラリー・ブラージとの共演が提案されているそうだ。イタリアにとどまることは変わらないが、テレビ界に転身するとなれば、それはやはり現役引退を意味する。

今もバカンス中のトッティは、果たして何を思うのか。『コッリエレ・デッロ・スポルト』は、公式戦が始まる8月に入ってから、自身の希望と「会長案」の中間的な役割で、トッティが幹部としての仕事を始めると予想しているが…?

カルチョ・ライター

東京都出身。2004年に渡伊、翌年からミランとインテルの本拠地サン・シーロで全試合取材。06年のカルチョーポリ・W杯優勝などを経て、08年に帰国。約10年にわたり、『GOAL』の日本での礎を築く。『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿。現在は大阪在住。

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