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期待と不安が混在するミラン、4年ぶりのCL復帰は可能or不可能?

中村大晃カルチョ・ライター
ユヴェントスも撃破したミランは復活を遂げられるのか(写真:アフロ)

10月25日のジェノア戦で7試合ぶりとなる黒星を喫したミランだが、その後は再び2連勝を飾った。ここ9試合で7勝1分け1敗と好調を保っている。

第12節を終え、ミランは勝ち点25。1試合平均にすると2.08ポイントだ。38試合なら、勝ち点79に到達する。これは、勝ち点82で優勝した2010-11シーズン以来となる6年ぶりの好ペースだ。

20チーム制になった2004年以降の12シーズンで、3位が勝ち点79を上回ったのは、昨季のローマ(勝ち点80)のみ。つまり、このままならミランは3位以内に入り、少なくとも予選プレーオフから来季のチャンピオンズリーグ(CL)に出場できる可能性が高いということになる。

だが、シーズンはまだ3分の1も終わっていない。開幕前の評価が決して高くはなかったミランは、本当に4年ぶりとなるCLへのチケットを手に入れることができるのか。それとも、これから失速してしまうのか。イタリア『ガゼッタ・デッロ・スポルト』は8日付の記事で、どちらもあり得ると報じた。

◆指揮官の存在とクラブ売却による補強への希望

CL復帰に向けてミランを後押しする最大の根拠は、ヴィンチェンツォ・モンテッラ監督の存在だ。

今季のミランは夏に大きな補強をしておらず、エースのカルロス・バッカのゴールも12試合で6得点と昨季も今季も変わっていない。だが『ガゼッタ』は、指揮官がチームのメンタリティーを変えたと指摘する。

放出も騒がれる中でチームに残したエムバイェ・ニアンやスソが活躍し、リッカルド・モントリーヴォの離脱後に中盤の底を託した若手マヌエル・ロカテッリがブレイクしたことも、「賭けに勝った」モンテッラ監督の功績だ。

また、今季のミランは決定力が16.96%と昨季の約13%を上回っている。これは、今季の上位7チームのうち、17.04%のラツィオに次ぐ2位の数字。首位ユヴェントスやリーグ最多得点の2位ローマを上回っている。

さらに、今月中に完了すると言われるクラブ売却でミランは資金力を取り戻すとみられている。夏のマーケットでは資金を投じることができなかったが、中国資本の新オーナーは1月から投資に動くと予想されているところだ。冬の時点での順位にもよるが、大型補強への期待は小さくない。

◆厚みのない選手層と綱渡り的な戦いぶり

一方で、『ガゼッタ』はミラン失速への懸念要素も3つ挙げた。

まずは、継続性のなさだ。1試合を通じた安定感がなく、難なく勝利したのはラツィオ戦のみ。8勝のうち6試合はちょっとしたことで結果が変わっていてもおかしくなかったと指摘した。相手への危険度と相手からの危険度を差し引いた「危険度指数」は+3.4。ローマ(+42.6)やユヴェントス(+41.3)に大きく引き離され、ナポリ(+20.3)やインテル(+17.1)にも差をつけられている。

次に、選手層の薄さだ。本田圭佑が今季初先発したジェノア戦で敗れ、ターンオーバーの失敗が騒がれたことは記憶に新しい。今季700分以上プレーしたミランの選手は10名。ユーヴェやナポリは7名だ。長いシーズンをレギュラーだけで乗り切ることはできない。前述のように冬の補強は期待されるが、全ポジションで層に厚みを持たせることは難しいだろう。

最後に、チーム本来の戦力だ。これも前述のように、ミランの開幕前の評価は高くなかった。シュート数と被シュート数の差は-1と、ユーヴェ(+52)、ナポリ(+39)、ローマ(+27)とは雲泥の差だ。昨季、前半戦でウノゼロ(1-0)を続け首位に立ったインテルは、後半戦で失速し、3位ローマに勝ち点13差の4位に終わった。ミランも同様に失速する可能性があることは否めない。

◆割れる意見、サポーターは謙虚?

OBのアレッサンドロ・コスタクルタは、同じ8日付の『ガゼッタ』のインタビューで、元日本代表監督のアルベルト・ザッケローニのもとでスクデットを獲得した1998-99シーズンのミランに今のチームが似ていると評価。「このスピリットならCLにたどり着ける」と述べている。

だが、そのコスタクルタも、ミランにユーヴェやローマ、ナポリほどの戦力がないことは認めている。やはりOBのマウリツィオ・ガンツは今月初旬、ミラン専門サイト『milannews.it』で「3位のことを考えずにこのまま続けるべき」と主張。「4位や5位でも十分」と訴えた。

『milannews.it』のアンケートでは、7878名のユーザーのうち、ミランがCL出場権を競えると回答したのが29.72%。70.28%が「謙虚にヨーロッパリーグ出場権を考えるべき」と回答しており、ファンの約7割が「CLは難しい」と考えているようだ。

インターナショナルウィークが終わると、ミランはいきなりインテルとのミラノダービーに臨む。12月にはローマとの大一番も控えている。クリスマス前の12月23日には、スーペルコッパでユヴェントスと対戦だ。これらのビッグマッチを戦いつつ、課題とされる継続性を身につけ、ミランは4年ぶりに欧州最高峰の舞台へ戻ることができるだろうか。

カルチョ・ライター

東京都出身。2004年に渡伊、翌年からミランとインテルの本拠地サン・シーロで全試合取材。06年のカルチョーポリ・W杯優勝などを経て、08年に帰国。約10年にわたり、『GOAL』の日本での礎を築く。『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿。現在は大阪在住。

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