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20年ぶりの悲願に向けて第一歩、清武所属のセビージャを迎え撃つユヴェントス

中村大晃カルチョ・ライター
アッレグリ体制3年目で欧州制覇を目指すユヴェントス(写真:ロイター/アフロ)

「まず知っておくべきは、初戦は最も重要な試合だということだ。シーズン最初の目標であるグループステージ突破への土台となるからね」

チャンピオンズリーグ(CL)開幕戦を前に、ユヴェントスのマッシミリアーノ・アッレグリ監督は会見でこう述べた。清武弘嗣が所属するセビージャを本拠地ユヴェントス・スタジアムで迎え撃つイタリア王者は、20年ぶりの悲願に向けた第一歩を慎重に踏み始めようとしている。

国内で断トツの優勝回数を誇るユヴェントスだが、欧州を制したことは2回しかない。「チャンピオンズリーグ」では、1995-96シーズンの1度だけだ。このときトロフィーを掲げた元主将のジャンルカ・ヴィアッリは、ジャンルイジ・ブッフォンに向けて冗談交じりにこうメッセージを送っている。

「ジジ(ブッフォン)、優勝してくれ。そうじゃないと、みんな私が掲げたCLのトロフィーのことしか思い出してくれないんだ。まるで、キャリアを通じて私がほかに何もやっていないかのように」

本気で欧州制覇を狙うべく、リーグ5連覇中のユーヴェはこの夏、大型補強に動いた。9000万ユーロ(約104億円)でゴンサロ・イグアインを手に入れ、ミラレム・ピアニッチ、ダニエウ・アウベス、メディ・ベナティアと、各ポジションで大物を獲得したのだ。鉄壁の守備を誇るカルテット(ブッフォン、アンドレア・バルザーリ、レオナルド・ボヌッチ、ジョルジョ・キエッリーニ)も健在。ポール・ポグバこそ史上最高額でマンチェスター・ユナイテッドに手放したが、総合的なチーム力はアップした。

実際、セリエAでは開幕から3連勝で単独首位と好発進。イグアインも3試合で3ゴールと上々のスタートを切っている。良い流れでCL開幕を迎えることとなった。そのうえ、ユーヴェは初戦を得意としている。これまでCLに16回出場しているが、初戦は10勝6分けと負けなしなのだ。

ホームでの強さは圧倒的で、UEFAの試合では17戦無敗。2013年4月のバイエルン・ミュンヘン戦を最後に、約3年半も負けていない。ホームではスペイン勢を相手に14勝7分け2敗という成績だ。セビージャとは昨季のグループステージでも同組だったが、ホームでは2-0と勝利している。セビージャの選手たちは、ユヴェントス・スタジアムを難攻不落の要塞に感じるかもしれない。

しかし、セビージャはヨーロッパリーグ3連覇という偉業を成し遂げた強豪だ。また、今季はホルヘ・サンパオリ監督が就任し、先発出場が予想される清武をはじめとした補強でメンバーが入れ替わった。昨季や過去のデータにとらわれることはないだろう。

そもそも、データで言えば、セビージャを後押しする数字もある。『ガゼッタ・デッロ・スポルト』によると、アッレグリ監督はスペイン勢に3勝7分け9敗と大きく負け越しているのだ(ミラン時代を含む)。19試合で29失点という数字も、攻撃志向のサンパオリ・サッカーにとって追い風だ。

また、有利とされるユヴェントスにはプレッシャーもある。前述のように、今季は欧州制覇が目標であり、グループステージでつまずくわけにはいかない。2シーズン前はダークホース的な存在で決勝まで勝ち進んだが、優勝候補の一角となる今季は重圧も増しているのだ。「初戦が大事」という指揮官の発破も、一つ間違えるとブレーキにつながる。

それでも、総合力で勝るユーヴェが有利というのがイタリアでの見方だ。有名ジャーナリストのマリオ・スコンチェルティは、『コッリエレ・デッラ・セーラ』のコラムで、セビージャが欧州のベスト8に入るチームとしつつ、ユーヴェとは比較できないと主張。「苦しむだろうが、最後は勝つ」と断言した。

カルチョ・ライター

東京都出身。2004年に渡伊、翌年からミランとインテルの本拠地サン・シーロで全試合取材。06年のカルチョーポリ・W杯優勝などを経て、08年に帰国。約10年にわたり、『GOAL』の日本での礎を築く。『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿。現在は大阪在住。

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