ミラン監督解任、悪いのはアッレグリだけだったのか?

本田圭佑のセリエAデビューは、日本のファンにとって忘れられない試合になっただろう。背番号10の堂々たるパフォーマンスや、彼がポスト直撃のシュートを放ったからだけではない。19歳のFWドメニコ・ベラルディが、史上初となるミラン相手の4ゴールを挙げ、サッスオーロが番狂わせを演じたからだ。そしてそれにより、成績不振のミラン監督に引導を渡すことになったからだ。

ミランは現地13日、マッシミリアーノ・アッレグリ監督の解任を発表した。当面はアシスタントコーチのマウロ・タソッティ氏が暫定的にチームを率いるが、13日午後の時点で、元オランダ代表MFクラレンス・セードルフが後任に就任すると言われている。

イタリア『スカイ・スポーツ』によれば、15日のコッパ・イタリア5回戦スペツィア戦ではタソッティ氏が指揮を執り、それから“セードルフ監督”が誕生する見通しだ。セードルフはまだボタフォゴと選手として契約しているが、自由に契約を解消できる条項が含まれているという。

ブラジルで現役を続けているセードルフは、以前からミランの新監督候補と言われていた。シルヴィオ・ベルルスコーニ名誉会長のお気に入りだからだ。今季で契約満了だったアッレグリ監督も、シーズン後の退任をすでに明らかにしていた。何とかアッレグリに最低限の結果を残してもらい、来季からセードルフにベンチを託す。これがミランの狙いだった。だが、その目論見は外れた。

ミランはいつになっても不振から脱却できず、結局はアッレグリ解任に踏み切った。就任1年目でリーグ優勝を達成し、その後も2位、3位だったとはいえ、今季は前半戦を終えて勝ち点20の11位。首位ユヴェントスに勝ち点30差、降格圏とはわずか6差、19試合で失点30という成績では、監督の責任が問われるのも当然だ。

しかし、元凶はアッレグリだったのだろうか。『ガゼッタ・デッロ・スポルト』のコラムニスト、アルベルト・チェッルーティ氏はこう話している。「アッレグリはすべての代償を払った」。

そもそもアッレグリ監督は、シーズン前から危うい立場にあった。「ミランの血」を好み、外様の同監督と以前からそりが合わなかったベルルスコーニ名誉会長は、今季開幕前にもセードルフ招へいを画策したのだ。このときは、アドリアーノ・ガッリアーニCEOらの働きかけで続投となった。だがミランは、クラブのトップが信頼しない指揮官でシーズンを戦うことになったのだ。

追い討ちをかけるように、夏の補強もはかどらなかった。本田の加入が1月に持ち越されたのはご存じのとおり。カカー獲得には成功したが、懸案だった守備の強化は不十分だった。サポーターは11月、横断幕で「ディフェンスと中盤を強化すべきだった」とクラブに怒りをぶつけている。

その11月、ミランの混迷に拍車をかけたのが、ベルルスコーニ名誉会長の娘である幹部のバルバラ・ベルルスコーニ女史だ。クラブの方針に不満を表し、路線変更を求めたのである。実質的にガッリアーニCEOにケンカをふっかけた形だ。最終的に父親が仲裁し、両者はCEOの職を分かち合うことになった。だが、バルバラの動きはそれまでの体制を否定することでもあり、ひいてはアッレグリの権威を失墜させるものでもあった。これでは、選手たちの信頼を失ってもおかしくない。

もちろん、アッレグリ自身の責任がないということではない。問題はいろいろあったが、特に大きかったのは、チームに勝者のメンタリティーを伝えられなかったことにある。

勝てなかった14試合のうち、先制しながら逃げ切れなかったのは半分の7試合。2点を先行しながら逆転負けしたサッスオーロ戦は、そんなミランの今季を如実に表している。2014年の初戦も、アタランタに3-0と勝利したが、2点目を奪うまではいつ同点にされてもおかしくなかった。今のミランには、苦境に耐える力、確実に勝利を物にする力が欠けているのだ。

新監督を含めた今後の体制がどうなるかは、まだ不透明だ。だが、その勝者のメンタリティーを取り戻さなければ、今季中の復調は難しい。そしてそれこそ、本田に期待したいことの一つだ。

カリスマ性やリーダーシップを持つ選手が少ない今のミランにおいて、本田のタフなメンタルは一つの模範となる。ベンチスタートだったサッスオーロ戦でも、本田は随所にその気持ちの強さをうかがわせた。アップ中にリッカルド・モントリーヴォと相談し合う姿は、とてもこれが初戦という選手のそれではなかった。彼にはチームを引っ張る力があるはずだ。

カカーやリッカルド・モントリーヴォといった選手たちとともに、ミランを低迷から引き上げるけん引力となれば、本田は名実ともに背番号10にふさわしいビッグプレーヤーになれる。先発デビューが予想されている15日のスペツィア戦で、本田とともに生まれ変わるミランを見たいものだ。