新型コロナウィルスで企業の新卒採用スケジュールが遅延しています。採用をオンラインで行う会社も急増していますが、不慣れで混乱もみられるといいます。新型コロナウィルスは就職・採用の仕組みも見直しを促します。通年採用、AIでのスクリーニング、インターンシップの拡大。議論も巻き起こっています。

中でもぼくは、インターンを採用と直結させない政府の自粛要請に対し、中西宏明経団連会長が異を唱え、起業体験を採用に結びつけたいという企業の意向を政府に求めたことに注目しています。そもそも政府の要請の趣旨が不明であるうえ、全員長期インターンを柱とする専門職大学の制度を同時に設けた考えとも矛盾するからです。

インターンに行かれて勉学がおそろかになるというのが大学の懸念と聞きますが、おカネを払って通う大学のサービスよりも企業インターンのほうが大事と学生=クライアントに見られているのであって、大学は産業界を規制するのではなく自らのサービス価値を上げるのが筋と考えます。

ぼくが学長となって4月に開学したiUは全員に半年のインターンを必修として課します。企業の中で学び、腕を磨くのですが、学生も企業も当然、就職の可能性も見込むからこそ、本気のインターンになります。

ところで、大学と就職の関係について、柳川範之東大教授が、大学の卒業を待たずに就職し、10年の間に必要な学位を修得して卒業する仕組みを提案しています。独学で大学を卒業して教授になったパンクな柳川さんらしい構想で、ぼくも膝を打ちました。

柳川さんは言います。大学生の時にもっと勉強しておけば良かったと後悔する声をよく聞くが、それは勉強する時期が適切ではなく、経済・法学などは社会経験のない若者にはリアリティーもない。実社会に出て初めてその学問の意義や重要性に気がつく。

だから、早く就職し、そこから必要に応じて学ぶ。「単位修得は入学後10年間有効としておき、就職後も必要になったときに単位を履修できるようにしておく。企業も早く採用をする代わりにそのような学業の時間を認め、卒業を目指させることにする。」

この提案は身にしみました。自らを振り返ってみます。

ぼくはパンクロック三昧で授業というものに出席しませんでした。それでも卒業できる(日本で唯一と言われていた)学部を選びました。もちろん、罰は食らいます。就活で受けた会社、全て落ちました。

日銀、都銀、証券、電電公社、KDD、広告などなど全部落ちました。一次、というか、喫茶店で落ちたこと多数。何も勉強してませんから。この就活1か月ほどの間に、それまでの大学4年間で得たもの全てを上回ることを学びました。濃密に。強烈に。社会で活躍する大勢の大人たちに、優しく、厳しく接してもらい、自分の未熟さを突きつけられ、かく汗の量を求められ、頬を張られ、覚醒した感じです。

こりゃいかん。マジで進路を考えました。表現、今でいうコンテンツ、そしてメディアに関わろう。その親玉は誰だ。ルール作っているヤツだ。どうやら郵政省というところだ。そう思いたち、留年して公務員試験の勉強を始め、翌年なんとか補欠で郵政省に潜り込んだ次第です。

就活、全部落としてくださり、心から感謝しています。ありがとうございました。あの時、銀行なりどこなり通っていたら、素直に入社して、違う道に進んでいたでしょう。その後、自分のやりたいことを見つけて、失敗したと落ち込んだことでしょう。

だけど、本当に勉強したのは、社会人になってから。経済学部を出たものの、そんなの役に立ちません。まず法律。配属先の上司が、1週間後に公衆電気通信法の試験をするという。1週間で丸暗記。次に、成立したばかりの電気通信事業法の試験をするという。1週間で丸暗記。

そして担わされたプロジェクトが自動翻訳電話の開発。人工知能です。学者を集めて報告書を作る。電子工学やら認知科学やら、最初、何もわからんが、片っ端から読んで読んで聞いて聞いて勉強の連続です。そして、そんなことがその後もずっと続く。

であれば、もっと早くから、社会の大人たちに触れ、自分に必要となることを知り、大学などの場で真剣に学んでいく。その仕組のほうがライフ・ビジネススタイルにも合う。

iUは、200社を超える企業と連携し、学生の数を上回る客員教授を招き、大学の間に全員インターンに出し、全員に起業を経験させます。これは自省を込めた設計です。

柳川教授のプランは、さらにその先を行くものです。どうすれば実装できるでしょう。4年の学費をもらいつつ、10年の猶予を渡し、その間に単位を取れば卒業証書を渡す。それは日本の制度では難しいのかな? iUで導入するなんて勝手なことはできないのかな?

だけどそろそろ、大学としてスキームを準備しなくてもよいのかもしれません。MOOCs等で教授や研究室が単位を任意に認定してやり、ブロックチェーンで管理する。この枠組みに賛同するトップ級のかたがたが委員会を組織し、卒業を認定してやる。「超大学」とでもいうべき仕組み。これならできそうです。

就職・採用だけでなく、大学の仕組みを根本から見直す。新型コロナウィルスが問うているのはそういうことかもしれません。