「ライオン・キング」も恐怖映画だった。

著者作
著者作

「ライオン・キング」、3回目です。

94年のアニメ映画、2000年にニューヨークのブロードウェイで観た舞台、そして今回の超実写映画。

筋書きはアニメをなぞる血統主義の勧善懲悪で、ぼくの趣味ではありません。

音楽もThe Lion Sleeps Tonight(61年 The Tokens)を除き、ぼくの趣味ではありません。

なので、筋でも音でもなく、

ただただ、映像を眺めました。

ただただ、技術を観ました。

恐ろしい映像でした。

フルCGが、現実を超えるリアルさを伴う。

恐怖映画でした。

ぼくにとって3世代目の恐怖映画です。

第1世代は20年前、カメラを使わずコンピュータだけで映画が作られるようになったこと。

そう、「トイ・ストーリー」です。

1997年6月のマックパワーに記録しました。

「『トイ・ストーリー』は恐怖映画である」

http://www.ichiya.org/jpn/column/macpower/08.html

「『トイ・ストーリー』は、映画誕生101年目の奇跡だった。カメラからコンピュータへのシステム変更だ。しかも表現はハリウッド的な感性でみれば完璧。わざと残したCGっぽさの具合もほどよい。」

「これは、産業のシステムや技術だけでなく、表現技法も、映像文法も、ストーリー展開も、アメリカが次世紀の審判となるぞというソフトな宣言なのだ。恐怖映画である。」

こう書きました。

テクノロジーがカメラや照明といった人の所作をひっくり返した、と思いました。

日本はデジタルで敗けた。

完敗。

河瀬直美「萌の朱雀」(1997年)、宮崎駿「千と千尋の神隠し」(2001年)、このアナログで生きるしかない、と思いました。

第2世代は10年前、「クリスマスキャロル」、「AVATAR」、「Toy Story 3」。

3本立て続けに感じた恐怖です。

CGがリアル3Dに進化し、映像表現の制約がなくなってしまった、負けっぱなし。

「『クリスマスキャロル』も恐怖映画だった」

実写以上にリアルな表現であること、表現の制約がなくなったこと。

恐ろしや。

http://ichiyanakamura.blogspot.com/2009/12/blog-post_26.html

「AVATARなる体験」

3D・CGによるVR体験。作品は批判しつつ、技術に戦慄です。

https://ichiyanakamura.blogspot.com/2010/01/avatar.html

「『Toy Story 3』も恐怖映画だった」

ストーリーは定番だけど、3D臭さのない3Dの怖さ。

https://ichiyanakamura.blogspot.com/2010/09/toy-story-3.html

そして今回。

ジョン・ファヴロー監督は既に2016年、これもディズニーのリメイク「ジャングル・ブック」で3D・CGが現実、実写を超える技術を見せていました。

当時ぼくはツイートしています。

「子どものころに見たアニメ版には強い印象があったが、実写を超えるCG版を見ることになるとは、50年生きたかいがあった。にしても少し前まで、どうやって作ってる・撮ってるかが気になっていたが、もう何を見ても『作れるんだ』としか思わない。」

俳優も要らず、ロケも要らず、カーチェイスや爆破も自在、全バーチャルがリアルを超えるリアリティーで作り出される。

AIも組み込まれ自動に生成されていく。

バーチャルの3D・CGが映像を制圧する。

それがデフォルトになる。

ただ、それは第2世代の恐怖。

第3世代の恐怖は、それをもう一度、アナログ+リアルに引き戻したことです。

今回、舞台の風景や動物たちの動きをデータ化し、VR装置を着けたスタッフが実際にカメラを操作し、人の手によるアナログな手法で撮影したそうです。

アフリカで現地調査と写真撮影をしてCGで再現、それをVRに落とし込んだ。

フルCGではあるが、VR内で現実のセットにいるような感覚で映画製作を行った。

撮影クルーが実写映画と同じ感覚でVR空間内を動きカメラの構図などを決定する。

PC上の操作から、再び手足を動かす運動へと回帰したというのです。

ビットとアトムの結合。

バーチャル空間のビットがIoTでリアルなアトム(物理)に引き寄せられる。

コマースではもう馴染んだ光景ですが、映像制作でもその手触り感が求められるようになったんですね。

デジタル、バーチャル、3D・CGを制圧して、アナログ、リアルに新地平を拓く。

日本がアナログ、リアル、2Dでの勝負にこだわる間に、一周回ってそう来たのか。

なんともはや。

気を取り直して、楽しい面も見てみよう。

オッと思ったシーン。

シンバの毛が風に飛ばされ、鳥がくわえ、キリンが食べ、ふんころがしが転がし、アリが運び、マントヒヒがそれと気づく、絵だけで見せる連鎖。

さすがディズニーの描写力。

そして、吹替版、ティモンの声をミキの亜生にやらせたプロデューサーの耳。

あの役が亜生にハマる、と見抜けるプロが日本にもいるってことですな。

まあそれでよしとしましょう。