海賊版対策会議、座長の状況報告

「インターネット上の海賊版対策に関する検討会議」(座長)検討状況報告を公開しました。

https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/kensho_hyoka_kikaku/2019/contents/dai1/gijisidai.html

中間報告は「まとまらなかった」のですが、それに至る検討の状況を座長として整理したものです。検討会議としての整理でも報告でもありません。

60ページを超える第9回会合の議事録が重要です。

いかに濃密な議論がなされ、いかに本件が難題で、いかに賛否双方の意見を忠実に組み上げようとしたかが表されています。

冒頭、「座長メモ」として以下のとおり記録しました。

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 2018年4月の犯罪対策閣僚会議・知的財産戦略本部による緊急対策の決定を受けて、同6月に、知的財産戦略本部検証・評価・企画委員会の下に、「インターネット上の海賊版対策に関する検討会議」が設置され、権利者、インターネットサービス事業者、学識経験者、法律家などの関係者を一堂に集めて、コンテンツの流通の促進、既存の海賊版対策の検証・評価、アクセス遮断の法制度化も含めた総合的対策について、短期間に9回にわたる集中的な議論を行った。

 その結果、著作権教育・意識啓発、海賊版対策に資する出版業界・通信業界における環境整備、海賊版サイトに対する広告出稿の自主的な抑制、フィルタリングの強化等、関係者が民間主導で連携して取り組むべき対策のほか、関係省庁の連携等によるリーチサイト規制の法制化、著作権を侵害する静止画(書籍)ダウンロードの違法化の検討等、様々な側面から直ちに取り掛かることが必要な内容について、共通の認識が得られた。しかし、いわゆるブロッキングに関する法制度整備について、議論をまとめることはできなかった。議論の詳細については、別添を御覧いただきたい。(会議構成員の間では、検討会議の報告としての取りまとめには合意が得られていない。別添は第9回の議論を踏まえて座長及び事務局において修正したものである。)

 今後、権利者、インターネット関係事業者、関係省庁等が連携して、海賊版の撲滅に向けて取り組んでいくことを心より期待する。

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そのうえで、以下の5項目を記しました。

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○正規版流通の環境整備に加えて、海賊版サイトに対して緊急に対応することができるようにするため、著作権教育・意識啓発、海賊版対策に資する出版業界・通信業界における環境整備、海賊版サイトに対する広告出稿の自主的な抑制、フィルタリングの強化等について、関係者が民間主導で連携して直ちに取り掛かり、これを関係省庁が連携して支援する。

○さらに、関係省庁の連携も推進し、リーチサイト規制の法制化や、著作権を侵害する静止画(書籍)のダウンロードの違法化の検討を進め、加えて、様々な側面から必要な制度設計の検討を進める。

○我が国の重要な電子コンテンツである漫画とアニメーションの海賊版サイトの課題を迅速・適切に解決するため、本検討会議で議論された内容について、継続・発展的な議論ができる適切な環境を引き続き整備する。

○以上の措置を進め、その効果を検証すべきである。

○ブロッキングに関する法制度整備については、意見がまとまらなかった。

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5項目のうち、4点目の措置推進・効果検証はぼくが入れた項目です。

これに基づき、対策会議の親会である知財本部検証評価企画委員会に報告を行い、以下のとおり申し添えました。

レポートは対策会議の議論を踏まえ修正した現時点のもので、委員の了解を取ったものではありません。そして、末尾にある60ページの第9回議事録が重要。いかに対策会議で濃密な議論がなされたか、いかに本件が難題であるか、いかに賛否双方の意見を忠実に汲み上げたかが表れています。

ブロッキング以外の対策が重要です。今できる措置を進め、効果を検証すべきと考えます。

これについては合意が得られたと認識します。

具体的には、ブロッキング以外の10項目の対策。これがまとまり、動き始めるのは大きな成果です。

これは同時に4/13の政府緊急対策の状況を脱し、次の段階に進むことを意味します。

長期的に重要なのは、第一項目の「教育」。

ユーザの情報行動がユーザの自由を守る。ユーザのリテラシーが保たれないと、ネットにブロッキングなどの規制が入り、自由が狭まることになりかねません。

 

中期的には、第二項目の「正規版」。

漫画村のように魅力的な正規版ができないものでしょうか。

短期的に最重要なのは民間の「連携」体制。

いま微妙な信頼関係のもとに体制づくりが進められようとしています。

政府にはこの努力を後押しするよう応援をいただきたい。

逆に、強引な動きで民間の連携を壊すようなことがないようお願いします。

座長メモに書いたように、「権利者、インターネット関係事業者、関係省庁等が連携して、海賊版の撲滅に向けて取り組んでいくことを心より期待する」次第であります。

以上です。

海賊版の対策会議は無期限延期、そして親会にも報告したので、この件の検討は一区切りです。

日経xTECH 浅川直輝さんの記事を紹介しておきます。

ありがたい論考です。

会議は破裂しましたが、それを批判的に検証し、今後につなげていただければと存じます。

「なぜ会議は決裂したのか、海賊版対策TFの議論を検証する」

https://tech.nikkeibp.co.jp/atcl/nxt/column/18/00138/103000174/?P=1

日経 xTECH/日経コンピュータ(2018/11/2)

その他の記事;

海賊版対策会議の両座長、まとめ案の修正版を親会に提出

https://tech.nikkeibp.co.jp/atcl/nxt/news/18/03164/

日経 xTECH/日経コンピュータ(2018/10/30)

「ブロッキング法制化」反対派不在の報告会 「中間まとまらない」座長メモも公開

http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1810/30/news101.html

ITmedia(2018/10/30)

海賊版サイト遮断「意見まとまらず」有識者報告

https://www.yomiuri.co.jp/politics/20181030-OYT1T50081.html

読売新聞(2018/10/30)

海賊版対策、意見まとまらず 有識者座長が上部会合で報告

https://www.sanspo.com/geino/news/20181030/sot18103009440004-n1.html

産経新聞(2018/10/30)

海賊版サイト対策、物別れを報告 

有識者座長が上部会合に

https://www.kyoto-np.co.jp/economy/article/20181030000037

京都新聞(2018/10/30)

海賊版サイト対策「ブロッキング意見まとまらず」を報告

https://www.buzzfeed.com/jp/takumiharimaya/illgal-site-20181030

BuzzFeed News(2018/10/30)

「ブロッキングについてはまとまらず」混乱つづいた海賊版対策「座長メモ」の形で報告

https://www.bengo4.com/internet/n_8767/

弁護士ドットコム(2018/10/30)