海賊版対策:ブロッキングの論点整理と新提案

画像
  • 著者撮影

海賊版対策会議@霞が関、第5回。

法的・技術面の専門的な議論は深まる一方、未だ拡散も続けていて、対立も解けず、2時間半に延長したものの、それでも全く時間は足りず、なかなかに緊張する座長の職であります。

Googleの削除対策、広告対策、リーチサイト制度化、静止画ダウンロード違法化、普及啓発、そしてフィルタリング対策について、政府・委員・参考人から詳しい報告がありました。

それぞれ難問ではあるのですが、総合対策を彩る項目としてはかなり出揃ったと考えます。

賛否が分かれるブロッキングについては事務局がこれまでの議論を論点整理しました。

・諸外国の制度

・憲法上の通信の秘密、表現の自由、検閲

・実現するための手法

・手続

・アクセスプロバイダの位置づけ

・要件

・費用負担

などです。

これを煮詰めて総合対策への盛り込み方を練ることになります。

関連して、既にブロッキングが行われている「児童ポルノ」についての報告もありました。3月時点で17サイトがDNSブロッキングの対象となっているとのこと。これは制度化がなされず、緊急避難として実行されているもので、海賊版対策の重要・有力なモデルです。

併せて村瀬弁護士から海賊版の現況について報告がありました。漫画村以外の海賊版が大きくなりつつあること、リーチサイトが強力になってきていることに加え、海外でブロッキング対象サイトの使用が7割方減少している効果について共有されました。

川上委員からはブロッキングが有効であるとした上で、OP53Bの採用やPublic DNSサーバの対応等についての提案がありました。これに関してはISP側からの反論もあり、対立項として議論は続きます。

一方、東大・宍戸さんから「アクセス警告方式」という新提案があり、検討することとなりました。

「ブロッキングに代わる「海賊版対策」の切り札? 東大・宍戸教授「アクセス警告方式」提案」

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180825-00008424-bengocom-soci

フィルタリング・ブロッキングとは異なる第3の対策として、約款に基づいてアクセス警告表示を行うもので、静止画ダウンロード違法化や、実行のための団体設立など課題も伴いますが、同意に基づく措置として制度化せずに導入できる提案。検討の俎上に乗ります。

森委員から「ISPは臨時的かつ緊急的な措置としてのブロッキングを実施すべきではないことを本検討会で決議する」との提案がなされました。4/13政府決定に関するものです。これは以前も各委員の意見をテイクノートし次に進む整理をしたのですが、改めて同様の収め方をしました。

4/13決定に関しぼくも意見はあるけれど、決議はこの会議の権能ではないことや海賊版の動きがなお不穏ということに加え、座長としては最終的に全会一致の報告をまとめたいところ、本件はブロッキング制度化と同様、意見が割れるので、いま割るのはどうかという思いもあります。

今回のもう一つのハイライト。

「サイト遮断で「監視進む」 総務省職員の発言に会議混乱」

https://digital.asahi.com/articles/ASL8S7FXML8SUCVL028.html?jumpUrl=http%253A%252F%252Fdigital.asahi.com%252Fsp%252Farticles%252FASL8S7FXML8SUCVL028.html%253F_requesturl%253Dsp%252Farticles%252FASL8S7FXML8SUCVL028.html%2526amp%253Brm%253D475

政府内にもさまざまな考え、立場があり、その一部が吐露されるのは、本件の難しさを共有する上で有益な面もあります。総合対策を作るには、委員・民間だけでなく政府部内の調整が難しいと考えておりまして、座長の仕事はそこかなぁとも考えているところです。

この総務省の意見表明に関し、時間があればぼくは質問をしたいところでした。

まず「ネットの利用の監視のほうへすすむのか、自由なほうへすすむのか」とする総務省には、では児童ポルノのブロッキングは監視にすすんだと見ているのか、その整理は総務省内でクリアになっているのか。

もう一つは全委員に聞きたいことです。

日本ではことほどさように通信の秘密が憲法問題となり議論が高まっているが、ブロッキングを実行している海外40数カ国では通信の秘密の議論は「ない」とのこと。

これはなぜなのか。

日本「だけが」ブロッキングが通信の秘密との整理を強く求めるのは、法体系の問題か、歴史的経緯か、国家観か、文化的背景か、何によるものなのか。

日本として政策を決めるに当たり、海外とは異なる特殊事情があるのか。

それを整理したいです。

特にこれは通信の秘密の制度を預かる総務省や、グローバルを旨とする技術系のかたがたに、日本の制度が特殊でしかるべき理由を整理いただけると、議論の集約にも役立つと考える次第です。

総務省の意見表明は今更こうしたことを考えさせるトリガーになったかなと思います。

ところでぼくが「全会一致でとりまとめたい」と発言したことに対し、会議後「秘策があるのですね」と何人かに問われました。

ありません。

努力の意思表明です。