海賊版対策は総合パッケージ作りへ

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海賊版対策会議、第4回が開催されました。ブロッキングに関する英独の運用、憲法や著作権法上の論点、技術的論点、そしてフィルタリングなどブロッキング以外の措置などが審議されました。

日経xTECH浅川直輝さんがその模様を報じています。

「海賊版対策タスクフォースの第4回会合、「ブロッキングは有効か」論争はいったん収束」

(出典元:日経 xTECH/日経コンピュータ 2018/07/25)

https://tech.nikkeibp.co.jp/atcl/nxt/news/18/02114/?n_cid=nbpnxt_twcm_it

ここに書かれていないことを中心にメモします。

(なおぼくのメモは残った記憶を頼りとする細かいニュアンスなどが不正確なもので、お叱りを受けることもあるのですが、それでもぼくの立場で発信・共有することに意味があろうと考えて書きます。正しいところは後日公開される議事録でお確かめください。)

まず明治大学・今村哲也さんがイギリスのブロッキングについて説明しました。著作権法に基づく裁判所の命令による仕組です。ブロッキングは効果薄との批判に対し、「多くの利用者にとって専門知識が必要で、迂回はユーザの負担にもなる。少数のアクセスが妨げられるだけでも命令は正当」と判事が断じたとのこと。

続いて早稲田大学・上野達弘さんからドイツの事例報告。著作権法の妨害者責任に基づく措置です。最高裁は、権利者が努力を尽くした場合に限定しつつ、技術的に回避可能であっても、プロッキング命令はあり得ると整理。本年2月にはミュンヘン地裁が初めてブロッキング請求を認容する判断を下したとのことです。

前回の会議では、ブロッキングの効果がない/薄いことと、制度導入の是非について、激しい応酬がありましたが、その点、英独ではそれでもプロッキングありという判断を裁判所が下しているんですね。

上野さんは、日本では侵害幇助者(ここではプロバイダ)への差止請求の位置が明確でなく、認められないという説が強い一方、現行法でも認められるという考えもあり、裁判所が判断すればブロッキングはOKとなり得ると整理しました。踏み込んだ解説です。

一橋大学・山本和彦さんは、ブロッキング請求はプロバイダを被告人とする民事訴訟が基本となると説きます。その際、サイト運営者、ユーザ、オーバーブロッキング主催者の手続保障が論点となるとのことです。

東京大学・宍戸常寿さんは憲法の観点からブロッキングの是非を問い、フィルタリングの実効性の検討が不十分だとしました。目的を「カジュアルユーザーによるアクセスを困難にすること」とすれば効果は見込めるとしても、対象サイトは真に必要な範囲に限定し、その基準も明確にすべきと主張しました。

上野さんが立法上の論点を挙げました。著作権のほか、名誉毀損、プライバシー侵害、覚醒剤取締法、銃刀法などどのような理由でどのようなサイトを対象とするか。悪質なサイトをどこまで限定するか。プロバイダに課される条件は何か。手続きは裁判所の命令か行政命令か。コスト負担をどうするか。法整備に向けた具体的な問いかけです。

ここまではブロッキングの深掘りでしたが、JPNIC前村さんは「教育、フィルタリング、検索抑止、ドメイン停止、DNS応答停止などなどさまざまなアクセス遮断の方法がある」と指摘。そのとおりです。この会議のアウトプットとしては、それら全ての方策を総合的なパッケージとして打ち出したいです。

講談社・野間さんも「文化庁のリーチサイト規制法制化の加速、違法電子出版ダウンロードの違法化を求める」とし、ブロッキング以外の対策の必要性を強調しました。海賊版へアクセスできなくする方法を総合的に講ずるという趣旨ですね。

福井弁護士は、フィルタリングの効果について正しつつ、フィルタリングに限界があるのはブロッキングに限界があるのと同じで、とはいえフィルタリングは青少年に一定の効果があるので、ヒアリング含め議論すべきとしました。

ここでカドカワ川上さんが「対象制限に賛成。私は中村座長から唯一のブロッキング推進派とのレッテルを貼られているが、私は慎重派。中村座長はブロッキングをワンオブゼムだとし、村井座長はブロッキングだけだとダダ漏れだと言うが、私はブロッキングは「最後の手段」と思っている」と発言。慎重な姿勢を示しました。

これに対し、欠席した林いづみ弁護士がペーパーを提出、アクセス制限措置を認めることが必要とし、対象を著作権侵害が明白な海外サイトに特定しつつ裁判所に措置を求める権利を新設するという案を示しました。これは今のところ最も明確で具体的な推進意見だと思います。

ブロッキングに関する技術的手法(OP53B)に関する議論もありましたが、これは浅川さんの記事に譲ります。

宍戸さんが、本件は情報社会における流通と保護のバランスを問うもので、これを解決する場や手続きが求められる、とまとめました。ぼくも本件はIT政策と知財政策のバッティングであり、今後ますます増加する政策領域を解く試金石ととらえています。

ここまでの議論により、現在の対策の評価、海外の制度、法的な論点を共有し、まだまだ掘り下げることはありますが、論点のネタはテーブルの上に揃ったと考えます。総合対策パッケージを作るというのもコンセンサスだと考えます。どのような方向性をもたせられるか、いよいよ知恵出しです。