海賊版サイトブロッキングの政府方針が出ました。

昨日、ネット海賊版対策に関する知財本部・犯罪対策閣僚会議が官邸で開催されました。

首相以下、全閣僚と論議し、サイトブロッキングに関する政府方針が決定されました。

ぼくも出席しました。

方針は以下のとおり。

1.法制度を整備する。次期通常国会を目指しブロッキングの法的根拠となる制度を整備する。リーチサイト対策も進める。

2.それまでの緊急避難としてのブロッキングについて、政府は「違法性が阻却される」との解釈を示す。

3.これを受けてISP+コンテンツら民間の対応を進めるタスクフォースを作る。

ブロッキングについて政府は法的リスクを負い、ゴーサインを出す。

ただし、民間に対しては要請も行政指導もしない。

ISP+コンテンツら民間側で対応を決める。その場を政府が用意する。

同時並行で法制度を整備する。

--これが決定です。いま政府の取り得るギリギリの措置でしょう。

ブロッキングを指示ないし行政指導すると見られていた地点からみれば自制的だと考えます。

http://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/180413/gijisidai.html

ブロッキングの賛否に関してはずいぶん議論が加熱しました。

マンガ家や出版社など権利者が漫画村などのサイトによる急激な事態の悪化に業を煮やす中、政府がブロッキングをISPに指示するとの報道が流れ、法学者や弁護士などが強い反対を表明する事態となりました。

ただ、この議論は、突然に密室で発生した議論ではなく、海賊版サイトへの対策は3年ほど前から知財本部を舞台にオープンに審議されてきました。知財計画2016には既にブロッキングに関する記述もなされています。リーチサイト対策は現在、文化審議会で制度化が審議され、広告対策は経産省を中心に措置が取られていて、ブロッキングが残る課題でした。それがあまり注目されてこなかったのは、関わるぼくの発信力不足という面もあります。

そして昨今の事態の悪化に関して、サーバが置かれているとみられる外国の政府等に官民で交渉してもラチがあかず、民間もDMCAテイクダウンなどの措置を取っても有効ではなく手詰まりな状況でした。これが国内サーバであれば、ブロッキングなどの悠長な措置ではなく、著作権法違反で警察がしょっぴき叩き潰すのですが、日本人が日本語で商売していても海外にあるという事情で放置されている、これに対する止血が求められていたわけです。

ブロッキングに対する反対側の主な主張は、

・手続が不当であり立法が必要。

・児童ポルノと異なり緊急避難には当たらない。

・名誉毀損などブロッキングの拡大濫用の恐れ。

・権利者の対策が不十分。

・やっても無駄。

というものです。

これに対し今回の決定は、政府として立法を行う宣言をし、政府として緊急避難に当たる解釈を示すというもの。この解釈は、司法判断ではないけれど、総務省、法務省、警察庁を含む関係省庁が協議・了解したものであり、少なからず重みを持ちます。また、ブロッキングが行われるとしても、極めて限定的・抑止的であるべきことは関係者のコンセンサスであり、将来に向けては明確に制度で縛ることになりましょう。

権利者の対策が不十分か否かはぼくには判断がつきませんが、逆に、本件の決定を下すのにどれだけ大量の汗をかかなければいけないものなのでしょうか。国内で閉じた事案であれば対策が十分であれ不十分であれ権力がしょっぴくわけで。ただ、ここからブロッキングをISPが行うとなれば、それに要するコストや損失をどうカバーするか、それを権利者側がどう負担するか、はポイントになるでしょう。

本件は、事態を放置する責任と、ブロッキングを実行する責任(憲法問題や法的安定性)とが拮抗して下された決定と考えます。「現実の被害」に対する手当と、「未来への危惧」との調整です。後者の一番の当事者はISPですが、ISPは電気通信事業法上の通信の秘密を守る義務を負いつつ、海賊版サイトでトラフィックを稼ぐ商売をしており、微妙な立場です。

ぼくの役割はコンテンツ・権利者側と通信・ISP側の両サイドの声+ネット上の意見を政府・政権に届け、必要な場を用意することで、それはとりあえず作用したと考えます。

これを受けタスクフォースを早急に設置し、アクションを考えることが民間に投げられたボールです。その主役はISPであり、ISPがどう判断・対応するかです。

なお、本決定に関し、現政権の横暴というコメントを見受けますが、ぼくは民主党政権でも同様のアクションを起こしたと思います。鳩山政権の権利者側に寄った政策を振り返ると、もっとすばやくやったんじゃないかと。

今回の決定で最も大事なのは法制度を整備するという点であり、これは憲法学者はじめ有識者や関係者の意見を糾合して設計してもらわなければなりません。それはまた別の場が必要となります。そしてそれは今回のアクションプランよりもタフな議論になると考えます。

関係者のみなさま、よろしく取り運びください。