著作権制度の改正、論議は煮詰まりました。

 

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  • 内閣府知的財産戦略本部「新たな情報財検討委員会」(第6回)「AI学習用データ作成と柔軟性のある権利制限規定の検討」資料より抜粋

文化審議会の著作権分科会にて、「柔軟な権利制限」の議論がなされました。著作権の権利制限、つまり著作権を緩めて利用しやすくする仕組みを少し柔軟にする工夫です。詳しい内容は省きますが、ほぼネット利用を円滑にすることへの対応であり、必要な法整備です。政府・知財本部が策定した「知財計画」で方向づけられた内容を、審議会で具体的な制度に落とし込む作業です。

 ぼくは著作権は「制度よりビジネス」を標榜してきました。制度改正に何年もかかって、かつ、その効果が小さいのが通常だからです。それより実サービス、実ビジネスで著作物の生産・流通・消費を増やすことのほうが効果的であり実効性が高いと考えてきたからです。

 ただ、今回の制度論議は、久しぶりにぼくも委員として参加してみたところ、想定以上に「大きく厄介な見直し」に向けて勢力が注がれていて、意味のあるものでした。この問題はもう5年以上の時がかけられており、政府・委員はじめ汗をかき続けているかたがたに敬意を表します。ぼくは今回の審議会の方向性に賛成ですし、事務局にもよく整理してもらったと考えます。

 しかしぼくの関心はその後のことにあります。2点あります。

 まず第一に、これが法律として成立するのかどうかです。

 これが利用者、権利者、産業界などステイクホルダーの理解を得られるのか、はもちろん重要ポイントです。法律となるためにはその環境整備が必要です。

 国会・与野党にも本件についてはさまざまな意見があり、慎重派・推進派がなお割れているとか。かつてより著作権制度に対する注目度が高くなっていることも感じます。政府提出の法案が成立するには、政府と国会との間でかなりの調整が必要です。

 また、そもそもこれが政府の成案として、内閣法制局を通って提出されるのかどうか。実はこれが一番気になりました。というのも、5年ほど前に同様の議論が審議会で行われ、いったん結論に達しながら、内閣法制局を通らないというできごとがあったからです。

 今回の議論は、ネット上のコンテンツ流通の利便性を高める方策ですが、これはある程度、これから生まれるサービスや利用法を先取り想定して制度を作る必要がありますが、内閣法制局は、空想ではなく「実態」に基づいた法律を死守しようとするため、バッティングするわけです。

 実態を先取りした著作権制度が作れないため、ネット検索サービスが日本で立ち上がらなかったという見方があります。だからチャレンジするため政府で議論しているのですが、実は壁は政府内にあったのです。

 これらに対し、ぼくらができる、対外的なメッセージや動き方はないのか。これが第一のポイントです。

 今のところ、総選挙を経て体制が改まった国会には何とか近く提出されるとの見通しです。まずはそれを進めてもらいたい。

 もう一点は、知財計画が求めているガイドラインの策定です。

「柔軟性のある権利制限規定に関連して、予見可能性の向上等の観点から、対象とする行為等に関するガイドラインの策定等を含め、法の適切な運用を図るための方策について検討を行う。」(知財計画2016)

 法律にはざっくりしたことしか書かないので、細かいことは裁判で白黒つける、のが著作権制度のやりかたでした。通常の行政法のように、役所が解釈したりコンメンタールを書いたりしなかったんですが、今回、事前に白黒つけやすいようにガイドラインを作ろうというものです。

 これは法案策定後の作業でしょうが、より細かい解釈や考え方を、審議会の委員やステイクホルダー、場合によっては立法府や司法の参加も得て作っていく努力をするのがよいと考えます。これまでの枠を広げる取り組みをすべきタイミングだと考えます。