「インターネットと法規制」、ニコ生での議論。

 10月13日、「インターネットと法規制 ~多様化するウェブサービスに法制度は対応できるのか~」というニコニコ生放送の司会を務めました。ネットは普及したとはいえ、まだ過渡期。法的トラブルも絶えません。ネットと法律の規制の問題を考えるのが趣旨です。

 法律問題は多様です。通信の規制もあれば、著作権もあります。金融取引、eコマース、ネット選挙。遠隔医療やデジタル教育。そんな中で今回は、最近話題となった1)DCMA悪用、2)ビットコイン、3)CASH、4)VALUの4点をテーマに取り上げました。

 出演は川上量生氏(ドワンゴ会長)、ひろゆき氏(4chan管理人)、水野祐氏(弁護士)。要点をレポートします。詳しくはタイムシフト視聴でどうぞ。

 http://live.nicovideo.jp/watch/lv307336514

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1)DMCA悪用

 まずはDMCA(デジタルミレニアム著作権法)というアメリカの法律についての議論です。不正コピーを阻止するため2000年に施行されたもので、Googleなどのプロバイダが著作権の権利者からコンテンツを削除する申請があれば削除すること等を含む仕組み。

 今回、求人サイトのWantedlyがこの制度を使って削除申請しました。Wantedly上場を批判するブログ記事の中にCEOの写真が使われており、その著作権違反を理由に申請がなされたのですが、写真だけでなく、その記事自体がGoogle検索から消え、それをつぶやいたツイートも非表示になった。それは制度の悪用ではないか、という議論です。

 プロバイダは制度に則った申請が来ると、著作権侵害かを判断せず一旦落とす。川上氏はそのルール運用が問題と指摘します。これに対し、ツイートやリンクを載せるのは日本では侵害に当たらないのが定説だったが、EUなどでは当たり得る流れだと水野氏は言います。

 元々は不正のコピーを減らすという目的で導入されたDMCAが、悪くないものも削ってしまう。それに対し「嘘ついてガンガン削除している人に、何らかの罰則は発生するのか?」と問いかけるひろゆき氏に、水野氏は場合によってはあり得ると答えました。

 著作権法はアメリカと日本の制度がかなり違っていて、TPPでアメリカの制度に合わせて非親告罪やフェアユースを導入する話もあったが、トランプ政権でまた状況がガラリと変わりました。しかもサーバーがあちこちにある状況でどこの法律が適用されるかという問題もあり、企業にはそれぞれの国の法律をどう戦術的に使うのかも問われます。

 水野氏がEUが個人情報保護に関して越境データの規制をかけている現状を紹介しました。これを受け川上氏は「ヨーロッパはかしこい。そういうことを戦略的にやっている。」と指摘、個人情報保護法や独禁法でGoogleやFacebookに対抗するという国家戦略論にも話は発展しました。

2)ビットコイン

 ビットコインに代表されるネット上の仮想通貨は、日本円などの法定通貨やSUICAのような電子マネーとは異なって管理する主体がなく、ブロックチェーンと呼ばれる技術で分散管理されているものです。制度的には日本では改正された資金決済法で仮想通貨が「財産的価値」として定義され(水野氏)、仮想通貨取引所は登録が必要(川上氏)となりました。

 そして、資金洗浄・マネーロンダリングの温床になる(水野氏)、ほぼ投機の対象となっている(川上氏)、既に税金的なメリットもない(ひろゆき氏)という厳しい現状認識も示されました。

 しかし、ビットコインにはP2Pで仲介者がおらず低コストで決済ができるメリットがあるのでは、との問いかけに対して川上氏が反論。トランザクションあたりのコストは上がり、非効率だと言います。ブロックチェーンのP2Pは新しい信用の世界を作るのでは、との問いにも「完全な寝言」と否定、ビットコインは取引所が支配するネットワークであるとします。これには水野氏もひろゆき氏も、コア開発者や取引所という権力者がいると同調しました。

 そしてひろゆき氏は、発電コストが世界一安い中国がビットコインを掘って寡占すると説きます。川上氏は、中国は自国が支配するためおめこぼしをしてきたが、そろそろ規制に動くと予測。ひろゆき氏はビットコインがつぶれても他の仮想通貨が現れ、それも中国が力を発揮すると主張します。

 マイニングに紐づかない仮想通貨も現れており、分散システムの次の技術が現れるのではとの指摘には、川上氏は金融業界が規制を逃れて仮想通貨にお金は集まるとする一方、ビットコインは実体経済・市場経済に影響がない点に意味があると言います。

では「投資しますか?」と問うひろゆき氏に川上氏は「するわけないじゃないですか。ビットコイン大嫌い。」と打ち返して本件は終了。

3) CASH

 自分が持っているブランド品などの写真を撮ると、すぐに査定をしてもらい、現金を受け取れるサービスです。利用者は物品を2か月以内に運営元に送るか、15%手数料を上乗せして返金するかを選ぶ仕組みの、質屋のようなサービス。

 6月のリリース当初、16時間で7000件の申込みがあり、3億5000万円のおカネが支払われたことで一旦中止になったが、8月に再開。上限2万円、ブランド品などに限定する等の仕組みとし、15%手数料も廃止しました。

 水野氏は、アイテムをユーザが持っているから法的には質権が設定できず、質屋営業法の適用を受けないこと、また、15%という高額のキャンセル料をマネタイズポイントとして狙っている点で貸金業法にも引っかからないよう設計されたことが透けて見えるサービスだが、後者の点は違法と判断される可能性があったことを示唆します。

 ただ、ひろゆき氏はこれほど知られるようになったことを踏まえると、3億円程度は安いプロモーション費だと指摘。面白い経営者だと評します。グレーを白にするのは難しい、ニコ動もグレーだったころがあった、と。

 「一緒にされたくない。ビジョンが違う。」と川上氏は反論。「CASHは儲かると思ってやったと思うが、ニコニコ動画は儲からないと思っていた。」ではCASHはどんなビジョンを持つものか。「困っている人を助ける」とするひろゆき氏は、CASHやメルカリが合併して「貧者経済圏」を作ると面白いと話を広げます。水野氏も「仮想通貨経済圏や貧者経済圏など、普通の経済圏とは別の選択肢があって、ここでダメでも僕はあっちで生きて行けるとか」という可能性を見出します。3氏とも基本的にこうした新サービスが生まれてくることには肯定的で、話が弾みます。

4)VALU

 資金を自分で集めたいという人が「VA」という自分の価値を発行し、ユーザーの間でビットコインで売買ができる仕組み。8月、YouTuberのヒカルさんらがVAを売り抜け、謝罪・活動停止に至った騒動がまだざわついています。

 冒頭、水野氏がVALU社の顧問弁護士を務めていることを言明したうえで、VAは有価証券に当たらないというVALUの主張を解説しました。株式と比べると、配当を受けたり議決権を持ったりすることがない。クラウドファンディングは特定プロジェクトの資金調達をするが、VALUは人自体のサービスなので期限がない。ただ、売買型のクラウドファンディングと異なり「寄付型」の場合は、人におカネを渡す行為という点で似ている、とのことです。

 ヒカルさんとVALUは価格操作があったかどうかで対立がある模様なのですが、これに対しひろゆき氏は、そもそもVAを第三者に売れるサービス設計が問題と批判。川上氏は、優待を本人が発表できて売買できるから、インサイダー取引を誘発するサービスであると指摘しました。

 しかし、こうした個人の価値を資金化する仕組み自体については、ひろゆき氏は「日本の法律でやらなければ全然問題ない。サービスとして面白い。」と評価。さらに川上氏は「ヒカルが非難されるのが分からない。非難されちゃいけない。」と踏み込みます。ひろゆき氏「こういう仕組みのサービスと分かってて、VALUを買っているんだから、損したと言ってる奴がおかしいだろう。」

 両氏は、物議を醸し出すサービスが出ること自体は悪い事ではない。もっと堂々とやって欲しい。グレーになったから謝ります、となるなら、最初から日本以外の国で立ち上げて、日本に向けたサービスの方がよいということになる、という問題提起に至りました。

 VALUの関係者が出演したということでひろゆき氏・川上氏から高く評価された水野氏「こういう面白いサービスというのが出てくる事自体を楽しみにしていて、ちゃんとビジョンがあるのなら、法的にも支援したい。」「規制やグレーゾーンは社会の課題を発見して解決するチャンスであり、そのときの社会の縮図が出やすい場所なので、それを積極的な目線で見つめて、乗り越えていきたい。」

 川上氏「社会が成熟していくと、しがらみで外せない規制というのが出てくる。新しいテクノロジーが媒介となって、ブレークスルーが起きることは、社会的にも良い話だ。」

 という締めくくりで番組は終了。またいつかこんなテーマでやりましょう。