デジタル特区CiP「創造力とデジタル」

東京港区のベイエリア、竹芝地区にデジタル・コンテンツの街を創る構想、CiP(Contents Innovation Program)。

東京都の土地を活用する東急不動産・鹿島建設の事業で、慶應義塾大学が企画運営に参加しています。

推進母体となる一般社団法人「CiP協議会」を設立し、研究開発、人材育成、起業支援、ビジネスマッチングを推進、東京オリンピック・パラリンピック直前の2019年度に街開きする計画です。

でも、まだ「ようわからん」という声も届くので、協議会発足に当たってぼくが書いた宣言を1)創造力とデジタル、2)デジタル・コンテンツ、3)4機能のハブ、4)研究開発と人材育成、5)ビジネス拠点と政府連携の 5回に分けて掲載します。

1) 創造力とデジタル

富国強兵に踏み出して以降100年余、敗戦で強兵の看板を下ろした日本は、産業の発展という富国政策に邁進した。それはアジアの奇跡と称される成功を収め、1990年代初頭には、日本の国際競争力は世界一とされていた。

しかし、その10年後には20位に急落、その後15年間、トンネルを抜け出していない。富国の看板も色あせた。だが、富国強兵後の日本もまた面目を保っている。

文化大国としての輝きである。

日本の流行文化=ポップカルチャーは世界中で高い人気を誇り、デジタルメディアを通じて海外に発信するコンテンツは日本の創造力を証明している。それは伝統文化や古典芸能とも地続きのものであり、戦後70年の平和主義や、311の震災時に日本社会が示した礼儀・秩序ともあいまって、トータルとして国際政治論にいう「ソフトパワー」を発揮している。

無論、産業界が培ってきた技術力、ものづくり力が失せたわけではなく、それらハード面の力と、コンテンツなどのソフト面の力との総合力が今の日本の資源である。

「最もクリエイティブな国はどこか」。Adobe社の先進主要国向けアンケートでは、英9%、仏11%、独12%、米26%を抑え、日本が36%と図抜けた首位を示した。同じく、「最もクリエイティブな都市は」という調査に対しては、ベルリン7%、ロンドン8%、パリ15%、NYC21%を抑え、東京が30%であった。世界は日本の、東京の創造力を認めている。

だが、同じ調査で、「自分の国はクリエイティブか」という問いに対し、日本が圧倒的な最下位を示した。われわれは、自らの創造性を認識しておらず、その力を発揮できていないのではないか。

50年前の東京オリンピックで、日本は復興と成長の姿を見せた。次に来るオリンピック・パラリンピックで、東京は、日本は、どのような姿を表そうとするのか。

デジタルは次の姿を示す柱となる。人類に残されたフロンティア領域としては、宇宙・海洋、バイオ、ナノ、そしてバーチャル空間が挙げられる。中でもバーチャルを構成するデジタル分野、すなわちIT=情報技術とコンテンツ=表現は、今後も成長・発展余地が大きく、かつ、日本はその技術・表現の面では力を証明済みである。

政府は過去10年来、コンテンツ立国及びクールジャパンを標榜し、コンテンツ産業の成長に期待してきた。マンガ、アニメ、ゲームなど海外でのポップカルチャー人気は定着した。だが、産業としては十分な成果を上げていない。この数年、コンテンツ市場は停滞しており、産業に締める海外売上比率はアメリカに比べ大きく劣る。

デジタル・コンテンツ分野に資源を集中投下し、海外展開に力を入れるべきである。

CiP(Contents Innovation Program)は、デジタルとコンテンツの産業集積地を東京・港区竹芝地区に構築する構想である。Cコンテンツ、iイノベーション、Pプログラム。コンテンツで社会を革新する。言い換えると、Cクリエイティブ、iイノベーティブ、Pポップ。内外から資源を集め、集中投下し、新しい産業文化を生産・発信する場となる。

だからといって、目指すはハリウッドやシリコンバレーではない。ハリウッドやシリコンバレーの強みは、超一流のアーティスト、ギーク、そしてビジネスエリートの集積だ。これに対し、日本の強みは、高度な技術力・表現力に加え、正確で勤勉な大勢の職人の存在、さらに、コミケ、ニコ動、カラオケ、コスプレ、ゆるキャラ、B級グルメなど、みんなが参加して生産し、消費される猥雑で混沌とした産業文化力である。これを活かし、増殖炉となる。