TPP合意を評価しつつ、気になること。

TPPには強い反対がありました。でもぼくは合意内容を評価します。

合意した31分野のルールによれば、通信、金融、小売や公共事業への外資規制が緩和されるなど、日本経済にとって有益で重要な事項が少なくありません。

交易で生きるしかない日本にとって、海外市場の透明化を通じた拡大は攻めるべき戦略であり、政府はよく折衝したと言っていいでしょう。

9018の貿易品目のうち95%の輸入関税をなくすこととしました。マスメディアや政治の論調では、弱体化する農業の保護問題ばかりが目につきました。海外からいい食料が安く入るという利用側の効用の意義はほとんど語られないままでした。

TPPの意義は、GDPの観点、提供者の観点だけでなく、消費者余剰の拡大の観点からも分析すべきです。その点でもこの決着に意義を見出せます。

ぼくが懸念したのは、国益としての優先度です。農業社会、工業社会を経て情報社会に突入した中にあって、日本は今後100年、知財で食っていくしかない。

その入口の国際ルール化に当たって、よもや農業(の提供者)を保護するために、知財(の利用者)を売ることだけはしてくれるな、ということでした。

無論、政府もわかっています。今回の合意は、農業や知財の問題はあるものの、経済産業の多くの分野で利益が得られるよう努力したと見受けます。

まず通信。許認可基準と審査期間の透明化、外資規制の緩和が採られます。

電子商取引に関しても、デジタルコンテンツに関税を課さないこと、ネット上での物販等に対し国内サーバを設置する規制を廃止することとしています。

金融では外資規制の緩和、外資系銀行のATM設置の容易化。

コンビニなど小売出店規制の撤廃、通関手続きの迅速化、政府調達・公共事業の市場開放なども大きい。

域内で製品の一定割合を作れば関税が撤廃される原産地規則も導入されます。

このあたり、日本が今後も成長する上で大切な産業領域をカバーする措置だと考えます。

知財分野では、著作権の非親告罪化や保護期間延長が懸念事項です。

保護期間延長は業界の一部に求める声があるものの、コンテンツの輸入超過国である日本からみて、そろばん上はアメリカを利するものです。

非親告罪化はそれ以上にクリティカルな問題で、業界でも賛同する人をみかけません。

いずれも権利者=提供側の保護強化です。消費者余剰を減少させる内容です。

ただ、この分野の合意も不利に働くことばかりではありません。

ネット上の著作権侵害に対する防止措置の導入、アクセスコントロールを回避する装置の製造や輸入の禁止、海賊版取締の強化、実演家の報酬請求権の付与。これら措置は、日本の業界にとっても大きくプラスに作用します。

メリットを発揮できるよう、アメリカはじめ参加国が条約化の手続きを進めるよう期待すると同時に、デメリットを抑えるべく、国内の著作権制度などをしかと整備したい。

これからステージは国内制度の手当に移ります。今週、政府・知財本部の委員会でも議論が始まりました。ぬかりなく進めましょう。