28歳の女性監督ふたり

河瀬直美監督「萌の朱雀」と、レア・フェネール監督「愛について、ある土曜日の面会室」。

「萌の朱雀」は1997年カンヌ映画祭キャメラドール受賞作。史上最年少の新人賞です。「愛について」は2009年作品、日本公開は2012年末。

いずれも、当時28歳だった両監督の本格デビュー作です。何度も見た2本なのですが、改めて見比べてみました。静謐で老練な完成品でありながら、映像の明日を拓こうとする、その熱量にやけどします。

マニアックな2作ですが、内容の詳細は省きます。両作品の相違点と共通点のみ抽出します。

「萌の朱雀」は、吉野の奥、青い山に囲まれ、しんとした村。人は柔和に微笑みつつ、口は重い。だから、ピアノの和音が澄み渡ります。「愛について」は騒音の波。罵声、絶叫、暴力。

でも、いずれも、ナレーションも説明もなく、対話だけの劇です。ムダなセリフは全くありません。だからといって、映像で分からせようとすることもありません。逆に、見せず、ほのめかし、解釈を観客に委ねます。品があります。

前者は一家がゆるゆると離散に追い込まれる一つの物語。胸をむしられる、哀しくて愛くるしい別れです。一方、後者は3つの無関係な物語が刑務所を舞台にだんだんと交錯していきます。

ただ、いずれも、それらを紡ぐ編集がこのうえなく巧みです。時間差と空間差の心憎い組み合わせにうならされます。「萌の朱雀」の編集は掛須秀一名人であります。

そしてキャスティング。前者はしろうとさんが中心。逆に後者はプロフェッショナルな役者で固めています。とはいえ、端正に整ったスター顔はいません。みな味とクセのある、北アフリカの、東欧の、ドイツの、そしてフランスの顔立ちで、抜群の演技を見せます。

さすがにフランスは役者が厚い。かつて大沢たかおさんに、「日本映画の弱点は役者の層の薄さです」と教えられたことがあります。最近、強く感じます。

最大の共通点は、冒頭のとおり、いずれも、当時28歳だった女性監督の本格デビュー作ということです。河瀬さんはカンヌ以降、世界のカワセへと育ちました。フェネール監督にも大きく羽ばたいていただきたい。

ところで今、20代って監督の可能性はあるんですか。

昔はそうでしたよね。

ジョン・フォード、レオス・カラックス22歳、小津安二郎、川島雄三、コッポラ24歳、チャップリン、トリュフォー、ルイ・マル、大島渚、スピルバーグ25歳、ヒッチコック、オーソン・ウェルズ26歳、ゴダール、ルイス・ブニュエル28歳。監督デビューは若かった。

その後、特に日本では、そう若くして監督にしてはもらえなくなりましたよね。

今はどうです?昔のように、映画会社の門を叩いて、弟子入りして、修行つんで修行つんで昇進していく必要はなくなっていて、小学生でもカメラとPCで作れちゃう。

だとすれば、10代・20代にチャンスは広がっているのかしら?それとも、映像業界が厳しくなっていて、門戸は狭くなっているのかな?

次のカワセ、次のフェネールはどうすれば生まれてくるのかな?