名作、「逢沢りく」

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10歳以上年下の旧友、「きょうの猫村さん」の作者 ほしよりこさんと、祇園で話し込みました。

デビュー作の猫村さんも「ポーク」も、訳あって原画はぼくのところにあったのですが、それが世に出て数百万部の人気を誇る大作家になられるとは。実に爽快。

新作、初の長編マンガ「逢沢りく」上下巻をいただきました。

画家としての手腕を示す鬼気迫る表紙。ほしさんは、マンガでもなく絵本でもなく小説でもなく、その全てである「ほしよりこ」というジャンルを作ったのです。

逢沢りくは、実質10日で一気に描き上げたといいます。鉛筆1本で、削りながら削りながら描き上げた。

書き始めて3日も経つと、キャラの人格が定まって、勝手に生きていく。それを作者として自由にさせじと追い詰める。追い詰めると、また生きる。それで物語ができる。といいます。この感覚は、ぼくには空想もできない次元のものです。

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ほしさんはプロットを立てず、浮かんだ構想をそのまま絵・文字同時に描き始めるそうです。「構想をそのまま」。非論理。ほとばしる感性。その制作法って言語化が難しくて、他人に教えられないですよね。

長期展望を構成したりせずにガンガン描ける秘訣は?と聞くと、「欲求」とのこと。それは、日テレのT部長、土屋敏男さんのいう「個の狂気」に近いですね。

以前、浦沢直樹さんに授業にお越しいただいたとき、最初に大きなムードを着想して、「頭の中に溜まる”おもしろ水”を運ぶ」話をしてもらいました。ほしさんの構想もそれに近そうです。

その授業の模様はこちらに。

「浦沢直樹さんの授業(後編)「おもしろ水」」

http://ichiyanakamura.blogspot.kr/2013/09/blog-post_5.html

北野武さんがラストシーンの絵がまず浮かんで取り始めたというキッズ・リターンのエピソードも思い出します。

ほしさんは京都国際マンガミュージアムで全原画展を開いていた故・土田世紀さんの大ファンだったといいます。土田さんは生前、猫村さんの大ファンだったそうです。作風は真逆ですから、生前、二人をつなぐ機会はなかったそうですが、通じていたんですね。

あ、肝心なこと。

「逢沢りく」、スリリングで、温かくて、おもろくて、深い。

老若男女の機微を繊細に切り詰めた会話で織りなす。

名作です。

母、父、浮気相手との乾いたコミュニケーションの中で育った特殊な少女が、関西の大叔母、大叔父、叔母、従兄弟、子ども、同級生、小鳥とのコミュニケーションの中でほんのり殻がむける物語。

でも、文字では解説不能です。

読んでね。