タコつぼとオープン

「IP2.0」と称する研究会の第一回シンポが開催され、カドカワドワンゴの角川歴彦さんと川上量生さん、知財本部初代事務局長の荒井寿光さんによるパネルの司会をぼくが務めました。IP=知財の問題が新しい曲面に入ったことを議論するプロジェクトです。

海外のサーバに国内ルールは適用されず、著作権や税制などで日本企業が不公平な扱いを受ける。コンプガチャ問題を契機に日本のゲーム会社は自主規制を敷いたけど、グーグルやアップなど国際プラットフォームは従わないので、国内ゲームメーカーが海外に抜け出す。国内問題に固執するタコつぼニッポンはどうすればいいか。

フランスやイタリアはグーグルに罰金や税金を課したりするし、中国は外国企業の活動に制限を加えたりします。域内ブロック戦術を堂々と講じてきます。タコつぼ強靭化です。ブロック経済は過去に戦争を誘ったかどで政治経済的に分が悪かったのですが、デジタルでは肯定論も現れています。さほどにグローバル化がすさまじい。

EUや中国がタコつぼブロックを作るなら、日本はどうする。タコつぼろうにも日本だけでは食えなくなっています。だからといってアメリカを頼ろうにも、攻めているグーグルやアップルやアマゾンはアメリカです。

これに対し、各国ルールを抑えて、よりオープンでマルチな国際ルールにシフトする手もあります。通商ではWTO、知財ではWIPO、最近ではTPP。TPPでの知財は「難航分野」に位置づけられ、つまり、どないもならんゆうことですが、仮にうまいこと行くとすればですね、ワン・ルールで世界市場がフラットになるんですから、メリットがないわけではない。

近代国家ごとのタコつぼ規制やルールか、マルチな国際社会がいいのか。ウィルソンが国際連盟の結成に向けて平和原則のええかっこしいをしたのは1918年ですから、これまた100年の課題であります。それがここにきて問い直されているのは、これまたデジタルの力ですね。

揺るぎないと思われていた国家というパワーがグラグラしています。国際的な企業プラットフォームが時には国家の権力を超える国際パワーを発揮します。同様にTPPでは、国を超えたメタレベルのグローバルな意思決定が求められています。

IP2.0では議論が深められませんでしたが、もう1つの、より重要なパワーシフトは「ユーザ」でしょう。ネットによって連結した民衆が国家を上回るパワーを発揮する。アラブの春などで、ぼくらは政変さえも目の当たりにしてきました。

国と民衆と国際パワーとの間の決闘は、大小かたちを変えて現れる。どう進むのか。それが次世代の知財=IP2.0の最重要テーマだと考えます。