「第五の権力」

エリック・シュミット/ジャレッド・コーエン「第五の権力」を読みました。

五番目の権力たるネットがもたらす国家、革命、戦争の未来を、夢物語ではなく警鐘を鳴らしつつ展望します。いま求められる論考です。先週紹介したニコ・メレ「ビッグの終焉」と合わせ読むのがよい書物です。

10年以内に仮想人口は地上の人口を超え、市民は仮想空間の自分の情報をコントロールできなくなり、それが現実世界に影響を及ぼす。民主主義政権も独裁政権も治安維持、違法取引阻止等のため、技術やその利用に制約をかけ監視を強化する。政府の規制により、インターネットは国ごとの網の寄せ集めとなり、バルカン化する。

そう説きます。オンラインのIDがオフラインのIDより重要になるのではないかとぼくは思います。そして国家の監視は、それが有効か否かを問わず、強まることでしょう。国による対応の差は混乱を引き起こすでしょう。中国型、トルコ型、ドイツ型、既にそのようなまだら模様はみられます。Googleらグローバル企業と各国政府との折り合いがつかなければ加速するでしょう。それをGoogleのシュミット氏が見据えているのはどう考えればよいのか。

ビンラディン氏は5年パキスタンに潜伏し、ネットも電話も使わなかったが、隠れ家が特定された理由は、都会の大邸宅なのに通信回線が敷かれていなかったことだったといいます。オフラインももはや安全ではありません。

ネットで革命は増えるのか。ガス抜きが増えるのか。ドローンと3Dプリンタはテロを増やすのか。マイノリティへの電子的隔離政策は増えるのか。ロボットが人間の兵士にとって代わるのか。本書はこうも問いかけます。

ぼくらのグループはスタンフォード大学と共同で「IT政策研究会」を開始し、未来展望からみた政策を論議します。このテキストが提示する論点も下敷きにして、どうすべきかを考えたい。

過去20年のIT政策はほぼ整理がつきました。情報スーパーハイウェイ(米)やマルチメディア(日)に代表されるビジョンの共有のもとで進められたデジタル化、競争促進等かつての主要政策は成果を上げ、現在、大きなアジェンダは見あたりません。

一方、セキュリティ、知財保護、教育・医療等ITの利用面を中心に行政需要が高まっているほか、サイバーテロ、機密漏洩、通貨問題など国際的な課題も発生し、新たな対応が必要となっています。

マルチスクリーン、クラウドネットワーク、ソーシャルサービスが定着し、ビッグデータ、ウェアラブル、M2Mなどの新展開も見られる中、今後の政策アジェンダを整理し、提示する計画です。

「第五の権力」にしろ「ビッグの終焉」にしろ、スマホ/クラウド/ソーシャルが定着した影響を総括し、ウェアラブル/M2M/ユビキタスへの変革を展望する時期だという現れです。スタンフォード大学との共同研究を通じて深堀りしたいと思います。