「ビッグの終焉」

ニコ・メレ「ビッグの終焉」を読みました。

個人がネットで接続することで伝統的な組織や権力など「大きいもの」が崩壊するという警世書。特に目新しい視点はないが、ネットが引き起こす変化を総覧する好テキスト。マスメディア、政党、ハリウッド、政府、軍隊、大学、大企業。これら「大きいもの」がネットで連結した個人に覆される数々の事例。全てのセクターで、これが未来図ではなく現実になった、ということでしょう。

バネバー・ブッシュ、エンゲルバート、テッド・ネルソン、ティム・オライリー、ジョン・ペリー・バーロウ、エリック・レイモンド、シェリー・タークル、サルマン・カーン・・デジタルの先人の系譜を学び直すカタログ。

(プログラミング言語LOGO、ARPANET、96年通信法、OLPC、OCW、ファブラボ・・(ぼくがMITなどで関わった仕事の影響を再チェックするのにも役立つメニュー集でした。)

小さなアーティストが情報を直接発信する一方、YouTubeなど「さらに大きなもの」が産み落とされるパラドクスを提示します。しかし、それは単なるパワーシフトではないのか?このように本書は、学生諸君にどう考えるかを問いかけるテキストとして使うとよさそうです。

"「さらに大きな」プラットフォームが「小さなもの」というロングテールに力を授けて「大きなもの」の終焉をもたらす。"

"大手映画会社が6つあるのと、8億人の自称監督がいるYouTubeが1つあるのと、どちらがいいのだろう。"

"アラブの春に関する論評は、テクノロジーの役割を過大評価するサイバーユートピアと、独裁者らが反体制派を弾圧するために使ったテクノロジーを誇張するものとに二分される。"

大学は必要か。"1000人の学生を週二回、講義室に詰め込んで、終身在職権のある教授が体系化した凝縮された知識を受け取らせる従来のやり方は、意味を失っている。"

"世界屈指の規模と富を誇る会社(MS)が19歳の少年とボランティが作ったフリー商品(Firefox)に市場の支配権を奪われた。"

こうした技術の功罪、そしてパワーシフトによる産業の未来、学生諸君、どのように考えますか?

3つの提言が示されます。個人の力を活かす機構、有能なリーダーの選択、プラットフォームのコントロール。3つめのfacebook、Google、twitterなどプラットフォームをどう管理するかはIT最大の政策課題ですが、方法論は描かれていません。学生諸君、どう考えます?

"アノニマスは新しい社会機構の幕開けとなる/大規模なパワーシフトの一端"だと説きます。リーダーも階層も拠点もない、プロセスも文脈も仲間もいない。4chanというコミュニティから生まれた匿名集団のことを考えると、「2ちゃんねる」の先進性が浮かび上がります。

「大きいもの」を連結した個人が破った先例は、2001年TIME誌のパーソン・オブ・ザ・イヤー、ネット投票で2ちゃんねるの連中が田代まさし票で1位を取った事件。これを逃してはパワーシフトは語れませんね。