「戦略シフト」

石倉洋子 前KMD教授の「戦略シフト」。オープンシステムによるORからANDへの転換がこれからの企業戦略と説きます。5年前の書ですが、今もそのテーマは褪せてはいません。

利益追求と社会責任、グローバルとローカル、メガヒットとロングテール、マスと個など、二律背反でORの関係にあったものは、共存可能でANDとなる。そしてICTが共存可能性を広げる。と説きます。ICTの力を重視しているのがポイントです。そして日本の経営者に欠けるのは、この視点であります。

日本は80年代、品質とコストという二律背反をANDにしたことで世界をリードしました。歴史的にも日本は多様な文化を受け入れる二面性がある。と説きます。力を活かせる、と。日本の強みとして、ものづくり力が健在であることと、ホスピタリティやきめ細かい対応などのソフト資産とを挙げます。そして多様性を受容する力に優れており、ANDによる共存を尊ぶ点を指摘します。いずれも同意します。

オープンシステムの例として、MITが開発に携わったレゴ・マインドストームの例が登場します。ぼくは当時そのチームと仕事していたのですが、そのころは不覚ながら強く認識はしていませんでした。一方、それに加えて、堀場製作所や日本電産の買収活動を恊働手段として紹介されているのが新鮮でした。

オープンとクローズをバランスさせる知財戦略が企業にとって重要で、そのカギは「ロジック」と説きます。日本の金融や百貨店は横並びでロジック不明と斬っています。また、ロジックを活かせなかった例として、iモードを作りながら世界市場を逃がしたNTTドコモと、デジタル配信が見えていながら自社ソフト防衛にこだわったソニーを挙げています。うむ、くやしいです。

オープンなシリコンバレーに対し、ボストン近郊ルート128が自前主義でクローズドという比較。さらにエンジニアがVCとして投資する前者に対し後者は投資銀行主体。後者は地域活動への関心も低い、と分析しています。ぼくはボストン(MIT)とスタンフォード(シリコンバレー)の双方に関わったので、そのあたりの空気感を肌で感じていました。

すると石倉さんはクラスターとしての京都に注目します。技術と文化の存在、市場の小ささ、反骨精神、大学との連携、自由・・そうそう、そうでんねん。スタンフォード日本センターが京都に本拠を置いたのも、クラスターとしての可能性を読み解いたから。

ふむ、石倉先生と京都論を仕掛けたくなってきた。というか、ぼくの授業はこの本を教科書にして輪読すればええんちゃうか。あかんのかな、同僚の本でそういうことしたら。--- ANDとオープンということでどやろ。