「マル研」が示すスマートテレビ像

「マルチスクリーン型放送研究会」、通称マル研。在阪のテレビ局が中心となったコンソーシアムで、スマートテレビの実証実験を試みています。ぼくは顧問を務めています。地デジの電波に通信技術であるIP(インターネットプロトコル)を乗せて、テレビ画面やタブレット、スマホなどマルチの画面を同時に管理する日本型の放送・通信融合モデル、日本型のスマートテレビモデルを大阪発で作ろうというものです。

2013年、デジタルサイネージジャパン(DSJ)と併催した放送・通信融合展IMCでは、IPDCでテレビ画面とスマホの両方を操作するアプリが提示されていました。以前は、テレビ画面からタブレットに情報を連動する方法がクローズアップされていましたが、今回はスマホでの操作が焦点となっていました。スマホが生活に定着してきたということも背景にあるのでしょう。

スマホで番組自体を保存したり、共感=イイね!ボタンでソーシャル視聴したり。見ているテレビ番組のCMがスマホに勝手にどんどん溜まっていったり。スマホに蓄積されたCMからゲームやクーポンに飛んだり。

CMを溜めたり見たりするインセンティブが仕込まれているわけです。テレビを見ると自然にポイントが貯まる。見てたらトクをする。さすが、大阪的なしかけでんな。

スマホがリモコンになるアプリも提示されていました。リモコンを立ち上げると同時にマル研アプリも立ち上がるというもの。ユーザをアプリにどう誘導するか、がスマホ関係者の悩みの種ですが、リモコンなら身近。そこからマル研に引き寄せるのですね。

こうしてスマートテレビの実像がほんのり見えてきました。同時に、DSJやIMCの会場では、超高精細4Kテレビの展示が目立ちました。総務省が4Kテレビ、そしてさらに高精細の8Kに力を入れていることもあり、双方に期待が高まるとともに、同時並行であることへの混乱もあります。

80年代のニューメディアは、ハイビジョンによる高精細化とCATV・衛星の多チャンネル化がテーマでした。90年代のマルチメディアは、PCとケータイ、インターネットと地デジによるデジタル化がテーマでした。

その次の動きとして、マルチスクリーンとクラウドネットワークとソーシャルメディアがやって来ました。デジタルサイネージも、スマートテレビも、その一味です。特に日本のデジタルサイネージは電子看板から参加型のネットワークメディアに進化していて、タブレット向け情報配信やスマートテレビとオーバーラップ しつつあります。ようやく、新しいステージが見えました。

しかし、そこに4K・8Kが登場したのです。日本は世界に先駆けてその放送が始まります。マルチスクリーン、が見えたところで、もう次のステージが始まるのでしょうか。

DSJ会場にて、総務省の南俊行官房審議官にぶつけてみたところ、「4K8Kとスマートテレビは、バラバラではなく一体として政策対応する」とのこと。スマートテレビによるビジネスモデル作りと、4K8Kのマーケット開拓を両にらみで考える。舵取りは難しいと思いますが、放送は通信と違って政策対応が市場を左右するので、しかと頼みます。

「4K8Kの市場は放送よりサイネージのような業務用が先かもしれないね」。

そうだと思います。80年代、放送メディアとして期待されていたハイビジョンも、当初は博物館や美術館などのスタンドアロン利用で広がっていきました。当時は放送=郵政省、施設=通産省の戦争があったのですが、今はそんなことはないので、うまいことやっていただきたいものです。