デジタル教科書、1人1年1万円

2010年、デジタル教科書教材協議会(DiTT)を設立した当時、「2015年には一人一台の情報端末とデジタル教科書」を標榜するぼくたちには、絵空事という批判がありました。その後政府が決定した目標も、2020年。5年前倒しを叫ぶぼくたちには、ムチャだというお叱りがありました。

デジタル教科書を正規教科書にすべく法改正せよという提言を発したときには、身が危ないぞという声も聞こえました。重い発言力をもつかたが「デジタル教育は日本を滅ぼす」という本を書いたり、その後文科大臣になられるかたが「デジタル教科書はいらない」という書を出されたりしました。

それがこの1年で、転換しました。

大阪市橋下市長が2015年度に域内の小中学校で一人一台を実現すると宣言。次いで東京都荒川区の西川区長が2015年内に実施する、と若干の前倒し。さらに佐賀県武雄市の樋渡市長が2014年度の実施を宣言しました。

首長が宣言するというのは、予算措置のめどがつき、地方議会が合意することを意味します。とても大きなことです。しかも、東京・ 大阪と地方都市とが揃いましたので、全国の都市が「ウチはできない」とは言えなくなりました。弾みがつくことを期待します。

政府では、「知財計画2012」で制度改正を「検討する」と明記されたことが嚆矢となり、IT戦略本部、産業競争力会議などでも一人一台が論議されました。「知財計画2013」では、検討のうえ「必要な措置を講ずる」、つまり法改正を含む実効策に移すという踏み込んだ表現がなされました。

与党も議員連盟が「教育のICT化に関する決議」として、一人一台タブレットPCの導入等5項目を提言しましたが、この決議作成にはぼくらも協力しました。ゲリラが正規軍になった模様です。

ぼくらとしては、「デジタル教科書法案概要」を準備したり、先導100地域・100教員を募ったりして、運動を強化しているところです。

ただ、最大の課題が横たわっています。コストです。教育の情報化にはおカネがかかる。それがいくらで、誰がどう負担するのか。そこはまだこれからなのです。

これまでも教育情報化にはさまざまな批判や不安が寄せられてきました。学力向上の効果不明、デジタルは紙のよさに勝てない、わかりやすさは思考力と無関係、画一的になる、読まなくなる、目が悪くなる、先生が使えない、教育を産業にすべきでない、といったものです。

こうした点については、議論を繰り返し、理解も広がってきたと考えています。むしろこのような議論に止まっているのは日本だけで、海外は既に、いつまでにどうする、という実践論に移っています。

さて、そこで近ごろ日本でも、「要するに、いくら?」という問いが増えてきました。一人一台を想定すると、一人いくらなの?という、ごく基本ながら、企業の思惑もあり、なかなか議論のテーブルに乗らなかった話です。

与党議連の席上でも「メーカは7万円というが、あり得ない」「タイは80ドルだぞ」「せいぜい1万円じゃないか」という、日本メーカが聞くと卒倒しそうな議論がたたかわされるようになりました。

そこで出された提案が「1人1年1万円」構想。どうでしょう。wifiタブレット+アプリ+サポートのセットを年1万円でレンタルないしリースする。1台1万円で売り切るのと違って、3年レンタルとか5年リースとかなら設計できるのでは。中古品を融通するのだって考えられますよね。

それで調達できるなら、ウチも一人一台を整備できるんだが、というある市長の申し出があったのです。このサービスモデルがいくつかあれば、いくつもの自治体が乗ってきて、地方の予算措置が進み、面的な整備が広がるのではないか。

そこでDiTTでは、自治体向け「1人1年1万円」サービスメニューを募っています。既に通信会社等から複数の提案があり、自治体に紹介しています。さらなる魅力的な提案を待っているところです。こうした取組で普及が加速することを期待しています。