ウェアラブルに慣れるのは、まだこれから

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これは十数年前の写真です。ぼくがMIT メディアラボにいたころのものです。いま話題のグーグルグラスではありません。当時、24時間ウェアラブル・コンピュータを着用している研究員が何人もいました。

だけど、人が慣れるのには時間がかかります。この研究員も、ネットでアクセスされると肩に装着した超小型サーバが温まってくるのが一番の快感というヘンな人だったのです。いくら奇人集団メディアラボといえど、ヘンなひと扱いだったのです。全ての人がそうなるには時間がかかります。

ただ、ここに来てようやくグーグルグラスが注目されるのをみると、えっ、まだだったの?という感じ。確かに、まだですよね。ここにぼくが99年4月に書いた文章があります。ニューメディア誌に連載していたコラム「ウェアラブルをブームにする気?」の巻から抜粋します。

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ウェアラブルというのは文字どおり、身につけることができるということで、服、帽子、靴、メガネ、アクセサリ、といったものをコンピュータにしましょうという動きです。ずいぶん小型になったモバイルコンピュータをさらに分解して、ディスプレイや入力装置を衣服や肉体にくっつけてしまうという感じですね。

これは私のいるMITメディアラボあたりが中心になって、2年ほど前からにぎやかなテーマになってきたんですが、日本でも98年、日本IBMや東芝などが試作品を発表したり、新聞社がシンポジウムを開催したりして、実用化段階に突入と いうことでやおら注目を集めるようになりました。サイバーパンク上陸というわけです。

ウェアラブル・コンピュータを身につけた人を観察してみましょう。メガネ型のディスプレイやヘッドホンが表示装置になっています。かつてバーチャル・リアリティで話題になったゴーグル型のヘッドマウント・ディスプレイをつけている人もいます。入力装置には、音声入力、手のひらにあるボタン式装置、衣服に縫い込んだキーパッド、といったものがあります。

使い方も、普通のパソコンとは違います。パソコンは、使う時、さあ使うぞとエリを ただして正面に座り、スイッチをオンして、OSがぐもぐもと立ち上がるのをかしこまってお待ちするわけです。が、ウェアラブルのスイッチはいつもオン。歩きながら、作業しながら、考えながら、その時々の活動や思考を補助するという使い方だからです。パソコンを使う時はそれが活動の全てであり、「ながら族」になるのはむつかしい。だけどウェアラブルは、「ながら」のために生まれてきたわけですね。

当面は特殊用途のためのものになるでしょう。工場や倉庫での作業だとか、高齢者の 健康管理だとか。ただアプリケーションはいくらでも広がります。技術的には。難しいのは、コンピュータがこっちに溶け込んでくるという大変な事態に、人はいつごろ慣れるのかということでしょう。メディアラボにはもう何年も身 につけているというサイバーパンクな兄ちゃんがいますけど、みんながそれをヘンなヤツと思わなくなるまでにはかなり学習期間が要ります。

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どうですか、全く今の状況のまんまで、進歩していませんよね。やっとブロードバンド、といってもADSLが解禁となり、iModeが登場したころです。デスクトップからようやくラップトップに転換されはじめたころ。ぼくがMITにVAIOを持って行ったらスゲーって人だかりができた、ニッポン最後のいい時代。

それから、モバイルが「いつでも」デジタルを実現しました。デバイスは小型化し、スマホが現れました。ブロードバンドが普及して、クラウドが現れ、オンラインで全ての仕事がこなせるようになりました。

15年たって、今度やっと24時間「いつも」デジタルが始まります。しかし、慣れる、つまりそんなぼくらがぼくらの姿をヘンだと思わなくなるのはまだこれから。まだ時間がかかりますよね。カッコいいウェアラブル。15年たっても、それがポイントです。