機械との競争、19の提言 

エリック・ブリニョルフソン、アンドリュー・マカフィー「機械との競争」の続編です。ぼくが本書に刺激を受けたのは、「教育」に関する分析と、「提言」の2点。まず、本書はアメリカの教育が停滞していることを批判します。情報化が進んでいない、指導法は何世紀も変わっていない、という指摘です。MITメディアラボのシーモア・パパート一派が唱え続けていることですね。

そこで本書も教育情報化を説くのですが、意を強くしたのは、美術、音楽など「ソフトスキル」をつける重要性を語っていることです。MITメディアラボから転じたジョン前田が、「イノベーション力を高めるにはSTEAM=科学、技術、工学、Art、数学が重要」としてArt教育をプッシュしていることに言及しています。まさにそれこそぼくがMITから日本に戻って10年続けている創造力・表現力を高めるデジタル学習活動のベース。

そして、本書のクライマックスが「19の提言」。

アメリカに対する提言なのですが、そっくり日本にぶつけたい政策集になっています。

だよね!という事項を並べてみましょう。( )はぼくの感想です。

・教育に投資し、先生の報酬を増額すべき

(日本はOECD中、公教育支出のGDP比がほぼ最下位。日本こそ投資すべきだ。)

・大学教授の終身在職権を剥奪せよ

(よくぞ言った! 大学教授は最も競争が少ない分野。日本もそうすべき。

自分のクビを絞めるけど。)

・義務教育の授業時間数を増やせ

(ゆとっている余裕はない、ということ。)

・スキルを持つ労働者の移民を増やせ

(少子化の著しい日本向け政策。女性と外人を活かすほかなし。)

・起業に関する規制を緩和せよ

(ややこしい認可の廃止は急務。)

・通信・輸送インフラの強化

(そのとおり。電波開放、運輸規制緩和。)

・基礎研究への予算を増額せよ

(R&Dで劣後しては日本に未来なし。)

・労働市場の高い流動性を維持せよ

(日本こそ成長戦略でこれを実現すべき。だが日本は腰砕けの気配。

これに対し、アメリカは自らの強みをわかっている。)

・新ネットワークビジネスへの規制を控えよ

(アメリカが強みをより強くする前に、日本がビジネス環境を整えなければ。)

・著作権の保護期間を短縮せよ

(これは驚いた。アメリカが海外に保護期間の延長を求めてきたことに対する重大なアンチテーゼ。

ぼくもアメリカは短縮したほうが国益にかなうと考えるが、ここにきてこうした議論が米国内から

公然と起こり始めた。

IT経済の専門家が唱え始めた意味は大きい。TPP交渉で保護期間延長は重大なテーマになるが、

アメリカの攻勢も一辺倒ではなくなる可能性がある。)