オープンデータ、3年で1位に!

ビッグデータはバズワードだが、デジタルの次の世界を描くものであることは間違いない。市場動向を提示し、産業の環境変化を予告し、ビジネスや医療、行政など各般の改革を促す原動力となる。

私は「インフラ」と「個人」の2つの可能性に注目している。インフラとしては、例えば携帯電話の利用データで地域・時間ごとの人口分布を推計できるため、防災・都市計画に役立つ。ビッグデータ自体が社会基盤として利用される。

アメリカが核戦争に備えてインターネットを作ったように、大震災を経験し、原発で世界に迷惑をかけた日本は、災害に耐える次世代のインフラを作る責務があろう。だが、それは新しい通信網を設計するというより、ビッグデータを活かした都市設計という上位レイヤが求められるということかもしれない。

スマートシティは、さまざまなセンサーからの情報をM2M(マシン・トゥ・マシン)で共有して、都市全体でビッグデータを活用する構想だ。この取組は日本は遅れているが、これこそ先んじて取り組まなければならないことではないか。

稲田修一「ビッグデータがビジネスを変える」によれば、日本は世界の1/4のセンサーを利用する「センサー大国」。さすが八百万の神々が棲むユビキタス社会。至るところにセンサーが潜んでいるのに、それを面的に、戦略的に使えていない、という状況だ。でも、であれば、チャンスはあるということだろう。

第二に、個人。ビジネスや地域だけでなく、個人も集合知を活用できる可能性だ。

クックパッド、カカクコム、ウェザーニュースなど、利用者の集合知によるコンテンツの集積を活用するサービスも普及している。ビッグデータはWeb2.0が大量の無記名レベルに拡大した、いわばWeb3.0ということだろうか。

日本の問題は、社会全体のデータ利用度が低いこと。

「ビッグデータがビジネスを変える」に引用されるマッキンゼーのデータによれば、2010年に蓄積された情報量は、北米3500ペタバイト、欧州2000ペタバイト、日本400ペタバイトだという。蓄積量にして日本は北米の11%。一方、今年2月のシスコ・システムズの調査によれば、日本のモバイルユーザ一人当たりの情報発信量は世界平均の5倍で断トツ世界一。

若いユーザを中心に情報を生産し発信しているが、社会全体がそれを溜めていない。ビッグなデータを生んでいるが、使えない。日本の社会経済は情報の重要性を認識していないということだろう。

2009年情報通信白書によれば、先進7カ国の情報通信利活用の偏差値で、日本は交通・物流で1位だが企業経営分野は最下位。日本は経営・管理レベルのITリテラシーが低いことが大問題なのだ。経営層にデータの重要性をどう認識させるか。というか、そうした経営層にどう切り替えるか。

てなことを分析していても、政策屋としては始まらない。私の仕事は、まずはデータを増やすようこじ開けて、社会の認識を高めることだ。

そこで、オープンデータ。政府・自治体はじめパブリックなデータを公開し、民間が活用し、情報サービスを生んでいく運動だ。

昨年設立された「オープンデータ流通推進コンソーシアム」に私は理事/利活用・普及委員長として参加している。関係省庁のかたがた、自治体のリーダー、企業や研究機関のみなさんにご参加いただき、情報発信や事例開発を進めている。

コンソーシアムがすべきことは3点。

プラスを伸ばすこと。まずはビジネスモデルを作ること。情報提供・共有のインセンティブは、今は善意に頼っている。企業として収益を上げられる道筋を作りたい。公共のデータを使って、もうかる事例を作りたい。持続性を得るために。

次に、マイナスを減らすこと。安心感を醸成することだ。データがオープンになればなるほど、デジタル化に対する不安や抵抗が増す。プライバシー保護などの運用指針を明確にして、オープンとクローズドの線引きが簡単にできるようにしたい。

3点目は、産学官のタッグを組み続けること。政府には、最大のデータ保持者としてデータを出すだけでなく、カネも出してほしい。民間が立ち上がるまでの間、資金の出し手としてプレイしてくれることを期待する。業界支援策ではなく、インフラ整備策として。

コンソーシアムからは「政府保有データの著作権をフリーにして使わせるべきだ」との提案も上がっている。これは早急に実現すべく動きたい。国が保有する公共データには著作権が発生しないよう著作権法を改正する、国がその権利を自ら放棄する、クリエイティブコモンズなど二次利用促進のためのライセンスを採用する、などのアプローチが考えられる。

私は間違っていた。実は、オープンデータの運動は、公共データをオープンにさせる、カナテコで開いてやる、というのが当初の私の姿勢だったのだが、参加したとたん、そんなことは些末なことだということが明らかになった。それよりも、個々人や企業のもつ超大量のデータを公共データとともに共有すること。「みんなのデータ」が公共性を持つことがハッキリしてきた。

頭が下がる。霞ヶ関は、内閣、総務、文科、厚労、農水、経産、国交、財務といった仲の悪そうな省庁が一つのテーブルについて公開策を練り始めている。意外にも、情報公開に前のめりなのだ。オープンデータは直接の見返りがない運動であるにもかかわらず、政府も自治体も企業も個人もみな、嬉々として参加し、汗をかいている。そこには、同志感がある。

こういうのは、ホメるしかない。そこで、2013年3月には優れた取り組みを見せる関係者をコンソーシアムとして「勝手に」表彰するという無謀なイベントをやってみた。

http://www.opendata.gr.jp/news/1303/130314_000080.php

最優秀賞は福井県鯖江市「データシティ鯖江」。様々なデータをXML等の形式で公開している。優秀賞にはOpen Knowledge Foundation、株式会社カーリル、税金はどこへ行った?チーム、気象庁、青森県、LODチャレンジ実行委員会、CKAN日本語化コミュニティが連なった。

新しい活動は、お金がもうかるか、やれという命令があってやるか、が相場だ。ところがオープンデータは、みなさんの純粋な公共心と熱意でスタートしていることに感動する。

より心強く感じたのは、受賞者の多様性。中央官庁もあれば、首都圏の大都市もある。地方の県もあれば、市も町もある。企業も、非営利団体も。国立の研究所も、学生もある。地方も中央も、大組織も個人も、同じく熱意を持って取り組む主役がいる。私は旗振り役というより、応援団として、貢献したい。

一昨日、コンソーシアムの総会が開かれた。席上、経産省の岡田室長が「オープンデータ国際ランキングで日本は19位」という情報を紹介した。すると理事の越塚東大教授が「3年で1位に!」とチョー強気の発言。いや~それはキツいかなぁ。と思ったのだが、会場から大拍手。

よし、やりますか。オープンデータの国際ランキング、3年で19位から1位に、をコンソーシアムの「勝手目標」に据えるかな。高いハードルに向け、いざ。