ビッグデータの可能性

ビッグデータ。スマホやセンサーから毎秒毎秒ガンガン出てくる膨大な情報を分析することで、ビジネス、医療、防犯、都市設計など社会経済のいろんな局面で新しい価値を生む。気象、地理、道路交通などのデータのほか、人々が発信するソーシャルメディアの情報や防犯カメラの映像など、爆発的に増大するデータが宝の山として注目を集めているのです。

バズワードでもあり、可能性の広がるキーワードでもあります。しかし、明確な定義はまだありません。現時点では、可能性を狭めないためにも「大量の情報の集積」ぐらいの緩いとらえ方をしておけばいいと思います。

ビッグデータは社会を豊かにすることに加え、ビジネスを広げることが期待されています。それは宣伝書などに譲るとして、ぼくは「インフラ」と「個人」の2つの可能性に注目しています。

まず、インフラとしてのビッグデータ。

携帯電話の利用データで地域・時間ごとの人口分布を推計できるため、防災・都市計画に役立ちます。ビッグデータ自体が社会基盤として利用されるのです。

「アメリカが核戦争に備えてインターネットを作ったように、大震災を経験し、原発で世界に迷惑をかけた日本は、災害に耐える次世代のインフラを作る責務があるのではないか。」

「前の震災ではネットが途切れずに活躍したが、次に来る大震災に立ち向かう研究開発は日本がリードしなければならないのではないか。」

などという漠然とした青臭い思いを2年来抱いているのですが、それは新しい通信網を設計するというより、ビッグデータを活かした都市設計という上位レイヤが求められるということかもしれません。

スマートシティは、さまざまなセンサーからの情報をM2M(マシン・トゥ・マシン)で共有して、都市全体でビッグデータを活用する構想です。この取組は日本は遅れていますが、これこそ日本が先んじて取り組まなければならないことでしょう。

総務省の先輩、稲田修一さん著「ビッグデータがビジネスを変える」によれば、日本は世界の1/4のセンサーを利用する「センサー大国」なのだそうです。さすが八百万の神々が棲むユビキタス社会。至るところにセンサーが潜んでいるのに、それを面的に、戦略的に使えていない、という状況なのですね。

でも、であれば、チャンスはあるということです。

第二に、個人。ビジネスや地域だけでなく、個人も集合知を活用できる可能性です。

クックパッド、カカクコム、ウェザーニュースなど、利用者の集合知によるコンテンツの集積を活用するサービスも普及しています。ビッグデータはWeb2.0が大量の無記名レベルに拡大した、いわばWeb3.0ということでしょうか。

私の計算では、デジタル化が進み始めた95年から2005年の10年間で情報量は21倍に増え、さらに加速していますが、それをビッグデータの一部とみるわけです。コンテンツ=人と人(P2P)と、モノ・モノ(M2M)とを統合する見方です。

ところで、「ビッグデータがビジネスを変える」は、教育、医療、行政といった公共分野でビッグデータを利用することが重要だと説きます。まず教育。ビッグデータで教育ビジネスは高度化します。さまざまな人が教材を作成、集積し、各生徒に最適なものを提供できます。集合知です。ビッグデータを活用した実証実験が必要です。デジタル教科書・教材運動でもビッグデータを新テーマにしたいと思います。

ビッグデータは医療・健康ビジネスにも重要となります。しかし、病院間でカルテのデータ形式が異なる、検査データが連結できない等の根本問題があります。欧米では数千万件の医療情報を集積しているが、日本は不十分という指摘もあります。この分野は教育の情報化よりうんと壁が厚いですねぇ。行政のビッグデータ活用には国民IDが必須ですが、先進国で日本だけが未導入、という指摘もある。マイナンバーもまだですもんね。

その書物に、とてもショッキングなデータが3つ掲げられています。

まず、情報通信投資の対GDP比率は米英韓が5%で2003年から増加傾向、日本は3%で2001年から減少という一橋大学深尾教授のデータです。一般ユーザの利用度は高いのですが、企業の利用度が低いということです。

2009年情報通信白書によれば、先進7カ国の情報通信利活用の偏差値で、日本は交通・物流で1位だが企業経営分野は最下位だといいます。ショック。日本は経営・管理レベルのITリテラシーが低いことが大問題なのです。

2010年に蓄積された情報量は、北米3500ペタバイト、欧州2000ペタバイト、日本400ペタバイト、というマッキンゼーの驚くべきデータもあります。蓄積量にして日本は北米の11%。産官ともに日本は情報の重要性に気づいていないということです。

最大の問題は、データや情報の重要性をどう認識するか、というわれわれの内側に存在するのでしょう。これは実に重い課題です。