復活するか、マイナンバー

税と社会保障の共通番号「マイナンバー」を導入する法案「行政手続きにおける特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」。今国会での成立が見込まれています。2012年に国会提出されたものの、解散を巡る政治的駆け引きのあおりをくらって廃案となっていたのが再提出されたものです。法律が成立しても、マイナンバーの導入は当初計画より1年遅れの2016年となります。

マイナンバー。何だろう。

気になって、自分に関する番号を片っ端からチェックしてみました。運転免許証、パスポー ト、年金手帳、税務署からの請求、みな別の番号がついていて、国や公的機関が管理している。大学や企業その他の所属団体の証明証、電話番号、病院の診察券、クレジットカード、キャッシュカード、ポイントカード、アメリカに住んでたころ取得したソーシャルセキュリティナンバー・・、みな番号がついていて、誰かが管理している。一方、これだけ番号がある中で、国民全員が持ち公的機関が管理する番号はなかったわけです。

この制度は、「国民ID」より「税と社会保障の一体改革を進める」という目的に集中して作られています。所得が把握しやすくなるし、行政コストも減るだろう、ということです。国民に与える番号は、氏名・住所・性別・生年月日の4情報と関連づけた個人番号。これを住民基本台帳で管理・把握しようとする。10年前に住基カード、住基ネットで騒ぎになり、あまり使われてこなかった仕組みをきちんと使おうとするしくみだそうです。

よくわからなさが手伝って、怖がってる人も多いですね。2011年の政府調査によれば、「番号制度導入により国家によって国民が監視・監督される」46.9%。「偽造やなりすましによって、自分の情報が他人からのぞき見されたり不正利用されたりする」36.7%。「自分に関する情報が漏洩しやすくなる」27%。

でも、国家監視で言えば、パスポートは外務省、免許証は警察、今でも管理したけりゃできます。逆にパスポート番号を管理してくれてないと外国入れずに困ります。情報漏洩にしても、4情報が漏れて本当に困ることって何でしょう。日々ネットの利便を実感しているぼくは、ぼんやりした不安でメリットを潰すことが正当化できないでいます。

もちろん、安心できる制度構築は大事。法案でも、目的外の特定個人情報の収集・保管の作成禁止、第三者機関(個人番号情報保護委員会)による監視・監督といった手段が執られようとしていました。まぁ、どこまでコストをかけるかですね。個人情報保護のあおりで見られたような、緊急連絡網が作れないとか、事故で搬送された人のリストを病院が警察に教えないとか、行政が民政委員に情報を渡さずに虐待家庭のフォローができないといった事態は、安心を求めて余計に不安をもたらした事例でしょう。

便利と安心のバランスは、公開と保護のバランスと言い換えてもいい。マイナンバーはコンピュータ/ITシステムですが、ネットを巡る利便性と恐怖の問題と同様ですね。ぼくはITの利便性をどう拡張するかに心を砕いているので、マイナンバーもいかに安心を確保するかよりも、どうメリットを拡げるのかに関心があります。

病院・学校・銀行・引越・郵便局・ネット・郵便。公共的な領域に絞っても、いくらでも利用分野があります。金融・固定資産を一括管理する資産運用アドバイス。病院間をつないだ医療データのやりとり。さらに、一度IDを登録すれば他のサイトでも同じIDでログインできる、いわゆるオープンIDに拡げれば、ネット上のさまざまな民間サービスで利用できます。野村総研の試算では、番号制度による電子行政の効果3.8兆円に加え、民間でのID活用により10.5兆円の経済効果があるとしています。

税と社会保障に限るだけでも不安が高いことを考えれば、そこまで拡げるのは抵抗が大きいでしょう。しかし、だとすれば、税と社会保障だけで巨額のコストをかけてシステムを構築するメリットも説明しづらい。といいますか、要するにぼくがよくわからないのは、メリットの小ささと安心コストの大きさがアンバランスじゃないか、ということです。

民間利用の範囲で言えば、「自由に認める」と「一切認めない」との間に、「利用者・顧客が同意すればいい」とか「政府の許可制にかからしめる」とか、いろんな幅があるでしょう。道はあるということ。でも、民間利用の可能性は、法施行後3年たってからようやく検討されるそうです。

ううむ。教育情報化の議論もそうなんですけど、メリットがどうでデメリットがどうで、便利がどうで安全がどうで、って話ばっかりで、結局導入が見送られたり、利用が制限されたりっていうのは、失った20年を通して日本が悩まされている宿痾です。

やっちゃおうぜ、という雰囲気になる空気が欲しい。いま必要なのは、換気扇ですかね。