ITは復興の役に立てるのか

2011年3月11日。それはIT政策の転換をも促しました。ぼくは震災から間もなく、目の前の「復旧」以上に長期的な「復興」に向かうことと、「ITを」復興させることよりも「ITで」復興させることに力を入れることが大事との考えから、3本柱の提案を掲げました。

1. ネットワークの再設計

今回はネットが活躍した。パケット通信の威力が初めて実証された。今後、デバイスはマルチになり、ネットワークはクラウドに移行する。新しいメディア環境が必要となる。 アメリカが核戦争に備えITの研究開発を進めたように、日本は自然災害に立ち向かう技術を研究開発し、強い国土を建設すべき。

2. 海外への情報発信

震災後、海外メディアが冷静で毅然とした日本を賞賛する報道が目立った。しかし、その後の原発対応で、日本のイメージは悪くなった。海外メディアを買うなりして、正確な情報を発信しよう。

3. IT利用促進

被災地でネットが使えたとはいえ、高齢者の普及はまだ低い。情報格差の是正、情報リテラシー教育の充実が必須。被災地対策ではなく、全国の情報化策だ。

これは一例です。当時、さまざまな方が多様な提案を抱いていました。そういう方々の場を用意したい。そう考え、2011年4月、慶應義塾大学で「IT復興円卓会議」を開催しました。政治、政府、産業界、NPO、言論界、学界など50名程度によるラウンドテーブルです。「日本の復興にはITの整備・利用が重要。総力を発揮しよう。」とする提言をまとめ、政党・政府に託しました。  http://ithukko.com/

しかし、これには批判も寄せられました。議論が全く不十分だというのです。そこで、IT復興策のニコニコ生放送を7回シリーズで提供することにしました。テーマは1)行政、2)メディア、3)通信、4)ソーシャル、5)ボランティア、6)政治、7)総括。私が司会を務め、佐々木俊尚さん、池田信夫さんらに主導してもらいつつ、テーマごとにゲストを招きました。

毎回、突っ込んだ議論が見られました。それを通じ、明らかになったこともあります。例えば第6回「政治」の回。自民党世耕弘成参議院議員、民主党藤末建三参議院議員、高井崇志(前)衆議院議員と池田信夫さん。

当時、民主党政権。総理大臣はコロコロ変わり、TPPや 消費税増税などゴタゴタは収まらず、あれほどの震災があったにも関わらず政治は混迷。復興庁ができたのが震災から1年後というのはあまりに遅い。

そんな批判に対し、世耕議員は「復興に関しては国会は機能した」とし、被災者への賠償金や補償策について与野党の協力を強調。民主党内閣が出来ないことに関しては野党・自民党が議員立法を提出する、あるいは内閣が出してきた法案について野党が提言をし、修正を行うといったやりとりを何度も行ったといいます。

IT政策を巡っても、官僚VS政治か、政治主導か霞が関かという議論が繰り返されてきましたが、そうではなく、震災を機に行政府から立法府に機能が移行したといいます。再度の政権交代でまた揺れ戻しがあるかもしれませんが、少なくともITに関しては与野党の意見は近く、後はどう実行するかです。強烈なリーダーシップが必要です。

池田信夫さんは「復興には分権化、権限移譲が必要。一方、今後の災害への対応には集権化が必要だ。縦割り官庁をしっかり集権化すべき。震災の教訓は学んで欲しい」と説きます。

IT復興会議はひとまず終了しました。政権はまた交代しました。だが、復興への取組は道半ば。ITが復興にどう貢献できるかの答えも出ていません。政局は無縁。政治、産官学が一つの方角を向きたいものです。