20年ぶりのメディア転換点

今回はちょいと授業風に。

この2年、メディアは20年に一度の大波に洗われました。90年代初め、アナログからデジタルへの転換点「マルチメディア」ブームがありました。テレビ、電話からPC、ケータイへ。アナログ放送網と電話網からデジタル放送とインターネットへ。それ以来の転換点です。3つの状況が現れました。

1) マルチデバイス

スマートフォン、電子書籍リーダー、タブレットPCなど、新型のデジタル・デバイスが一斉にラインアップされ、急速な普及を見せました。大小さまざまの、モバイル型あるいは壁いちめん据え置き型のディスプレイが登場。50年間君臨してきたテレビ、20年間広がってきたPCとケータイ に次ぐ、いわば「第4のメディア」の君臨です。しかも2012年の家電ショーは「スマートテレビ」一色。多彩なメディアがまたしてもTVに集約されていくのか? 改めて混沌とした場面を迎えています。

2) クラウドネットワーク

2010年はブロードバンド網の全国化目標年でした。一方、94年 に政策が始まった放送ネットワークのデジタル化、つまり「地デジ」は2011年に完成。日本は世界に先駆け、通信・放送を横断するデジタル高速ネットワークを整備しました。メディア融合の環境が整いました。明治以来、郵便局整備と並び国家が推進してきた情報網の整備が完了しました。もうインフラ政策は要らないのでは? 国の政策も大きく変わります。

3) ソーシャルサービス

マルチメディアが唱えられた20年前から、「コンテンツ」の重要性が唱えられてきました。2000年代に入ると、政府はコンテンツを国の戦略成長産業と位置づけました。しかし、コンテンツ産業は元気がありません。それに代わり、ソーシャルメディアが花盛りです。情報量も収益もソーシャルに集中しています。使われすぎで、炎上やらコンプガチャやら問題さえ起こしています。コンテンツが真ん中に座りながらも、それをネタにつながった人々がつぶやき、段幕を作る。そちらに関心が移り、主役を張る状況は当分続くでしょう。コンテンツからコミュニケーション、コミュニティへ。

メディアを形作る1)デバイス、2)ネットワーク、3)サービスの3要素がそっくり入れ替わるわけです。90年代初頭のマルチメディアは、PCという万能の集約型マシンを作ろうとするものでした。だけど、ここに来て登場した新メディア環境は、その逆。ふたたび、バラバラで多様なデバイスが現れて、それらをネットワークでつないで同時に使いこなす。

重要なのは、デバイスやネットワークが「ソーシャル」によって価値を持つということ。5年ほど前まで、検索エンジンのようなネットの向こうの「技術」が社会を制圧するかに思われていたのに、技術が進化して、マルチメディアが完成したら、結局のところ、人と人のつながりが価値を持った。ともだちや知り合いや信頼を置く専門家といった「人力」が力の源泉となった。機械や技術からヒトへ。それがこの20年の帰結だったわけです。アナログの勝利であります。

悪くない。デジタルは、ここからやっと面白くなるんじゃないでしょうか。