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福原愛さんの離婚に中国のネット民の9.9割が「大賛成」するワケ

中島恵ジャーナリスト
結婚会見をしたときの福原さんと江さん(写真:アフロスポーツ)

 7月8日、元卓球選手で五輪メダリストの福原愛さんが、同じく元卓球選手で台湾人の江宏傑さんと離婚したことが正式に発表された。

 二人は連名で文書を発表。そこには2人の子どもたちについて「共同親権とする」とあり、「少しでも子どもたちへの影響を減らすことができるよう、それぞれ努力します」という言葉が綴られていた。

なぜ福原愛さんは幼い子どもと離れ離れでも平気そうなのか?日本と異なる台湾的子育て事情

 福原さんは同日夜8時少し前、中国版ツイッター、微博(ウェイボー)でもコメントを発表した。その文章は以下の通りだ(原文は中国で使われている簡体字の中国語だが、日本語に翻訳する)。

「ずっと温かく見守ってくださり、励まし、パワーをくれた中国の卓球ファンの皆さん、本当にごめんなさい。私事の報道が皆さんを困らせ、煩わせました。私は必ずがんばります。どんなときも、私の家族や友人をサポートしてくださって、感謝いたします」

 福原さんのフォロワーは500万人以上もいるが、この投稿に対し、瞬く間にアクセスが集中。微博のホットワードランキングで上位に上昇した。本文に「離婚」という二文字はなかったが、一夜明けた7月9日朝の時点で、「いいね」は約57万件、コメントは3万件も寄せられた。

大半が「離婚おめでとう!」だった

 筆者が見た上位のコメントは主に以下のようなものだった。

「恭喜!」(おめでとう!)

「苦しみからついに脱したね!よかった!」

「よかった!子どもの頃のかわいい笑顔の愛ちゃんに戻って!」

「新生活の始まり、おめでとう」

「(福原さんがかつて住んでいたことがある中国の)東北地方の男性たち、チャンス到来だよ」

「ひも男からやっと離れることができてよかった!」

「私たちは永遠に愛ちゃんを応援します!」

 このように、コメント欄にも「離婚」という言葉はあまりなかったものの、離婚を指しているのは明らかで、しかも、そのほとんどが福原さんを支持するもの。反対する意見は見られなかった。もちろん、反対コメントが絶対ないとはいいきれないので、つまり、九分九厘、福原さんの離婚を喜んでいるかのようなコメントといっていい。

福原さんのウェイボーの投稿(中国のウェイボーより筆者によるスクリーンショット)
福原さんのウェイボーの投稿(中国のウェイボーより筆者によるスクリーンショット)

中国では「妹のような存在」

 なぜ、中国のネット民はここまで福原さんを応援するのか? 

 その理由については以前も以下の記事で書いたことがあるが、福原さんと中国には深い関係があるからだ。

「何があっても愛ちゃんを支持する!」なぜ中国人はここまで無条件に福原愛さんを応援するのか?

 福原さんは幼い頃に兄の影響で卓球を始めたが、兄のコーチが中国人だったこともあり、6歳のとき、初めて中国に渡った。

 17歳の頃には、中国の超級リーグの遼寧省チームに入団。ここで中国人メンバーと寝食をともにして卓球の腕を磨いた。このとき、ほぼ完ぺきな東北なまりの中国語もマスター。中国メディアのインタビューにも流暢な中国語で答えた福原さんは、大の人気者になった。

 このときのことが強く印象に残っている中国の30代以上の人々は多く、彼らは福原さんに共感し、「まるで自分の妹のようだ」と親しみを感じたのだ。

 そうした中国人の感情を知ってか知らずか、福原さんの微博のアイコンは、「泣き虫愛ちゃん」といわれた、自身の幼い頃の写真を使っている。

 日本でも、自分の妹や、妹のような存在であれば、たとえ離婚の原因が何であれ、妹をかばう「身内」は少なくないと思うが、つまり、中国人にとって、福原さんは「身内」的な存在なのだ。

 だからこそ、福原さんが微博に書き込んだ中国語のコメントに中国のネット民は喜び、「おめでとう!」と受け止めたのだろう。

ジャーナリスト

なかじま・けい ジャーナリスト。著書は最新刊から順に「中国人が日本を買う理由」「いま中国人は中国をこう見る」(日経プレミアシリーズ)、「中国人のお金の使い道」(PHP研究所)、「中国人は見ている。」、「日本の『中国人』社会」、「なぜ中国人は財布を持たないのか」「中国人の誤解 日本人の誤解」、「中国人エリートは日本人をこう見る」(以上、日経プレミア)、「なぜ中国人は日本のトイレの虜になるのか?」、「中国人エリートは日本をめざす」(以上、中央公論新社)、「『爆買い』後、彼らはどこに向かうのか」、「中国人富裕層はなぜ『日本の老舗』が好きなのか」(以上、プレジデント社)など多数。主に中国などを取材。

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