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「連休は猫とまったりしたい……」 日本人は中高年が、中国人は若い女性が猫を愛する理由

中島恵ジャーナリスト
中国でも猫ブームが起きている(写真は筆者の友人提供)

 ゴールデンウィークが始まりました。といっても、今年は近場でゆっくり過ごすという人が多いかもしれません。コロナ禍になって以降、自宅で長い時間を過ごす人が増えたせいか、2020年はペットを飼う人が増加しました。

 日本ペットフード協会が実施した『全国犬猫飼育実態調査』(2020年)によると、新規飼育者は2019年よりも増加。過去5年間で、伸び率、飼育頭数ともに最も多いことがわかりました。

 日本人が猫を飼う理由としては「生活に癒し、安らぎが欲しかったから」、「愛情をかけて世話をする対象が欲しかったから」などがあり、我慢することの多いコロナ禍で、ぬくもりのある猫が心の支えになっている人が多いことがうかがえます。

 飼育者の年齢別で最も多いのは50代で全体の10.8%、続いて多いのが60代、次が40代の順。日本では比較的高齢の2人以上の世帯で猫を飼っています。

中国では30代以下の女性が主な飼い主

 一方、中国ではどうかというと、中国でもペットを飼う人は急増しており、「ペット業界白書」(2020年)によると、2020年に全国で飼われている犬猫は1億匹を突破。2019年と比べて1.7%増加しました。

 内訳を見ると、犬は減少したのに対し、猫は約4900万匹と過去最高。前年比10.2%も増加しています。

 日本同様、散歩の必要がなく、室内で飼える猫は中国でも大人気で、日本と同じくコロナ禍の影響により、中国人も癒しを求めているようです。

 しかし、具体的にデータを見ていくと、年齢別では、日本と大きく異なることがわかりました。中国で最も多く猫を飼っているのは1990年代生まれ(中国語では90后(ジウリンホー)の22~31歳)までの若者で、全体の38.1%を占めていました。続いて多いのは1980年代生まれ(中国語では80后(バーリンホー)で36.2%。

 つまり、中国では20代を中心に、41歳以下が飼い主の7割以上となっています。

猫の写真をSNSに載せる人も多い(写真は筆者の友人提供)
猫の写真をSNSに載せる人も多い(写真は筆者の友人提供)

 日本で猫の飼い主の主流となっている1960年代生まれより上の年齢は、中国では全体の8.2%しかおらず、中国で飼っているのは、ほとんどが若者。しかも、飼い主の約90%を占めているのが女性であることもわかりました。

高学歴の若い女性にとって猫の存在は…

 白書を見ると、さらに詳細がわかります。

 この女性たちは大卒以上が全体の約53%と半数を超えており、月収は4000~9999元(約6万7000円~約16万8000円)の人が約半数。北京、上海、広州、深圳などの大都市に住み、約6割が既婚者、4割が単身者でした。

 都市部に住む高学歴の若い女性が好んで猫を飼っているということです。

 2019年の上海市のデータでは平均給与が9580元(約16万円)となっていますので、前述の女性たちの月収は決して多いとはいえませんが、少ないともいえません。大卒で20~30代が中心なので、どちらかといえば、やや恵まれているほう、といえるでしょう。

 そのような若い女性が猫を飼う理由は、日本人同様に癒しや安らぎを求めていることに加え、大都市での仕事のプレッシャーや孤独があるといわれています。中国の若者は多くが一人っ子。地方出身者の場合、都市では家賃の安いシェアハウス(間借り)などに住んでいるといわれ、寂しさを抱えて生活しています。

 興味深いことに、同白書では、「猫をどのような対象とみているか?」というデータがあるのですが、全体の6割近くの人が「自分の子どもだと思っている」と答えており、約3割の人が「恋人」と答えていました。おそらく、既婚の若い女性は猫を自分の子どものように思い、独身の若い女性は恋人のように思っているということではないかと思います。

 中国では現在、成人の独身者が日本の人口の2倍近い約2億4000万人にも上っており、婚姻率が低下しています。要因は高学歴化や個人主義、長時間労働、マンション価格の高騰などといわれており、今後ますます独身者は増えていくと予想されていますが、そうした状況にある若者にとって、猫は寂しいときにそばにいてくれて、愛情を注ぐことができる貴重な存在となっているのかもしれません。

中国で人気の猫種は?

 ちなみに、前述の日本の調査では、飼っている猫の種類は「雑種、または不明」が全体の約82%で、純血種(人気なのはアメリカン・スコティッシュフォールドなど)は18%しかいませんでしたが、中国の調査では、年代によって人気の猫種がくっきりと分かれました。

 1980年代生まれ(32~41歳)の人は「中華田園猫」、1990年代後半生まれ(22~26歳)の人はブリティッシュショートヘア、1990年代前半生まれ(27~31歳)の人はラグドールを好むという調査結果でした。

 中華田園猫というのは、日本では聞きなれない名称だと思いますが、冒頭に掲載した写真(2 匹の猫)がそのひとつです。もともと中国に住んでいる猫の総称で、白猫や黒猫、三毛猫、トラ猫のような毛並みの猫など、さまざまな種類があり、長毛の場合もあります。

 CCTV(中国のテレビ局)が2020年に行った調査では、中国で最も人気があるのは、この中華田園猫で、圧倒的多数でしたが、2番目に人気なのはブリティッシュ・ショートヘア(英国短毛猫)、3番目はアメリカン・ショートヘア(美国短毛猫)と日本と似通っていました。日本人が雑種や日本猫をこよなく愛するのと同じように、中国でも地元に昔からいる中国猫が人気のようです。

ジャーナリスト

なかじま・けい ジャーナリスト。著書は最新刊から順に「中国人が日本を買う理由」「いま中国人は中国をこう見る」(日経プレミアシリーズ)、「中国人のお金の使い道」(PHP研究所)、「中国人は見ている。」、「日本の『中国人』社会」、「なぜ中国人は財布を持たないのか」「中国人の誤解 日本人の誤解」、「中国人エリートは日本人をこう見る」(以上、日経プレミア)、「なぜ中国人は日本のトイレの虜になるのか?」、「中国人エリートは日本をめざす」(以上、中央公論新社)、「『爆買い』後、彼らはどこに向かうのか」、「中国人富裕層はなぜ『日本の老舗』が好きなのか」(以上、プレジデント社)など多数。主に中国などを取材。

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