香港人はなぜそんなに日本のイチゴが好き? 香港人が中国産より日本産を選ぶ理由

(写真:GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート)

 今年2月、日本の農林水産物・食品の輸出額は約9223億円と、8年連続で最高を記録しましたが、中でも顕著な伸びを示した品目がイチゴでした。日本産イチゴの輸出先の第1位はなぜか香港で、しかも全体の7割以上を占めています。また、以下の記事にあるように、今年1~2月の統計だけで、すでに昨年の8割にまで達し、輸出量が急激に増加していることもわかりました。

イチゴ輸出に勢い 2ヵ月で前年の8割 アジア圏中心

 日本の市場が縮小する中、海外で日本のイチゴが大人気というのはありがたいことですが、なぜ香港? なぜイチゴ? という疑問が浮かびます。香港といえば名物の「マンゴープリン」を連想する人もいるように、一般的には果物が豊富な南国のイメージがあるからです。

 しかし、実際に香港のスーパーやマーケットをのぞいてみると、売られている果物のほとんどは輸入品です。確かに種類は豊富で、日本のスーパーではめったに見かけないマンゴスチンやライチ、パパイヤ、ドラゴンフルーツ、ドリアンなどもたくさん売られていますが、それらは中国、タイ、フィリピン、オーストラリアなど海外産。面積が狭い香港では、食品はほとんど輸入に頼っています。

富裕層を中心に人気になった

 その中で、数年前からひときわ人気の的となっているのが日本産のイチゴです。香港で日本産イチゴが知られるようになったのは、十数年前、日本の地方自治体からの売り込みがきっかけでした。

 それまで香港で売られているイチゴといえば、アメリカ産や韓国産などでしたが、当時、売り場を見たときの印象では、ライチやスイカなどの果物に比べ、イチゴはあまり人気があるようには見えませんでした。日本の真っ赤なイチゴとは違い、緑がかっていて、ボツボツとしたタネが目立ち、味もスカスカしたイチゴだったからです。

 そこに登場したのが日本産の甘いイチゴでした。当初、南国に自然に生えているような果物が多かった香港のスーパーの果物売り場の中では特別な存在で、キャンペーンのような形で販売が始まりましたが、それが彼らの目に新鮮に映ったのでしょう。粒が大きく、色も真っ赤、形が整っていて高級感があり、糖度が高いイチゴは、富裕層の間で人気となりました。

 その後、福岡県、佐賀県、栃木県など、イチゴ生産がさかんな地方自治体や生産者を中心に、イチゴを空輸する際に傷つけないようにするパックの改良や、摘み取りから空輸までの時間短縮、流通システムの改善、現地の市場開拓など、日本側が輸出に向けて努力を重ねていったことに加え、香港側でも「彼らが日本のイチゴを大好きになる理由」が増えていきました。

日本産イチゴの美味しさに目覚めた

 理由の第一は訪日旅行(インバウンド)での経験です。中国の陰に隠れて、あまり知られていませんが、コロナ前の2019年、国・地域別の訪日外国人観光客の中で香港は第4位(約229万人)に入っています(1位は中国、2位は韓国、3位は台湾)。過去数年さかのぼって見ても、香港は常に訪日外国人の中で上位にあり、香港人の日本ファンは非常に多いです。

 特徴的なのは、その多くが団体ではなく個人旅行で来日しているということ。彼らは中国人よりも数年早く日本で「コト消費」を行っており、イチゴ狩りなどを経験して、日本のイチゴのおいしさに目覚めたのです。

 とくに、彼らが憧れるのはブランドイチゴ。福岡県の「あまおう」などを始め、百貨店や高級フルーツショップなどで売られている白いイチゴなど、これまで見たことのないさまざまなイチゴを訪日旅行の際に食べており、そのときの経験が、コロナで日本に来られない今、消費の伸びに関係しているのではないかといわれています。

 ほかには、日本産品への信頼度が高いことも挙げられます。香港人にとって日本文化は身近な存在。カルチャースクールで日本語をファッションのように学ぶ若者も多いですし、日本料理店や居酒屋、ラーメン店も多く、日本食品に対して非常にいいイメージを持っている人が多いのです。

巣ごもり生活でプチ贅沢をするように

 もちろん、コロナ禍の影響もあります。香港でもコロナの影響により、外出自粛や飲食店での店内飲食が制限され、巣ごもり消費が増えました。

 外食が大好きな香港人ですが、家庭で食事をする機会が増え、日本人と同じように「プチ贅沢」をする人が急増。日本産イチゴは、長年食べてきた南国産の果物よりも値段は高いですが、「プチ贅沢」にピッタリの果物として、もてはやされるようになりました。今年1~2月に輸出量が急増した理由としては、春節時期の贈答需要が大きかったと推測されています。

 20年ほど前、香港のスーパーでは、すでに青森県産のリンゴが売られていましたが、その当時、日本産のリンゴは香港で「大きい、赤い、丸い」と3拍子揃っているといわれました。中華圏の人々から見て、味だけでなく、この3つが揃っていること=とても縁起がいいことだからです。

 赤は中国や香港の人々にとっておめでたい色であり、丸いこと=家族円満の象徴でもあります。中国産などのリンゴに比べても、赤くて丸く、サイズが大きい青森リンゴは香港人の贈答用の果物として長年重宝されていましたが、今ではそれに「赤くて、かわいくて、甘い」イチゴも加わったのです。