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コロナ禍の中国でも納豆が大人気!健康志向の高まりと巣ごもり需要で 納豆製造器がある家庭も

中島恵ジャーナリスト
健康ブームの中国でも納豆の人気が高まっている(写真:アフロ)

免疫力をアップさせ、家計にも優しい納豆の需要が高止まりしているというニュースが報道されました(参考:食品新聞、2月26日の記事)。

緊急事態宣言に伴う巣ごもり需要や健康意識の向上、手ごろな価格帯などが関係しているといわれますが、隣国・中国でも、ここ数年、納豆の人気が急上昇しています。

欧米でも納豆は「身体にいい」「日本食はヘルシー」という理由で食べる人が増えていると聞きますが、中国でも数年前から、大都市のスーパーで納豆(中国語読みではナードウ)を購入できるようになり、日本からの輸入品や現地生産品など、たくさんの種類が販売されるようになっているのです。

中国の立鼎産業研究網のデータによると、2019年の納豆の市場規模は2億5600万元(約4兆円)。2009年は約8500万元(約1億3600万円)だったので、この10年で3倍以上にまで急拡大していることがわかります。

中国でも3個パックで販売

上海在住の30代後半の女性も納豆をよく食べている一人です。この女性は以前、日本に住んでいたことから、日常的に納豆を食べる習慣があったとか。中国に帰国後、しばらくの間、購入しなかったそうですが、昨年からのコロナ禍で「身体にいい」納豆を思い出し、再びスーパーで購入するようになったそうです。

「価格は3個パックで7元(約110円)くらいの安いものから、日本製の20元(約320円)くらいするものまでいろいろ売っているのですが、私は10元(約160円)くらいのものを買って、冷蔵庫に常備しています」(女性)

 筆者も北京や上海のスーパーに行った際、何度も納豆売り場をのぞいて見たことがあり、その種類の豊富さに驚きました。明らかに、中国在住の日本人向けではなく、地元の中国人を対象に販売されているもので、健康を気遣う人が増えている中国人の間に、“日本の納豆文化”が根づきつつあることを実感します。

(余談ですが、中国のサイトでは、「そもそも納豆は中国発祥」という説が掲載されています。日本語のウィキペディアの「納豆」の項目では、日本以外に納豆を食べている地域として、中国雲南省や東南アジアなどが挙げられています)

中国の通販でよく見かける「納豆製造器」

 現在、中国のサイトで「納豆」と検索すると、日本と同じように、そのまま食べる納豆パックはもちろんのこと、なぜか、納豆製造器(納豆発酵メーカー)が数多くヒットします。

 蒸した大豆に納豆菌をふりかけ、セットしておけば24時間程度で完成するという道具で、価格は300~500元ほど(約4800円~8000円)。スーパーで買うよりも、時間も手間もかかりますが、コロナ禍で巣ごもり中、「納豆づくりにハマった」「出来立ての手作り納豆が食べられる!」とSNSに書き込んでいる納豆好きな人もいました。

中国の通販サイト「京東」で販売されている納豆製造器(筆者引用)
中国の通販サイト「京東」で販売されている納豆製造器(筆者引用)

 また、ナットウキナーゼや納豆エキスなどの健康食品も数多くヒットします。日本で納豆といえば、健康食品よりも、納豆そのもののことを指すことのほうが多いと思いますが、中国では納豆の成分に着目する人がとても多いのです。

 中国の通販サイトで調べてみると、「ナットウキナーゼ」1箱1500元(約2万4000円)、「納豆エキス」1箱138元(約2200円)などがズラリと表示され、かなりの人気商品であることがわかります。

中国では脳血管疾病が多い

 日本でも情報番組の健康特集などでよく取り上げられますが、納豆には血栓を溶かす酵素、ナットウキナーゼが存在するといわれており、これは脳梗塞など脳血管疾病の予防に効果があるといわれています。

 中国では脳血管疾病が多く、中国人の成人では血管疾患とガンが主要な死因となっています。そうした点からも納豆由来の健康食品を検索し、関心を持っている人が多いのでしょう。

 前述の女性は「2015年の“爆買い”ブームのとき、日本旅行に行って、日本には優れた健康食品がたくさんあることを知った中国人が多かったと思います。健康食品なら、気軽に飲めるし、継続しやすい。その後、気がついたら、中国にも健康食品があふれるようになっていました。私の周囲でも、ここ数年、ビタミン剤などのサプリを飲み始める人が増えています」と話します。

 中国でも日本人の寿命が世界でトップクラス(WHOの統計では、2018年の世界寿命ランキングで日本は第2位、男女平均で84.2歳)であることはよく知られており、中国(同ランキングで第71位、男女平均で76.7歳)よりも8歳近くも差があります。

コロナ禍で健康の重要性を再認識した中国人が多く、そうした健康に対する意識の変化が、今の納豆人気を押し上げているのかもしれません。

ジャーナリスト

なかじま・けい ジャーナリスト。著書は最新刊から順に「中国人が日本を買う理由」「いま中国人は中国をこう見る」(日経プレミアシリーズ)、「中国人のお金の使い道」(PHP研究所)、「中国人は見ている。」、「日本の『中国人』社会」、「なぜ中国人は財布を持たないのか」「中国人の誤解 日本人の誤解」、「中国人エリートは日本人をこう見る」(以上、日経プレミア)、「なぜ中国人は日本のトイレの虜になるのか?」、「中国人エリートは日本をめざす」(以上、中央公論新社)、「『爆買い』後、彼らはどこに向かうのか」、「中国人富裕層はなぜ『日本の老舗』が好きなのか」(以上、プレジデント社)など多数。主に中国などを取材。

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