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安倍首相の辞任表明が中国で好意的に受け止められた理由

中島恵ジャーナリスト
午後5時から行われた記者会見の様子。中国でも生中継された(筆者撮影)

中国メディアも一斉に報道

 28日午後、「安倍晋三首相が辞意を固めた」とのニュース速報が飛び込んできてから数分後、中国メディアも一斉に同様の速報を流した。

 中国中央テレビ(CCTV)を始め、各新聞・ネットメディアもほとんどが「安倍首相、辞職!」と、日本語のニュースをそのまま翻訳する形で報道。中国メディアはこのニュース一色となり、微博(ウェイボ)の話題ランキングでもトップに躍り出た。

 各メディアの報道に対し、中国人の反応はどのようなものがあるのか。ざっと拾ってみた。

「あまりに突然のことで驚いた……」

「いい首相だったと思う」

「在任期間が最長となったところでの辞任か……」

「やはり大腸炎が悪化したのか……病気なんだから、仕方がない」

「家でゆっくり休んでください」

「早期回復を祈っています」

「2020年は本当に歴史的に見て大変な年になった」

「辞職後、ゆっくり養生してください」

「安倍首相は日本の民衆の支持を得ているいい首相だったと思う」

「安倍桑(安倍さん)、お疲れさまでした…」

「尊敬できる政治家だ」

「誰が後任の首相になるのだろうか」

アベノマスクなどで中国でも注目された

 ニュース速報から2時間以内に投稿されたコメントを見るかぎり、おおむね好意的なものが目立った。中国メディアでは、すでに8月に2回、安倍首相が慶応大学病院に検査に行ったことが報道されており、持病の潰瘍性大腸炎のことも詳しく紹介されているだけに、一般読者は「病気なのだから仕方がない」「早く休んだほうがいい」「日中関係の改善に尽力した人だ」といった、好意的なものが多かった。

安倍首相の辞任表明について報じる中国メディア(筆者によるスクリーンショット)
安倍首相の辞任表明について報じる中国メディア(筆者によるスクリーンショット)

 午後5時から行われた記者会見の模様を見た反応もほぼ同様のもので「ちょっと涙ぐんでいるように見える…」「やはり身体が相当悪かったんだな…」「長い在任期間、お疲れさまでした」といったものが目立った。

 在任期間が歴代最長だったことに加え、かつては靖国神社参拝を行った首相、中国訪問も果たした首相として、中国での知名度は抜群に高い。中国では全般的に存在感が薄い日本の政治家の中では、小泉純一郎元首相や、その息子で衆議院議員の小泉進次郎氏などと同様、突出して目立つ存在だった。 

   

 とくにここ数年は、アベノミクスなどの政策の実行を始め、新元号「令和」の発表、コロナ禍での「アベノマスク」配布など、中国人から見ても関心の高い話題が多かった。

 2019年に中国の建国70周年を祝う際には、「大家好」(皆さん、こんにちは)という中国語で始まる挨拶を行った、と中国のSNSで評判になったこともあった。

 

ジャーナリスト

なかじま・けい ジャーナリスト。著書は最新刊から順に「中国人が日本を買う理由」「いま中国人は中国をこう見る」(日経プレミアシリーズ)、「中国人のお金の使い道」(PHP研究所)、「中国人は見ている。」、「日本の『中国人』社会」、「なぜ中国人は財布を持たないのか」「中国人の誤解 日本人の誤解」、「中国人エリートは日本人をこう見る」(以上、日経プレミア)、「なぜ中国人は日本のトイレの虜になるのか?」、「中国人エリートは日本をめざす」(以上、中央公論新社)、「『爆買い』後、彼らはどこに向かうのか」、「中国人富裕層はなぜ『日本の老舗』が好きなのか」(以上、プレジデント社)など多数。主に中国などを取材。

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