東工大栄誉教授がノーベル賞受賞 理系研究室の“中国人化”に歯止めがかかるか?

ノーベル賞を受賞することが決まった大隅栄誉教授について伝える新聞

東京工業大学の大隅良典栄誉教授が今年のノーベル医学生理学賞を受賞することが決定した。受賞理由は「オートファジーの仕組みの発見」。日本人の受賞は25人目となった。

すばらしい快挙に日本中が喜びに沸いているが、昨夜、中国のSNS、ウィーチャット(微信)を見ていたら、関西在住のある中国人の友人がこんな書き込みをしていた。

「日本人のノーベル賞受賞おめでとう。やっぱり日本人はすごいね。電車に乗っていると本を読んでいる人が多いもの。日本人がノーベル賞をとるのも納得!」

読書とノーベル賞は直接の関係はないと思うが、こういって外国人からもほめてもらえるのは、日本人としてやはりうれしい。最近、都内の電車の中ではスマホばかり見ている人が多いように感じるが、中国から来日したばかりの中国人の目には(中国と比較して)そのように新鮮に映るらしい。

私自身は、受賞者が東工大の教授であるというところに注目した。100%文系の私は、数学や理科は無縁。友人も文系の人ばかりで、取材に行くといっても、文系の教授の元を訪れることが大半だ。

だが、今年6月、新刊『中国人エリートは日本をめざす』の取材のため、初めて東京工業大学・大岡山キャンパスを訪れたばかりだったからだ。

留学生の半数が中国人!

東京の私鉄東急目黒線・大井町千の大岡山駅を降りると、目の前に東工大の広大なキャンパスが広がっている。やはり、さすが東工大というか、ほとんど頭のよさそうな男子学生ばかり(?)に見えるのだが、ちらほらと“日本語以外の言語”が耳に飛び込んでくる。中国語や英語だ。

ダイバーシティをすすめる他の総合大学とは違い、東工大の場合は留学生とあまり関係がないのかと勝手に思っていたが、そうではないらしい。取材してみると、東工大の学生数は約9800人(2015年)で、そのうち留学生は1050人と約9分の1。他大学に比べて留学生は多いとはいえないが、国籍別で見ると、中国人は留学生の半数近くを占めているのだ。

東工大は2004年から中国の清華大学とダブルディグリー・プログラムを実施している。双方の大学で学位を取得できるもので、これまでに170人以上の修了生を送り出したという。清華大学といえば、「中国のMIT(マサチューセッツ工科大学)」と呼ばれるほどレベルが高い理工系大学のトップ。そこから東工大に留学生が多数来日していると聞いてびっくりした。

それ以外のルートでも、中国人を始め、数多くの留学生が東工大の高い研究内容に魅力を感じ、留学にやってきている。

そもそも、日本ではかなり前から「学生の理系離れ」、「大学院離れ」が叫ばれている。理系への進学が減り、学生も大学までは進学しても、大学院への進学率は下がっている。修士課程はまだしも、博士課程というと、進学者は激減している。

大隅栄誉教授も受賞決定後のインタビューで、自らの大学院生活の厳しさを語る中で、この問題に言及している。大学院に進学し、そのまま研究者となる道を選ぶことが厳しいため、研究者を志す学生が年々少なくなってきていることを心配しているのだ。

今、そこに割って入ってきているのが中国人留学生だ。東工大だけでなく、日本全国の理系の大学院研究室には中国人留学生が増えている。理系の研究室は実験があるため、それを行う人員が必要なのだが、日本人の大学院生が減っている中で、その穴埋めとなる人材が必要なのだ。

研究室によっては、院生の大半が中国人という“研究室の中国人化”が密かに進行している。

中国人のノーベル賞受賞者はまだわずかしかいない。そのためか、よりよい研究環境を求めてアメリカや日本にも大勢の優秀な留学生が押し寄せてきている。取材したときには、最近は日本人が「押されぎみ」だと感じていたが、今回のノーベル賞受賞で、日本人の理系離れ、大学院離れに少しは歯止めがかかるのかもしれない。