GOOD DAY MUSIC~家具屋さんが作ったコンピレーションアルバム

TRUCK~お店の様子(TRUCK提供)

アルバムジャケット(TRUCK提供)
アルバムジャケット(TRUCK提供)

大阪にTRUCK(トラック)という家具屋さんがある。1997年にオープンして、昨年20周年を迎えた。

その20周年を記念して作られたのが、コンピレーションアルバムの“GOOD DAY MUSIC”である。アナログとCDの2形式で、昨年12月に発売された。なぜ、家具屋さんが音楽アルバムを作ったのか。インタビューの内容を中心にまとめた。

アルバムに封入されているライナーノーツには、オーナーの黄瀬さんが書いた、このアルバムが出来るまでの思い、そしてお店の歴史が書いてある。それも資料にしつつ、インタビューの内容と合わせて紹介する。

TRUCKは、黄瀬徳彦さんと唐津裕美さんが始めた家具屋さんである。二人は夫婦であり、仕事のパートナーだ。先に、黄瀬さんは、自分と同い年で、それこそオープンの頃からの友人なので、以下、黄瀬君、で進める。黄瀬君は、長野県の松本市で家具作りを学んだ後、大阪に戻り91年に独立。工場を持ち、オリジナルの家具作りをスタートする。その後、97年、大阪市中央区玉造にTRUCKを、唐津さんと共にオープン。99年にはそのTRUCKの裏により広い“AREA2”をオープンさせる。また2003年には唐津さんがデザインするアトリエ、“シロクマ舎”も設立する。その10年後、大阪市旭区に、建物、大きな樹々やレンガの塀などすべて一から考えた場所を作り、TRUCK/AREA2/工場/シロクマ舎、そして自宅も移動し、敷地内にはカフェである“Bird”もオープンさせ、いわゆる“家具屋さん”という規模とは到底思えない、巨大な拠点を完成させた。

Bird(TRUCK提供)
Bird(TRUCK提供)

敷地内にある自宅に伺い、同じく敷地内のBirdから名物のドーナツとコーヒーをテイクアウトして頂き、お話を伺った。

黄瀬君たちと自分の出会いからまず辿ったが、20年も経つとなかなか思い出せない。たぶん、だが、「玉造にオシャレな感じの家具屋さんがオープンした」という情報に、当時、朝の番組を担当していた自分が取材に行った、というのが出会いではないか、と。二人と同世代ということもあり意気投合、そこから(頻繁に会っていたわけではないが)友達付き合いがスタートした、と思う。オープンから2年後、裏に大きなAREA2が出来て、遊びに行った時は、「すごいな、頑張ってるな」と感動したのを強く覚えている。2人とも、人を受け入れる懐の広さ、というか、本当に接しやすい。一言でいうと素直、だ。

インタビューの様子(撮影:竹内琢也)
インタビューの様子(撮影:竹内琢也)

その後、黄瀬君たちと会う機会が多かった(今でもそうだが)のは、山崎まさよしのライヴ会場だった。楽屋挨拶で訪れるといつも、とても仲良さそうに話している。彼の曲でこのアルバムはスタートする。友人を介して山崎まさよしと出会い、彼はTRUCKの家具を気に入って何点も購入し、また友人としての付き合いもどんどん深くなったそうだ。たしかに、黄瀬君と山崎氏の佇まいはとても似ている。飾らない、ナチュラルなものを愛し、楽しむ。とても素敵な人たちだ。お酒が好きで、酔った時のエピソード(自分も彼に関してはいくつか持っている)もインタビューでは出てきたが、ここでは割愛する。

ダメモトで、Birdのイメージの、WEBムービー用の曲を作ってほしい、とお願いしたら、快諾してくれたそうだ。お願いしたいイメージを伝え、ほどなく曲は届いた。お店、お店の看板であるドーナツ、そしてコーヒー、と、依頼したのは3曲。そもそも、友人とはいえ、プロの、それもキャリアのある人気ミュージシャンに、個人的にお願いするなんてなかなか出来ないし、それを快諾してくれたのであれば、後は届くのを待つばかり、である。届いた曲の中で、“ドーナツ”はまさにイメージ通りだったそうだが、“コーヒー”と“お店”の曲に関しては、とても素晴らしい曲だったけど、あまりに綺麗過ぎて、ちょっとイメージとは違う、と感じたそうだ。悩んだが、そのまま伝えた。せっかくならイメージ通りのものにしたい。それを形に出来るのは山崎まさよししかいない。彼はすぐに作業に取りかかってくれたそうだ。彼も本当にコダワリのミュージシャン。モノ作りに自分なりのコダワリを持つ者同士の関係があるからこそ、実現したやり取りだと思う。“コーヒー”は2回目で、“お店”に関しては3回目で、双方納得のいくものになった、と。「ホンマに妥協せーへんな」と、山崎氏は伝えた、という。

周年を祝ったことがなかったTRUCKだが、さすがに20周年は、記念モデルのアイテムを作ったり、ライヴイベントを開催したり、WEBに20周年記念特設ページを作ったりした、と。その流れから、レコード会社・ユニバーサルミュージックから「アルバムを作りませんか」と声がかかったそうだ。音楽大好きな2人は本当に嬉しかった、と話してくれた。

唐津裕美さん(撮影:竹内琢也)
唐津裕美さん(撮影:竹内琢也)

選曲の話になり、唐津さんが身を乗り出した。黄瀬君、唐津さん、自分と、3人の同世代がいる中で、音楽(どのようなものを聴いてきたかという)ヒストリーの話になった。自分は、このアルバムの多くを占めるブルースやラグタイムに明るくない。中学生時代はガッツリ“ザ・ベストテン”世代で、洋楽には全く触れてなかった。80年代後半のブリティッシュインベイジョンが世界を席巻していた高校生時代に、友人の影響でどっぷりハマりヒットチャートを追った。その後もほどなくこの業界に入って、いわゆるラジオフレンドリーなものを選曲し、普段も聴いてきた自分は、(もちろん好みはあるが)何かの(音楽)ジャンルにそこまで強くハマったことはなかった。逆に言うと、どんなジャンルの音楽でもわりと違和感なく受け入れられるし、真に心地いいか、が、好みの基準でもある。

今回の“GOOD DAY MUSIC”は、本当に心地いい。

黄瀬徳彦さん(撮影:竹内琢也)
黄瀬徳彦さん(撮影:竹内琢也)

ライナーノーツにもあるが、黄瀬君は、ブルースBARをしようか、と本気で考えていたそうだ。TRUCKを始める前に。長野県の松本で家具作りをしていた頃、ハーモニカが好きで、山の中を、ハーモニカを吹きながらバイクで走っていた、という話には3人で爆笑した。唐津さんのブルースとの出会いは、ラジオからたまたま聴こえてきた“サウス・トゥ・サウス”だった、と。そこから有山じゅんじ氏を知り、ラグタイム・ブルースにハマり、上田正樹&有山淳司の「ぼちぼちいこか」を聴いて、ガツンときた、ということだった。2人は出会った頃、たくさんの意気投合できるものがあり、その中でも大きかったのが音楽だった。今回、2曲目に収録されている“ソニー・テリー”も、昔たまたまタワーレコードで見つけて、ハーモニカ(ブルースハープ)×ブルースの魅力によりハマるきっかけになったそうだ。TRUCKは今までにたくさんのムービーを公開していて、最初のTRUCK(と、2Fの住居)を手作りしている様子など、そこにいたかのように観ることが出来る。その、どの場面にも音楽があった、と。後からムービーに付けた音楽ではなく、作業している時、休憩している時、ラジカセから流れるお気に入りの曲、黄瀬君が弾くギター。味のあるプロダクトをいつも見ていて、音楽から家具、家具から音楽への影響、みたいな質問もしたが、影響、ではなく、ずっと音楽は鳴っていた、と。2人が「これ、いいね」と思った曲が、TRUCK20年の歴史の中で常にあり、更新されてきた。その中から厳選した曲たちのアルバムが、TRUCKに合わないわけがない。

コンピレーションアルバム制作にあたって、やはり困難なことはたくさんあったそうだ。自分も音楽業界の端っこにいるので分かるが、とにかく許諾関係は本当に大変だ。数十曲の候補曲を出したが、許諾が降りない楽曲もたくさん出てくる。「これはOKだけど、これはダメ」みたいなことがあると、また選曲(並び)を考え直さなければならない。ギリギリまでその作業は行われた、と。ただ、「妥協せーへん」2人である。納得いくまで作業を続け、この素晴らしいアルバムに辿り着いた。ジャケットは、TRUCKのカタログ同様、唐津さんが撮影。常にそこにいる人にしか出せない空気が、写真に閉じ込められていて、これも素晴らしい。自分はアナログ盤をリビングに飾っている。

左から、黄瀬さん、筆者、唐津さん(撮影:竹内琢也)
左から、黄瀬さん、筆者、唐津さん(撮影:竹内琢也)

CD盤はアナログ盤より3曲多い。CD盤には、最後に、黄瀬君自身の曲が収録されている。しかも、とっても小さな音で。アルバムの頭から聴いていて、心地いいボリュームのままだと、その時間は無音なのか、と思うくらいの大きさだ。この曲を作り、収録することになったきっかけなどは、黄瀬君自身の文章で説明されているライナーノーツで確認してほしい。エピソードも含め、とっても素敵な話だ。

納得したものを作りたい~そしてそれは売るものだから、買ってもらって、それを気に入ってもらうことで、“納得”は完結する。最後に出てきた話で、今、自分に少し欠けてた気持ちのピースが埋まったような気がした。家具も、大ヒットしたTRUCKの本も、そして今回のアルバムも、二人の、そしてTRUCKのみんなのコダワリは、人の生活に寄り添いたい気持ちがつまっている。

TRUCK FURNITURE 20th ANNIVERSARY GOOD DAY MUSIC

Doughnut / Masayoshi Yamazaki

Walk On / Sonny Terry and Brownie McGhee

Baby You Gotta Change Your Mind / Blind Boy Fuller

Diddie Wa Diddie No. 2 / Blind Blake(※アナログ盤未収録)

Blow Wind Blow / Muddy Waters & Otis Spann

The Weight / The Band

Don't Think Twice, It's All Right / Bob Dylan

You Can Get It If You Really Want / Jimmy Cliff

(Sittin' On) the Dock of the Bay / Otis Redding

A Whiter Shade Of Pale / Procol Harum

My Buddy / Chet Baker

I Ain't Got Nothing But The Blues / Ella Fitzgerald, Joe Pass(※アナログ盤未収録)

They Can't Take That Away From Me / Billie Holiday

Misty / Erroll Garner

Mo' Better Blues / Branford Marsalis Quartet feat. Terence Blanchard

Mercedes Benz / Janis Joplin

Today Was A good Day, Too / Tokuhiko Kise(※アナログ盤未収録)

アナログ盤・CD盤で発売中

TRUCK HP

http://truck-furniture.co.jp/

インタビュー撮影:竹内琢也(FM802 DJ)

(敬称略)