Keishi Tanaka~爽やかに今を紡ぐSSW

出会い

最初に彼に出会ったのは、まだ彼がriddim saunter(リディムサウンター)というバンドのボーカルの時だった。ケイシと会うまで、バンドの名前は知っていたし、何曲か聴いたこともあったが、メンバーの誰とも会ったことはなかったし、自分の番組で積極的にOAすることもなかった。きっかけは、前にも書いた2010年のフジロックだった。今、しょっちゅうメールで連絡を取り合い、曲を聴き、番組でOAし、一緒にイベントまでやるようになったが、振り返れば、まだ知り合って5年も経ってないんだ、と考えると不思議な縁である。それはひとえに彼の楽曲の魅力に気付き、なにより彼自身の魅力に触れたからである。

フジロックのステージで、ストリングスも交えた編成で、この“Sweet & Still”を聴いた時、ツーッと、涙が出た。初めてのフジロックでの興奮も気持ちを上げていたと思うが、ステージで楽しそうに歌うケイシと、メンバー達。踊るファン。自然に囲まれたステージ。すべての要素が深い感動を生んだ。「今年のフジは、絶対リディムを観た方がいいですよ」とアドバイスをくれた後輩に感謝した。

すぐに大阪で、彼らが出演するイベントライヴにも行った。うん、やっぱりいい。どこで観ても好きだ。確信した。その時、知り合いのコンサートプロモーターにお願いして、メンバーを紹介してもらった。こういう商売をしてるわりには自分は人見知りで、その時はケイシと太一君(現KONCOS)を紹介してもらったと思うが、二人もあまり初対面でしゃべる方ではなく、なんともぎこちない時間で、「良かったです」と伝えるのが精一杯だった。その後、やはりケイシと太一君の二人で番組にゲスト出演してもらった。番組構成上、あまり長く時間を取れず、自分はライヴ後の挨拶の時のリベンジ、という気持ちがあったから、フジロックの時の感動、あらためて聴いた楽曲の感想を、マシンガンのようにひとりでしゃべり、二人にほとんど話す時間を与えず、終わってしまった。こちらも、なんともいえない、自分としては失敗なインタビューだった。

翌年の2011年、riddim saunterは解散した。理由は知らない。ただ、2002年に結成した彼らの、ホントに最後の1年間にしか関われなかったことを悔やんだ。

ソロアーティストへ

そして、田中啓史は、Keishi Tanakaとして、ソロアーティスト、SSW(シンガーソングライター)となって動き出した。

「ケイシ君のソロが出ますよ」と聞いて、すぐに曲を手に入れ、聴いた。良かった。riddim saunterの時とはまた違う、その時にケイシが出したかった音、メロディ、そして変わらない伸びやかな歌声。その後、今に至るまで、自分は彼の曲を聴くたびに、それが元気な曲だろうが、静かな曲だろうが、いつも、スーッとする。PVを観た時、彼のファッションにも魅了された。PVは、常に私服だ。まぁ、本人のかっこよさもあるんだが、彼は流行を追うわけでもなく、自分に似合うスタイルを知っている。それは、彼の楽曲、音楽に対する姿勢も同じだと思う。自分が今、表現したいことに対してブレない。そして、気の合う仲間と、楽しみながら作品を作っていく。曲も、映像も、アートワークも。

今年の3月にリリースされたシングル、“Floatin' Groove”は、FM802のヘビーローテーションになった。単純にファンとして嬉しかったし、DJとして、この春、リスナーに届けるべき楽曲だ、と自信を持ってOAした。ソロになって、日本語詞が増えた。今、その言葉でより多くの人に、ケイシの思いを伝え、感じてもらいたいのだろう。

4月には、待望の2ndアルバムがリリースされる。

いち早く聴かせてもらった。前述したが、彼の曲、彼の歌は、ホントに静かな曲でも、そこに必ず未来への光が見えるような気がして、決して寂しくならない。元気な曲は、自分がしんどい時でも、フッと気持ちを持ち上げてくれる。それは、自分の仕事であるラジオDJ~番組にも常に必要な要素だと思う。14も年下の彼から、あらためて感じさせられたことだ。

「今年は勝負の年にしたい」なにげなく話してた時にケイシから出た言葉。いい意味で、欲が出てると思う。表現者は、多くの人に、その表現に触れてもらいたい、と思うのは当然である。自分もそうだ。それぞれの仕事、それぞれの表現で、ひとりでも多くの人に、ハッピーになってもらえたら、と思う。

(敬称略)

(写真提供/Niw! Records)