26年前にタイムスリップ~映画「ベイビー大丈夫かっ BEATCHILD 1987」

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先日、記憶を頼りに書いた記事、

史上最低で、最高のロックフェス~映画「ベイビー大丈夫かっ BEATCHILD 1987」

この記事を公開して数日後、いよいよ試写会に足を運び、映画を観た。

感動の舞台裏

まず驚いたのは、リハーサルの様子や舞台裏など、かなりの撮影が行われていた、ということ。トレーラー(予告編)は観ていたのだが、数分間の映像(これだけでも凄かったが)の中には、土砂降りの中歌うミュージシャンの姿と、豪雨に俯くお客さんの様子。あの場にいた自分にとっては、「あ~、そうだった」と思い出すのに十分な迫力だった。最初からそんな映像を予想していたが、リハーサルは快晴。さらに「そうだった」と思い出した。前の記事にも書いたが、強い雨が降り出したのは、ライヴが始まってから。リハーサルの映像には、阿蘇の大自然の中、本番への期待に胸が膨らむミュージシャンたちの笑顔がたくさんあった。この快晴と笑顔が、本番の、あの悲惨な状況をよりリアルにしていた。無事に残っていた映像を元に編集したわけで(これが全部なのか、なくなったものもあるのか確認はしていないが)、当時の撮影班の意図だったのか、リハーサルの映像は、圧倒的に尾崎豊の姿が多い。もちろん、当時すごい人気だったわけだから、当然といえば当然だが。正直、こんな素の尾崎豊の姿を(映像とはいえ)見たのは初めてだった。それだけでも価値ある映像ではないか、と思う。

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日本初のビッグイベントに心躍るミュージシャンたち、たくさんのスタッフ。ミュージシャンの私服~衣装、スタッフの格好も(当たり前だが)80年代後半のファッション。その様子をクリアな映像で目の当たりにする。若いお客さんがこの映画を観れば、「あんなファッションが流行っていたのか」と、少し滑稽かもしれないが、自分にとってはタイムスリップ以外のなにものでもなかった。

記憶と現実

そして、ライヴがスタートする。記憶の通り、ザ・ブルーハーツの時はまだ雨は降っていなかった。ただ、本編が始まる前に、一度かなりの豪雨があった。これをあまり覚えていない。たぶん、人生初のロックフェスに興奮し、始まる前の雨が記憶の中から消えていたのだろう。

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写真でも分かる通り(これも当たり前だが~どうしても当たり前の話をしたくなる)とにかく若い。そして、我々が知る彼らの多くの名曲は、すでにデビューしたてのこの段階で完成していたのを再認識する。とにかく映画を観て頂きたいので、ライヴの内容は詳しく書かないが、演奏シーンの映像は、大迫力だ。思いきり楽しんで頂きたい。ただ、この後、ものすごい雨が降り出すのだが。

RED WARRIORS登場の時も、まだ空はなんとか我慢していた。

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当時19歳だった自分は、彼らのサウンドに、大人のセクシーさをすごく感じていたし、今、楽曲を聴いてもそう思うが、スクリーンに映るユカイさんとシャケさんの若さに驚いた。ユカイさんの熱唱する顔は、正直“悪ガキ”な感じだった(失礼!)。かっこよかった。この時間はまだまたミュージシャンたちにも、この大舞台を楽しむ余裕が見られた。自分もまだ、過去のドキュメンタリー映画を観ている、そんな感覚で冷静に楽しんでいた。

そして、岡村靖幸が登場したあたりから、雨脚が強くなってきた。

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デビューしたての岡村ちゃんはキレッキレだった。ステージに上がる前、「雨、いやだなー」ってつぶやくシーンがあるが、マイクを握れば雨なんて一切気にせず、踊りまくり、吠えまくっていた。あの日感動して、翌日CDを買いに行ったあの衝動のままだった。出番前、新人の彼を他のミュージシャンがイジる様子も微笑ましかった。衣装のスーツの80's感もすごい。

あの場にいた自分の記憶の中で、過酷な状況に耐えられた大きな励ましが、白井貴子さんの、ステージからの「大丈夫ー?!」という声だった。

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大人というのは、そして人気ミュージシャンというのは、どんな状況においても、笑顔で、元気で、すごいなー、と。不安なんて一切ないんだなー、と。勝手に思っていた。自分は子供だった。この映画を観て、それが勘違いだった、ということを知った。

誰より、この大自然で、晴れ渡る空のもとで、楽しく歌うことを楽しみにしていた(と思う)白井さんの、舞台袖での不安な顔~映像は忘れられない。リハーサルの時の、弾けるような笑顔とは真逆の。きっと、出来ればこんな状態でステージに上がりたくない、と思っただろう。でも、自分のような、今にも倒れそうで、心折れそうな人が7万人以上待っている。意を決した白井さんがステージへ向かう様子を観て、急に涙が溢れ出した。そして、笑顔。大きなアクションで「みんなー?!大丈夫ー?!」と何度も何度も叫ぶ。楽器や機材、モニターなどの状況も最悪な中、歌い上げる姿。もう、白井さんの映像を観ている間、涙が止まらなかった。あの場にいたみんなが、無事に帰ることが出来たのは、白井さんをはじめ、ミュージシャンたちの、なにがなんでもやり切る、という熱い思いだったんだ、とあらためて感謝した。

あとは劇場で

まだまだ書きたいことはたくさんあるんだが、ドキュメンタリー映画で、ネタバレ、みたいな要素が少ないとはいえ、あとは劇場で楽しんでほしい。豪雨をものともしないBOΦWYのステージ、尾崎豊の熱唱、そしてハウンド・ドッグ。大友さんのMCとパフォーマンスは、自分にとって2コ目の号泣ポイントだった。こんなにかっこよかったのか、と再確認したTHE STREET SLIDERS。水たまりも出来たステージを、感電も恐れず、いつも通り裸足で走り回り、歌う渡辺美里のすごさ。

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前の記事で書いた通り、明け方、佐野元春 with The Heartlandのステージは、後光が差していた。それも確認してほしい。

正直、もっと冷静に観れると思っていた。BEATCHILDの会場にいた時は、当時の日本のロックに詳しかったわけでもないし、まだこの業界に入りたい、と明確に思っていたわけでもなかった。もう長い時間、この業界で、いろんな仕事に携わり、今回、過去のイベントを勉強する、くらいの感じで観れるのでは、とも思っていた。たぶん、あの会場にいた人も、自分と同世代の人も、全く知らない若い人も、確実にタイムスリップ出来る。史上最低で最高の、あの会場に、行ってほしい。

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BEATCHILD(ビートチャイルド)映画公式サイト「ベイビー大丈夫かっ BEATCHILD 1987」

10/26(土)よりロードショー

(敬称略)

(ロゴ・写真提供/ライブ・ビューイング・ジャパン)