マイケルはそこにいた~MICHAEL JACKSON THE IMMORTAL WORLD TOUR

マイケル・ジャクソンが亡くなって、まもなく丸4年になる。訃報を聞いた瞬間は信じられなかった。享年50。早過ぎる。自分が高校生の頃(1984年~86年)、友達の影響で洋楽を聴き始め、全米チャートの虜になっていた頃、その中心には必ず彼がいた。そこから遡り、JACKSON 5を始め、彼の数々の素晴らしい歌声を堪能した。やがて自分が音楽関係の仕事をするようになり、今まで、彼は世界の音楽シーンの中心にずっといた。もちろん、他にも大好きなアーティストはいる。ただ、マイケル・ジャクソンの存在は、彼がアーティストである時代に自分が生きていることを幸せに思えるくらい、とても大きい。出会った頃から今まで、彼自体が壮大なファンタジーだ、と感じる。世界中で、その空間をファンタジーに変え続けるシルク・ドゥ・ソレイユが、マイケルを蘇らせる。マイケルに会いに、会場へ向かった。

シルク・ドゥ・ソレイユ

1984年、カナダの大道芸人だったギー・ラリベルテが設立したエンターテインメント集団、それがシルク・ドゥ・ソレイユだ。ホントに、分かりやすく、ざっくり言うと、サーカスだ。小学生の頃、親に連れられて初めて行ったサーカス。ピエロ、玉乗り、空中ブランコ、動物の曲芸…とてもビックリしたし、感動した記憶がある。大人になるまで、いわゆるサーカス体験はその1回だけだった、と思う。2000年、「サルティンバンコ2000」が来日した時、初めて会場に足を運んだ。その時は仕事柄招待頂いたわけだが、前評判は聞いていても、「大人になって、サーカスか」みたいな気持ちがあったと思う。たぶん、小学生の頃の唯一の体験からの感覚だった、と。席につくと、えも言われぬ空気が漂う。それから、いくつもの公演を観てて、毎回そうだが、公演によっては少しコワイ、緊張感さえ生まれるような空気だ。あきらかに子供の頃のサーカス体験とは違う。毎回綴られる不思議なストーリー、ナビゲートするキャラクターの愛嬌あるアクションとテクニック。そしてなにより驚愕のパフォーマンス。人間というのは、極限まで鍛え練習すれば、こんな動き、こんなバランス、こんな技が出来るのか、と驚きの連続だった。大人になってあんなに「わぁっ!」とか「ひぇ~っ!」と思わず声が出ることがあるのか、と。自分は観てるだけなのに。数々のパフォーマンスを文字にするのは難しい、のが悔しいが、毎回会場を出て、「あー、今観たのはすべて現実だったんだ」と、また驚くし、会場にいた時間、あきらかに別世界~ファンタジーの世界にいたことを確認する。初めて観た時から大ファンになり、以降、日本でのほとんどの公演を堪能した。

実在の人物がテーマ

マイケルが亡くなった今も、彼の残した素晴らしい曲たちはいつも耳にするし、僕らもOAする。彼の偉業を称える企画やリリースもたくさんある。そこには、もちろん追悼の意もあるわけだが、それ以上に、彼の存在/存在感を今も感じ続けたい、という想いが大きい気がする。最初に書いたように、彼のことを生前から、彼自身が壮大なファンタジーだと感じていたし、ファンタジーはなくならない。そして、世界中でファンタジーを描き出すシルク・ドゥ・ソレイユが彼をテーマにすることは、必然だったのかもしれない。

実際、マイケルは、シルク・ドゥ・ソレイユ設立当初から興味を持ち、数々の公演を観つつ、モントリオールにあるシルク・ドゥ・ソレイユの本社にも訪れたりしていたそうだ。「マイケルの名前を冠したショー」というのは彼の夢だったそうで、もしマイケルがステージに登場し、コラボしたらどんなショーになっていただろう、と想像するとゾクゾクするが、この、追悼という意をも完全に超越した、ファンタジックなショーは、マイケルをステージに蘇らせた。

映像とパフォーマンスの融合

ここからは今回の公演内容に触れるが、まだ千秋楽を迎える前なので、詳細な内容は書きにくい。シルク・ドゥ・ソレイユの公演は、とにかく目の当たりにしての衝撃、がすごいので、自分が感じたことを中心に、抽象的な表現になることをお許し願いたい。

大阪公演の会場は大阪城ホール。普段のシルク・ドゥ・ソレイユの公演は、特設テントによる会場が多いので、それだけでもいつもと違うし、単純に大きい。そしてステージにはいくつものスクリーン。作品にもよると思うが、シルク・ドゥ・ソレイユの公演にスクリーン~映像はあまり使用しない、というイメージだ。人間による究極のパフォーマンス。しかし今回、この映像とパフォーマンスの融合が、またもやシルク・ドゥ・ソレイユにしか出来ない、未知の世界を作り上げた。

スクリーンに映し出される数々の映像は、単純にマイケルの記録、ではなく、パフォーマンスと呼応する、マイケルサイドの全面協力なくしてはあり得ない、彼の息づかいを感じさせるものばかりだった。楽曲の世界を大事にしつつ、あらたな解釈を加え、それを肉体によるパフォーマンスに昇華させる。そんなシーンの連続だった。

マイケルといえば、ダンス。今回の公演はダンスシーンもたくさんあり、もちろん、この動きこそマイケルだ、というシーンに喜びがこみ上げ、その中にシルク・ドゥ・ソレイユにしか出来ない独特なパフォーマンスが織り込まれ、歓喜の拍手が巻き起こる。

シルク・ドゥ・ソレイユのファンが楽しみにしている様々な技ももちろん堪能出来る。あんなに高いところで、あんなスピードで、手を離したり、足だけだったり、それはスリルだけではなく、指先のひとつまで計算された美しい動きも、すべて合わさって芸術作品になる。高さに関していうと、今回は会場が大きいので、よりダイナミックに技を体感できる。今回もすごくドキドキして、感動した。

体中の骨がないんじゃないか、と思ってしまうくらいの動き、同じ人間が6人いるんじゃないか、と思う統一されたアクロバティックなダンス、見どころをあげればキリがない。

生演奏も楽しみのひとつだ。マイケル本人と親交があったミュージシャンたちによる演奏は、彼の数々の名曲を映像と相まってそこにリアルに蘇らせる。今回の公演で使用されるマイケルの楽曲は全45曲。それぞれの世代の観客に、当時を思い出させるには十分な数だし、マイケルをよく知らない人が仮にいても、その素晴らしい楽曲たちは、新たな感動を生むだろう。衣装もすべて、マイケルが着用していた衣装を参考に作られている。細部に至るまでの演出で、マイケル・ジャクソンの世界に浸ることができる、もっといえば、マイケルの頭の中を観てるような、そんな感覚になる。

日本公演のラストとなる大阪も、残り少ないが、ぜひ、そこにいるマイケルに会いにいってほしい。

ステージ上で見事なダンスを見せるチンパンジーのバブルス、マイケルと二人の時は、こうだったのかもしれない、と思った。

マイケル・ジャクソン ザ・イモータル ワールドツアー BY シルク・ドゥ・ソレイユ

※掲載していた写真は、シルク・ドゥ・ソレイユ側との事前の取り決めにより、日本公演終了に合わせて削除しました。ご了承ください。(2013年6月17日)