なぜフジロックへ行くのか~FUJI ROCK FESTIVAL '13

ゴールデンウィークが終わると、ジメジメした梅雨が来ることも忘れて、夏への期待感が高まる。今年は特に5月後半から暑い。「あー、夏が来る!あー、また今年もあそこへ行く!」って気持ちに、日々の生活も潤いが増す。ちなみに、夏が終わると「あー、楽しかった!この思い出で今年もまだ頑張れる!」と、その年の後半を過ごしてる気がする。少し大げさかもしれないが、そのくらい自分の中で大きな行事になっている。フジロックフェスティバル。日本最大級の野外音楽イベント。偉そうに書き始めたが、今年がまだ4回目、の参加予定だ。自分がここまでハマるとは正直思ってなかった。

野外フェスの初期衝動

もともとアクティヴな方ではない自分は、毎年フジロックの話が仲間から出ても、「遠いのによく行くなぁ」とか「天候もコロコロ変わってグチャグチャなんだろ?」などと、まったく興味が持てなかった。どんなに観たいアーティストがラインナップしていようと、そんな環境で観てて果たして楽しめるのだろうか、と思っていた。しかし、心のどこかで、なんか、似たような、すごく楽しかった経験が自分にもあることも感じていた。

1987年の夏、地元熊本、阿蘇に出来た野外音楽劇場、アスペクタ。そこで一晩中ライヴするイベントがあるらしい、と、受験を失敗し浪人してた自分に、同じく浪人中の親友から連絡があった。ビートチャイルド。ハウンドドッグの大友康平さんらを中心に地元メディアも協力し実現した、日本初の野外オールナイトロックコンサート。ハウンドドッグをはじめ、ザ・ブルーハーツ、レッドウォーリアーズ、BOΦWY、岡村靖幸、尾崎豊、佐野元春など、とにかく当時日本を席巻してたアーティストが勢揃いして、朝までコンサートをやる、という。親に頼んで、親友と参加。人って一カ所にこんなに集まれるんだ、と、ビックリした。記録によると7万2千人集客してたらしい。スタートの夕方からいきなりの豪雨。斜面になってた会場は水はけも悪く(現在は改善されてると思うが)、すぐに足下はぬかるみに。今のような“フェス文化”はもちろんないわけで、自分たちも含め皆Tシャツにジーパンのような軽装。気温はどんどん下がり、体調不良になる客もどんどん出てくる。そこはまだ若かった自分たち、多少寒いな、とは思いながらも、この体験したことのない異常な状況に興奮気味で、朝まで楽しんだ。コンサート自体、そんなに観たことなかったのに、好きなアーティストが次々に出てきて、大好きな曲たちを演奏してくれる。「みんなー、大丈夫かー!?楽しもうぜー!!」って、呼びかけてくれる。雨も上がり、朝焼けとともに、トリの佐野元春 with THE HEARTLANDが出てきた時は自然と涙が出てきた。終わって、気付くと、膝下まで足が埋まってる。親友と爆笑しながら足を引っこ抜き、バス乗り場で何時間も順番を待ちながらも、二人でその日のライヴの感想を語り合った。とにかく楽しかった。

あー、行ったなー、19の時、と、思い出した。

2010年

5月、スタジオの廊下で、後輩DJの飯室大吾と、親しい後輩のディレクターがフジロックについて相談している。仕事の都合で金曜日の夜に車で出発、2日目の土曜日から参戦しよう、と。なんとなく、何も考えず、「俺も連れてってくれよ」と言った。今考えれば年もかなり上だし、親しいとはいえ気を遣うよなー、と思っただろう。「全然いいですけど、大変ですよ、車だし」と言われたが、自分も運転するし、なにより行ったことないから行ってみたい、と。それから、ことあるごとに、3人で計画を立てた。ラインナップを見ては、どれを見るか、どんな順番で回るか相談した。やっぱりトレッキングシューズみたいなのがいい、蚊とかの対策で短パンでもタイツはいた方が、とか、小さいイスは必須、などなど、その準備がまた楽しかった。

そして、大阪を深夜出発し、苗場へ。慣れない長距離運転で、休憩もたくさん取ったが、とにかく、可愛がってもらってる怒髪天には間に合うように、と、先を急ぐ。到着。初めての会場入りはとにかく感動した。こんなところでやるのか、と。怒髪天がホワイトステージだったので、一番大きなグリーンステージはとりあえず素通りして、ホワイトへ。

自分はこのホワイトステージが好きだ。2番目に大きなステージ(15,000人収容)だが、緑生い茂る道を抜けると出てくる、山に囲まれたステージがすごく神秘的に感じる。

夜、予定通りの雨に、レインウェアを着込み、水たまりを避けて、自分のイスを出して、仲間と輪になって座り、熱いコーヒーを飲む。皆、笑顔。ホワイトステージのMGMTのスタートを待つ。グチャグチャになりながらも、彼らが奏でる不思議なサウンドに身を任せる。あー、これがフジロックなんだなー、と感じた。翌日、3人それぞれ別行動で観たいライヴ会場へ行く。riddim saunterを観にホワイトステージへ。ストリングスを交えた彼らのハッピーなサウンドと、神秘的なステージと、踊るお客さん達を観て、なぜか涙が止まらなくなる。たぶん、この瞬間が、今もフジロックへ駆り立てる一番大きな衝撃だったと思う。

2011年

1回の参加ですっかり“フジロッカー”気取りになり、自分の車を出すことに。7人乗りのワゴン。メンバーを募り、前年同様、金曜日の深夜に大阪を出発。人数も多く、車内もワーワー盛り上がったり、交代で仮眠を取ったりして、土曜日の朝方、予定通り新潟入り。しかしここでハプニング。台風が直撃、苗場の会場まで上がるとそうでもなかったようだが、とにかく会場まで行く道がすべて封鎖されている。地元の人に聞いたり、コンビニで地図を見たり(カーナビも役に立たず)したが、策が見つからない。昼頃、「あきらめようか」という声も出たが、宿泊先の人が「他県を回る形になり、かなり時間はかかりますが、こう行けば来れます」と教えてくれて、もうひと頑張り。結局会場に着いたのは、大阪を出て18時間後(!)。“ようこそ!フジロックへ!”の横断幕を見て、後輩のディレクターが車の窓を開け「来たぞーっ!苗場ーっ!」と叫んだ。もう、みんな笑顔だった。前年、深夜のイベント/ライヴに参加できなかったので、オールナイトで楽しむ気満々だったが、さすがに運転疲れと到着できた安堵感でヘロヘロ。みんなと、無事着いたことをビールで乾杯、フェス飯を食べて少し会場を回った後、早々に宿泊先へ。

初日(土曜日)は残念だったが、前年の参加で感じたこと~あれを観たい、これを観たい、と詰め込むよりも、「これは絶対」というのをいくつか決めたら、後はフェス全体を楽しもう、という思いのもと、ゆっくり寝て元気もいっぱい、スタートから存分に楽しんだ。もともとスキー場なわけで、山頂へ向かうゴンドラがある。世界最長スーパーゴンドラ“ドラゴンドラ”。このゴンドラがとにかく気持ちいい。前年、誘われたのに「なんでライヴ会場でゴンドラに」と断ったことをあらためて悔やんだ。空気のいい山頂に上がると、そこでもアコースティックライヴ、チルアウトミュージックからダンスビートまで楽しめるサイトもある。行き届いている。

この日、自分にとって最大の目的はグリーンステージイエロー・マジック・オーケストラ。陽も落ち始めたステージに3人が登場。アナログ感を強めたアレンジが自然と融合し、学生時代から聴いてた名曲たちに心と体が踊る。いろいろ大変だったけど、やっぱり来てよかったなー、と強く思った。

帰りは結構バラバラで、ワゴンの人数も半分になり、前年より疲れもあって、かなりしんどかった。荷物も積めるし便利だけど、もう車はしんどいかも、と。

2012年

自分のレギュラー番組終わり、木曜日の夜から出られる、ってことと、日曜日は仕事なので土曜日の夜には大阪に帰りたい、ということから、初めて電車(新幹線)で行くことに。仲間と新大阪駅で待ち合わせ、ビールとつまみを買って新幹線に乗り込む。正直、楽だった。いろいろしゃべっては寝て、東京で乗り換え、苗場へ。前夜祭には間に合わなかったが、深夜もやってるフェス飯のエリアでは、すでに前夜祭から楽しんでる仲間たちとも合流。地べたに座って、食べて飲んで、明日からへの期待感を募らせた。

とにかく飲食ブースの食べ物が美味い。野外フェスにおいて“フェス飯”という呼称が確立してるくらいで、特にフジロックは、会場の雰囲気も相まってか、すごく美味しく感じる。もちろんすべてを網羅したわけではないが、地ビール、釜を持ち込んで焼くピザ、鮎の塩焼きなどなど、前年のドラゴンドラと同じく、「行ったらこれはしたい、あれは食べたい」っていう楽しみも増えてくる。

そして、なんといっても、癒してくれるのは自然。昨年は自分たちがいた金曜、土曜とまったく雨が降らず、かなり暑かった。途中に流れる小川では靴を脱ぎ、足を浸す。かなり冷たいが、疲れまで取れる。お客さんのはしゃぐ声、遠くから聴こえるライヴの音、ここにいる時間もフジロックだなぁ、と感じる。

グリーンステージのビーディー・アイは圧巻で、野外ロックフェスの醍醐味を感じた。初日金曜日のヘッドライナーはザ・ストーン・ローゼズで、「これさえ観られれば」という仲間も多かったが、自分はそこまでなく、「観ないの?」と言われながら、レッドマーキーという、5,000人収容の、唯一の屋内テント型ステージへ。大好きなオーシャン・カラー・シーンを観に。「お前ら、ストーン・ローゼズ行かなくていいのか?!」って笑いながらMCしつつ、ヒット曲のオンパレード。外国人のお客さんも多く、会場の雰囲気もあって、海外のライヴハウスにいるみたいな感覚に。行ったことないけど。久々踊りまくった。ホントに楽しかった。もちろん、ストーン・ローゼズも素晴らしかった、と思う。でも、なんか得した気分だった。

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そして、今年

今年も去年と同じ行程の予定。今回、行ったことない人への雑感、みたいな話(主に自分の思い出話)がメインとなったが、もちろん毎年、発表されたラインナップに心躍るわけで、今年も楽しみなアーティストがいっぱいだ。

SKRILLEXはどんなステージなんだろう、FUN.で盛り上がりたいなー、ひさびさのKEMURIをフジロックで観れる喜び、土曜日帰る前にJURASSIC 5やってくれー、などなどなど。もちろん、ドラゴンドラも乗りたいし、鮎の塩焼きも食べたい。

急に年寄りめいたことを書くが、毎年毎年、年を重ねるごとに、1年を早く感じる。そんな中、夏のフジロックは確実に、1年間の中でフックになってる。充実感。

またテンションを上げるべく、トレッキングシューズを新調しようと思う。

http://www.fujirockfestival.com/

(写真:宇宙大使☆スター/フジロックフェスティバルオフィシャル)